2章
#.10 模擬戦
「アルフォンス先生、どうして俺がこんなところに連れてこられてるんだ?」
ロディにはシエラの練習を手伝いに来てもらいました。何で連れてこられたか全く理解出来ていないように見えるがそう難しい話ではない。
「僕が連れて来れそうな相手って君しかいないから」
「いや、可笑しいよな。距離取るだろ普通」
「ならまた僕と戦う?」
「戦わねぇ」
僕が誘うと凄く嫌な顔をして断られた。
その反応事態があの戦い自体が彼の本意ではないのだろう。
僕は彼が大丈夫だと確信している。
「いいじゃん、お手伝いくらいしてあげなよ!」
「スージー、お前なぁ……」
そう言って、ロディに絡むスージーというツインテールの緑髪の女子生徒だ。
ロディだけで良かったんだけどついてくるって、言ってたから連れてきた。
「ロディいつの間に仲良くなったの?」
「どう見えてるの? 仲良くねぇよ」
「えー、だってロディ友達少ないし?」
「ちょっと待て、お前は俺を何だと思ってんだよ」
「ふへぇ……ひっぱらふぁいで」
こいつら仲良いなぁ。
というか、そろそろ始めないと置いてきぼりのシエラが腕組んで仁王立ちして待っている。
ジト目でこちらに催促して来てるんだよ。
「ほら、ロディの友達候補がそろそろ始めたいって言ってるぞ」
「それに俺は別に友達なら——」
そこまで言って止まった。
続く言葉は何となく想像出来る。
僕はロディが誰かと話している姿すら見たことがない。ということは別に友達がいないという発言が的外れという訳でもないのだろう。
「先生、アンタはそんな目で見んなよ……」
「別にこんな奴と一緒にやる必要はないと思うんですけど、アル師匠と戦えばいいのでは?」
「いや、僕だって色々と忙しいし。戦える相手は多い方が経験は豊富でしょ?」
「アル師匠?」
「そ、私は先生の弟子ですから」
「ふーん、お前がねぇ……」
「悪い?」
「別に、面白そうだから手伝うよ」
良かった手伝ってくれるのは助かる。
僕が相手をするのもいいけど、僕がずっと戦闘の相手をしてあげられる訳でもない。
「というか何で関係ない子が居るんですか?」
「んー? ロディ連れてくる時にこの子が来たいって言ってたから」
「えへへへ」
「普通は連れてきませんよ」
「えー、酷いですよ。戦いですよね? 私強いんですよー」
ぶいぶい、と2本指を立ててアピールをしている。
実際に強いのかどうかは知らないけど、ロディが否定していない所を見るにそれなりに強くはあるのだろう。
なら、居てくれるだけ寧ろ好都合だ。
「シエラにはこれから【ライズヘブン】だけで模擬戦をしてもらう」
「はい」
「俺はいつも通り戦えばいいんだよな?」
「あっ、取り敢えずロディは近距離戦闘抜きで戦ってね」
「俺も指定あるのかよ」
「まぁ、シエラの力量見るためにも少しずつな」
僕とスージーは後ろに下がって彼らの魔術に巻き込まれないように距離を取った。
「
「
シエラが使った魔術が手から突き上げるようにしてロディに渦巻きながら突き進んでいく。
対するロディが真っ向から炎の槍で打ち消した。
2人とも自分の立ち位置を探して動きだす。
「
放物線を描いて炎は空中で弾けると雨のようにしてシエラの頭上から降り注ぐ。
シエラは大きく距離を取って交わす。
逃げるだけの行動だったなら、大きく距離を取るのは良くないかな。
「
「嘘っ!?」
どの時点で動きを読んでいたのか。シエラが足を向けた方向から突然、炎が噴水のように吹き出す魔術が展開された。
その場所はロディが1番最初に立っていた場所だった。
「あっつぅ……
炎を振り払いながら【ライズヘブン】の改変で鞭のようにしならせた風の鞭がロディに振るわれる。
その攻撃は少し乱雑で体勢を立て直そうと焦っていたのがよく分かる。
放たれた魔術を余裕を持って回避しているロディは次の魔術を組み始める。
今度からは魔法陣を使うらしい。
「ほーほー、偉いね。シエラちゃんもロディと同じくらいだね」
同じくらいというには僕には熟練度に差があるように見えた。この子はあまり実力が読み取る目が良くないのだろうか。
僕から見たらこの戦いはどう見てもロディの方が1枚上手だ。
「何で同じくらいだと思うの?」
「えっ、だってどっちも相手の行動を見て、お互い使い慣らしてある魔術打ち合ってるでしょ?」
「うん? そ、そうだな」
基準全体的に低くない?
