第38話 おかしな気持ち
大地と別れた後、わたしはお土産をお姉ちゃんに渡してからお風呂に入り、晩御飯も食べずにベッドの上に寝転んだ。
まだ顔が熱い。
考えるのはさっきの大地との会話だった。
(なんでわたし、あんなに自分のこと話しちゃったんだろう?)
自分のことなんて今まで誰にも話したことなんかなかったのに。
でも、なんとなくあいつには知っていてほしいような気分だった。
(……あのときあいつに頭を撫でられてから、なんかおかしくなっちゃってる)
お風呂に入って
けど、あいつに頭を撫でられたときみたいに特別な何かを感じたりしない。
あいつに優しく撫でられたときは、自分の身体が急に熱く
でも、それは全然嫌な感じじゃなくて……。
『……怖かったのによく頑張ったな。お前は本当に、優しい女の子だよ』
「~~~~~~っっ!!」
わたしはベッドの上でもだえて、ばたばたと転げまわった。
あいつに言われたことを思い出すと、胸がぽかぽかと熱を帯びてくる。
頭がのぼせたみたいになって、わたしはベッドから飛び起きてコップに入れてある冷たい水を一気に飲んだ。
(わたし、やっぱり変だ……)
まるでいうことを聞かない自分の身体を、もう一度ベッドの上に投げ出して、わたしは布団を被った。
実のところ、あいつと過ごしているときにこうやって胸がじんわりとあったかくなるのは初めてのことじゃない。
最近になってから、小さな予兆みたいなものを感じたことは何度もあった。
だけど、あいつに優しい言葉をかけられながら頭を撫でられたときほど大きな波は、今まで感じたことがなかった。
(何なのよこれ……)
そもそも、前日からわたしはいろいろとおかしかった。
服だって何を着ていくか悩んだけど、せっかくだしあいつの喜んだ顔がみたいなとか考えちゃったりして、あいつの好きな服を着ていくことにしたし。
そのあとすぐに、お姉ちゃんがデート楽しんできてねって言いだして、わたしはずっともやもやしてた。
デートじゃないわよってそのときは言い返したんだけど、改めて考えてみるとデートにしか見えないわよねとか思っちゃって変に緊張してしまい、そこでわたしの思考は停止した。
でも当日になって、いざあいつの顔をみたらなんか安心しちゃって。
そのあと遊園地に着いてから一緒にアトラクションを楽しんだり、漫画の話をしているとすごく楽しくなって、気づけばそんな緊張みたいなものはどこかへいってしまっていた。
(楽しかったな……)
今日あった出来事を思い出す。
あいつとの思い出は全部が輝いていて、今日だけでもう二、三日ぶんは楽しめたような感覚だった。
あいつがそばにいると安心できるし、すごく楽しい。
それに自分と対等でいてくれる唯一の男性。
できるなら、これからもずっとあいつと一緒にいたいな、なんてことまで不意に考えてしまって……。
(もしかしてわたし、あいつのことが好き……なのかな?)
一瞬でもそんなことを思ってしまった自分を恥じて、わたしはぶるぶると大きく頭を振ってその考えを否定した。
そんなばかなことがあるはずない。
だってあいつはわたしのこと初対面でビッチとか言い出す失礼な男だし、筋肉を鍛えることに脳が支配された変な奴だし、自分が愛用している抱き枕のことを長々と語り続ける気持ち悪い男だし……。
それにあいつはお姉ちゃんに手を出そうとするわたしの敵なのだ。
うん、やっぱりないわね。
今のはただの思い違い。たまたま今日が楽しかったから勘違いしてしまっただけ。
変態で、自分のことを誇り高き童貞とかわけのわかんないことを言っている頭のおかしなあいつのことが好きだなんてちゃんちゃらおかしい。
わたしはそう結論付けて、電気を消して眠ろうとした。
でも、何度寝返りをうっても浮かんでくるのはあいつの笑った顔で……。
「あーもう! ほんと腹の立つ男!」
わたしは眠れずに、枕をぼすぼすと殴りつけながら
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