助けたいから、俺は仲間を裏切る

@moruni

異世界転移 先輩と後輩

第1話 物語の始まり

「……ですので、貴方達は選ばれし勇者、或いは戦士なのです。」


神父の様な服を着たオッサンが、なんか豪華な建物で俺達に説明している。


「どうゆーこったいこれ…」


「知るか」


「知らん」


冷たい返事を返してくる近くのクラスメイト達。

なんでこうなったかと言うと……



学校

なんか校舎の周りが光る

ピカー!!

豪華な建物(イマココ)


外見たけど異世界でしたね間違いない。

オッサンが言うには、ここは『ニード王国』

そして、この世界には魔王が引き連れる魔物と人間とは違う、獣人やエルフなどが居るらしく、人間とは昔から対立しているらしい。


んで、最近魔物共が人間を襲ったり戦力が高まりつつある様で、大元の魔王を討つために神様が俺達を召喚したらしい。


因みに世界のカーストは


人間

獣人、エルフ等

魔物


の順で低くなる。


これ聞いた瞬間分かったよね、基本的に聖職者が面倒臭い世界だわ。

主に今喋ってる、自称神の声を聞く者さん達。


「今から皆様に、ステータスの表示をする魔法をお教えします。」


意識を別の事に向けている間に、結構話が進んだらしい。

学校の生徒、教師が全員召喚されたため、人数を分けて魔法を教えるらしい。



魔法習得中














「ステータス」


魔法を発動させるための詠唱をし、ステータスを開く。


月見 奏   17歳


天職  弓兵



あれ?ステータスって言うからには攻撃パラメータとかがあるもんじゃないの?


「あの…」


「はい、どうしました?」


近くにいた自称神の声を聞く者さんの1人に話しかける。


「ステータスに攻撃力とかのパラメータないんですか?」


「?貴方達の世界では、攻撃力なるものがあるのですね。質問の答えはハイです。鍛練を重ねる毎に己の肉体に力が付きます。その力は人によって変わりますが、生まれつき力が強い者、鍛練を重ねる毎に強くなる者、様々です。騎士団長のナーリヤ様も女性の細身ながら並び立つ者が居ないほどの力を持ちます。更には…」


要するに、力は『攻撃の力』、『防御の力』、『魔法の力』それぞれ力があるらしい。

其れ等を纏めて『力』と呼ぶらしく、攻撃の力が高い人や魔法の力が強い人が存在するらしく数値化はできないらしい。


んで、その力は生まれつき高い人、鍛練によって伸びる人などにも分かれる。


スキルも己の技能によって芽生える1つの手段と言う解釈らしい。



ふと、ざわめきが聞こえた。

聞き耳を立てると


「まさか本当に勇者が現れるとは…」


あー……

この手の世界の勇者はろくな事が…


「凄いよ!如月君!!」


クラスの女子が声を出す。


「やっぱ、如月か〜…」


如月 勇気


基本的に如月は良い奴なのだ、良い奴なのだが…チラッと如月の隣にいる女子を見る。


これまた異世界転移ものお馴染み、クラス…どころか学校のヒロイン『花田 愛菜』

天職 魔法使い(光、回復)


彼女が如月暴走のトリガーだ。…他にもトリガーは幾つかあるが。


「いやちょっと待ってくれ!」


眼鏡をかけた我らが2年2組の担任『桜木 茉子』先生が意義を唱える。


「オータムさん、我々教員ならまだしも生徒まで戦わせるのですか?」


オータム…たしか最初に俺達に説明していたオッサン……のはず。


「我々人間族が魔王を討伐するには彼等の力が必要なのです。」


「ですが!!」


「先生!」


如月が声を上げる。

うっわ嫌な予感しかしねぇ。


「俺、戦います!」


ハイでましたわ〜ほんっとこうゆー奴なんなんやら。


「先生!私も!」


花田も


「先生俺もだ!!」


如月の幼馴染の矢崎も


「俺達も!!」


クラスメイトの奴らも


「サイアク……」


如月みたいな奴が声を上げると大体こうなっちまうんだよなぁ本当…

命知らずもいいとこだぞ。


「…あぁ!!オータムさん、生徒を連れる時は必ず腕の立つ騎士達を連れて行ってください!それに、我々が元の世界に帰れる様に手配して下さい!それで百億歩は譲ります!!」