それが出来たら同じレベル判定なのか。
「そうだね、何が強いと思う?」
「ほへ?」
間の抜けた声をしながら、僕の問いにうんうんと唸りながら考え始める。
さっきから、この子からは偉い、凄いは聞けても強いという言葉は聞こえてこない。
「うーん、わかんない。私と同じくらい!」
「僕じゃ基準がわからないや」
ロディに聞かないとその辺は分からないかな、僕は彼女と戦ったことないからその基準がよく見えない。
「これで俺の勝ちだ」
スージーと話している間にシエラは順当に追い込まれていた。改変を実践で使うところまでは良かったけど、戦いの運び方がまだまだ下手だね。
「ロディ私もやりたいから交代!」
「手加減しろよ?」
「うん!」
「わかってるのか……?」
模擬戦からの新たに改善点も見つけた。
僕がそう評価している間に、何やらスージーとも戦うことになったらしい。
「シエラ、大丈夫?」
「はい……魔力を出し切る前に負けたのでこれなら何回かは戦えると思います」
「じゃ、見たいしやろうか」
僕はGOサインを出して、ロディと共に再び距離を取った位置から観戦に戻る。
「別に手加減して貰わなくてもいいんですよ?」
「えー、でも危ないよ?」
「俺に負けたのに意地張るなよ」
「外野うるさいから」
「後悔しても知らないからな。始め!」
2人の戦いが始まった。
「
さっきの戦いで学んだのか、先手必勝とばかりにシエラが魔術を放つ。規模は抑え目だけど威力は相応、中々魔力が込められているらしい。
真っ直ぐに放たれた風の渦がスージーに迫る。
「いっくよ!
シエラから放たれた魔術を交わしながら
「展開【
そうと唱えた少女の周囲から無数の魔法陣が飛び出しては足元の地面から剣のような剣を形成してシエラに向ける。
「嘘だろ」
展開の速度が早い、その割には術のレベルが展開速度と釣り合わないぐらいに高い。その魔術を完全に使いこないしている人間の動きだ。
「……っ!?
全包囲、自身を魔術の中心点に置くように改変して、相手を切り刻む風は自分を敵を薙ぎ払う壁になった。
魔術を放つ際に周囲の状況を読んでの適応はさっきまでのシエラにはなかったものだ。
これはシエラが実践で学び取った戦果だ。
「シエラも上手かったけど、スージーが強いな」
「地元じゃ負け無しの天才少女ってやつなんですよ」
ロディはそれを見ながら、ぽつりと独り言を呟く。
「
上手く剣を対処している間に、スージーが展開した足元の魔法陣から槍のような岩がいきなり針のように飛び出すと、シエラが磔にされた。
「俺もアイツに勝てたことがない」
そういうロディはどこまでも苦々しい顔付きでどこか暗い。ロディでも充分強いのにその上を行く生徒が現れるとは正直思わなかった。
「ははは、この学年レベル高くない?」
まだ、去年の学院祭の記録も見れてないからロディより2段上くらいを目安に学園最強というポジションを定めていたけど、僕の中での学園最強のラインを上に修正した。
ふと、校舎の方から視線を感じた。
僕が振り向くと視線は引っ込んだ。
「ごめん、ちょっとそのまま戦っておいて!」
僕がシエラ達に一言入れて僕は視線の主を追う。校庭のすぐ近く視線の主は逃げきれたと思っていたのか立ち止まっていた。
「少年も混ざりたくなったか?」
僕は彼に声を掛ける。
「うわぁ!?」
そこに居たのはいつかの
「そう驚くなよ」
「別に。ボクは戦うのは好きじゃないんだ」
僕的には君みたいな子ほど少しでも実践に触れて見てほしい。得られること、感じ取れることがある筈だから。
「学べることもあると思うけどね」
だけど、強要するのも良くないと少年を見守っている。
「それに2年に1年が勝てるわけないだろ」
「ん? その話どこで聞いたの?」
「学院で話題になってるよ」
コドルが広めたのかもしれないけど、そういう事をするやつには見えなかったし何より話題にさせられると逃げ道を塞がれてる。
もし、やらない方を選んでいたら逃げたと言われて相当叩かれてたことになってた筈だ。
今回は戦うことになったから大きく関係がないからいいものの、目的が何か知らないけど校長が手を回したのだとしたら今後似たようなことがあった時気をつけないといけないな。
「勝たせるのが僕の役目だからね、良かったら見に来なよ」
残念ながら僕の誘いに答えず少年は僕の前から去っていった。練習放り投げてここに来たし、急いで戻ろうか。
「わぁーん、シエラちゃん!!」
僕が戻ってくると、泣きながら気絶したシエラを抱えるスージーの姿がそこにはあった。
「えっ、一体何があったの?」
―――――
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後、ちょっと投稿遅れたのごめんなさい。
修正:初出の魔法には漢字の当て字を振ることにします。多分、そっちの方が文字の意味がわかりやすいと思ったので。
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