第2話 八木沢紗理奈の体験

 それは、小学六年生になった私が風邪で学校を休んでいた日のことだった。

 「パパが早く帰ってきてくれることになっているから、おとなしく寝ているのよ」と言い残して、母は夜勤に出かけて行った。


 日が暮れる頃には、風邪はかなり良くなっていた。私は風邪でしばらくご無沙汰していた例の行為をするために、パジャマを下着ごと膝までおろした。

 いつものように股間に指を這わせ、目をつぶって快感を味わっていたその時、バタンとドアが開く音がした。

「紗理奈、風邪、大丈夫か」

 行為に夢中になってパパが帰ってきたことに気づかなかった私は、着衣を直すことも、指を動かすこともできず、呆然と身体を凍り付かせるばかりだった。


 まだ幼いと思っていた、血のつながらない娘のあられもない姿を見てしまったパパは、それでも普通に話しかけてきた。

「そんな恰好をしていると風邪がひどくなっちゃうぞ。ちゃんとパジャマを着なさい」


 自分はこんなにも動揺して、どうしていいのかわからないのに、大人の余裕を見せるパパに、私は無性に腹が立った。開き直った私は、パジャマを整えるかわりに、股間に這わせた右手の指を再び動かし、左手で膨らみ始めた胸を布の上から揉みしだいた。


「レディの部屋をノックもせずに開けてごめんな」

 私の予想外の行動に慌ててパパは謝った。そしてこう続けた。

「でも、紗理奈だって、時々俺たちの寝室を覗いているだろ」

 

 ばれていた。

 私の羞恥心が臨界を突破した。どうとでもなれと私はさらにその行為を続けた。じんわりと押し寄せる快感に、思わず口から熱いため息が漏れた。

「おいおい、悪い子だな。どれ熱はどうかな」

 パパは平静を装って私の額に手を触れたが、動揺は隠しきれない。

「うん、すっかり下がったみたいだ」

 熱を気遣うしぐさとは裏腹に、パパの視線は、私の細い指がまさぐる女性の部分をうかがっていた。


 私は、かねてからの思いを果たすべく、とうとう思い切った行動に出た。

「でも、ここが熱いの」

 私はパパの手首を握ると自分の股間に誘った。しっとりと湿り気を帯び、敏感になっていた部分に彼の太い指が触れた。自分の細い指がもたらすものとは全く違うその感触に、思わず私は声を上げた。


「こらこら、やめなさい」

 とうとう余裕を無くした様子のパパの声を無視して、私はさらに彼の股間に手を伸ばした。布越しに触れたものは、ママとの儀式の時と同様に、体積と硬度を増しはじめていた。

「パパ、紗理奈のここ、お熱があるの。ママにしてたようにお注射して、紗理奈を治して」


 その日、大好きなパパは、私の初めての男性となった。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る