「えぇ、優秀な騎士達をお付けします。元の世界に戻る件は、全ての事が終わったら神は必ず褒美として元の世界へお戻しされるでしょう。」


「…結局の所、戦う事は避けられないか。」


そうして、部屋の割り当てなどで時は過ぎて行った。









十数日後




談話室的なそれ


「お疲れ様です。ゆーちゃん先輩。」


「ゆーちゃん言うな!」


ゆーちゃんこと『柚月 七海』

天職 侍

俺の1つ上、3年生の先輩だ。

ショートカットの銀髪で、片目隠れ、ロリっ子と属性マシマシの先輩でいつの間にか仲良くなり、ここ数日情報を共有していた。


「どうですか、前衛組は?」


「まぁ、あの…如月君…だっけか?がかなり張り切ってるね。そっちは?」


「まぁ、弓と護身のための剣を教わってる感じですかね。あと、花田さんとかは熱心に打ち込んでますね。」


ぽやーっと今日の訓練の状況を報告し合っていると。


「なんだお前達まだ起きていたのか。」


「「ナーリヤ騎士団長!?」」


ナーリヤ騎士団長がやって来たのだ。

ビックリしてゆーちゃん先輩とハモる。


ナーリヤ

天職 豪剣士


赤い髪の女性で騎士団長を務めている。

部下や俺達を常に気にかけてくれているメチャクチャ良い人だ。

身の丈程ある大剣を軽々と振るう。

実際見てみたが、まぁ凄い事、如月がぶっ飛んでた。


「早く寝ろよ?明日は国の外の魔物や、ダンジョンの魔物との実戦だからな。」


そう言いながら、ナーリヤ騎士団長は俺とゆーちゃん先輩の頭を撫でる。


「私はな、ナナミとソウに期待しているんだ。それこそ、勇者ユウキ以上に。」


「私達を…ですか?」


「あぁ、君達のカタナ…だったかな?と弓の腕はとても素晴らしい。……まぁ、それよりも私は君達の雰囲気が好きなだけだが。」


撫でるのを止め、俺とゆーちゃん先輩を抱き寄せる。


「君達のこの温かさと優しい心が有れば何処までも行ける気がするんだ。」


「勿論ですよ、ナーリヤ騎士団長。でも、俺達だけじゃないもっと仲間がいるんです。」


「でも、辛くなったら私達が相談に乗りますよ。出来る限りですけど。」


俺達の言葉を聞いてナーリヤ騎士団長の抱き締める強さが少しばかり強くなった。


「必ず、魔王を倒し平和を取り戻そう。」


「「はい。ナーリヤ騎士団長。」」


腕を緩め、抱き締めるのを止めるナーリヤ騎士団長。


「それと、その騎士団長ってのをやめてくれないか?」


「え?なんでですか?」


聞くと


「騎士団長と言う肩書きに距離感を感じるんだ。だから、私の事はナーリヤと呼んでくれ。」


俺とゆーちゃん先輩は少し思考し


「分かりました。ナーリヤさんがそう言うなら。」


「これからも俺達の訓練付き合って下さいね?ナーリヤさん。」


「あぁ、勿論だとも。さて、寝ろと言っておいて時間をかけてしまったね、ではお休み2人共。」


「お休みなさい、ナーリヤさん。」


「お休みなさーい。」


ゆーちゃん先輩と俺はナーリヤさんと別れ、それぞれの部屋へと戻った。











翌日


「ユウキ!動きが遅い!!」


「ナナミ!もっと踏み込め!!」


ナーリヤさんの声がここ『ニード平原』に響く。

如月やゆーちゃん先輩、俺などは戦闘系の天職なのでここに居るが、学校の奴らの1/3は非戦闘系天職なのでここに居ない奴らも多いし、どうも伸びの低い奴らは他の騎士達とベッコで訓練をしているらしいので更に人数が少なくっている。


(狙って………ココッ!!)


引き絞った矢を放ち、魔物の頭部を射抜く。

命を奪う感覚は…嫌だな……どうも慣れたくないと本能が告げている。


ゆーちゃん先輩達が上手く立ち回れないのもそれが原因だろう。


「光の杭よ、ここに!」


俺と同じ後衛に居る、花田や他の天職魔法使いの奴らも援護をしている。


「初めての実戦だったが、まぁ及第点といった所か。お前ら!休憩をしたら少しダンジョンに潜り撤収だ!」


「はいっ!」


ハァハァと息を切らしているゆーちゃん先輩に近寄る。


「水飲みます?ゆーちゃん先輩。」


「ゆーちゃん…言うな……悪いが、どうにも腕が上手く動かなくてな、飲ませてくれ。」


先程まで刀を振るっていたのだ、断る理由は何もなく二つ返事で了承する。


「……ぷはぁっ、あ〜しんどいなぁ…」


「そりゃそうでしょうよ。後衛の俺ですら常に神経擦り減らしてるんですよ?前衛のゆーちゃん先輩なんて俺の何十倍も辛いでしょうに。」


「そう思うなら、膝枕してくれ。」


なぜそうなると言うツッコミは置いといて。大人しくゆーちゃん先輩に膝枕をする。


「…………」


ゆーちゃん先輩は目を閉じている。


よく考えると、俺とゆーちゃん先輩って仲良くなってまだ数日なのに、膝枕とかを平気で頼める様になったんだよなぁ。

主に俺がする側だが。

異世界転移と言うスパイスが俺とゆーちゃん先輩の距離感をバグらせたのだろうか。


「側から見ると、まるで兄妹だな。ソウが兄だが。」


ナーリヤさんが俺達を見てクスクスと笑いながら近づいてくる。


「私が姉ですよ。何を言ってるんですか。」


「そう拗ねるなよ、七海?おにーちゃんに頼みたい事があるなら言ってみ?」


ナーリヤさんの言葉に悪ノリし、兄のフリをする。


「……なんか、悪い気はしないけどウザイ。」


「意外としっくり来たな。うん。」


ゆーちゃん先輩の言葉に少々傷ついたが、ナーリヤさんの言葉でさらに悪ノリをカマス。


「全く、酷いなぁ七海は。それに比べてナーリヤ姉さんは優しいなぁ。」


ナーリヤさんを姉さんと呼んでみた。

さぁ、どう反応するナーリヤさん!


「フフッ」


ナーリヤさんは微笑むと


「ソウ、ナナミをいじめてやるな。次、また同じ様な事をしてたらお姉ちゃんも流石に怒るからな?」


と、優しく言った。


「姉さん…」


「お姉ちゃん…」


俺とゆーちゃん先輩はナーリヤさんの姉力に屈したのだった。

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