第115話 血族と同族 5
歓待を受けてビクッと身を引くが、フレヤのそばに居たのがレオノーラと知って、彼女は驚くよりもホッとしているのが分かった。
「よかった誰もいない……こ、こんにちわフレヤ姉さん。セアラちゃん、レオノーラ姉さんも…こんにちわ」
「ルカちゃ…?ソフィアさんだーっ!お姉さんが増えたーーっ!」
ソフィアはすぐに駆け寄って来たセアラに抱きつかれた。
「ぷあっ、ちょ…セアラちゃん……」
「なになに?すっごいタイミング!どうしたんですか、今日はっ?」
何かに導かれたかのように現れたソフィアにフレヤはレオノーラと目を見合わせた。
「もしかして、ソフィアとしめし合わせていたの?」
「……いいえ。ただの偶然…だと思いますよ……?」
「そう、よね?………ふむ」
二人はこのありきたりな偶然に妙な違和感を感じて戸惑っていた。
「何かしらね?まさかエラまで顔を見せるとか……?」
「ん…?さあ……それは…………」
お互いに何とも歯切れの悪い。
「ねえセンセー……私の気のせいというか、気のしすぎかもしれないけれど………」
「エラの存在を感じる?」
「!!、まさかセンセーもっ?!」
レオノーラが口を隠して考えている。
「ふむ……分かりません。あまりにも漠然としていますが感触が不思議と明瞭で、こんな経験は今までありませんし………情動の感染のようなもの、でしょうか?ソフィアの偶然の直後ですから……」
「ああ…そうよね……?多分……」
はるかに多くのものを感受する彼女達でも未知の感覚はやはり神秘的に受け止める。が、二人以上が感覚を共有すれば、それには原因が存在すると彼女達は真剣に考える。
ソフィアはそんな面持ちの二人、いや、フレヤに直ぐに気づいた。
「フレヤさん…どうしたの……?」
「え?ああ、何でもないの。それよりいらっしゃいソフィア。ちょうどあなたの話しをしていたから驚いたわ」
頷く二人をソフィアが確かめる。
「ワタシの……?どんなお話しですか?」
「あなたのウチはこの街から避難するのかしら?ていう話……」
「あ……いえ、ウチは建物も頑丈に作ってありますが……特に地下室は天井のコンクリートの厚みが90センチもあって……防火扉もあるし防空壕と変わらないんです。だから今のところは避難する予定は無くて…………」
ソフィアの話に3人は目を丸くした。
「そ、そう。なるほどね、あなたの店にはお宝がたんまりとあるわけだから簡単に逃げるなんて出来ないかもね……まあ、そうは言っても家族の命には変えられないでしょうけれど……」
「はい、それはもう……いよいよ危なくなったら…エラさんが教えてくれるって言ってるし……だからお父さんとお母さんはそれなりに準備はしているみたいで……」
「ふうん、エラったらホントにマメねえ……ううん、頼りになるわね?」
正しい情報が耳に入るだけで暗中の不安が和らいでいく。少しでも行く道の先を見ることが出来れば迷わずに進んでいけるだろう。エラの心配性はその手助けになっていた。
お礼を兼ねて近いうちにでもエラに会うことができないだろうか……全員が彼女の顔を思い浮かべた。
そしてそれぞれが何気なく顔を向けた仕草に全員が驚くことになる。ピタリと同じタイミングで店の出入り口では無く、やや左の大通りの入り口の方向に皆んなの視線が揃う。それも1度と違わぬ角度でだ。
「!?、センセー!」
フレヤが堪らず声を上げた。
「これは……っ?偶然ではありませんね!セアラ、何故いま、そちらに顔を向けたのですか?」
「え、ええ?なになに??なぜってええとーいえ何となく……?ええと、ええとー、何となく…そこにエラさんが居るような気がして…………?」
「っ!、ソフィアは?」
「はい?!わた…わたし、ですか?はわわ……な、何だろう……分かりません…………あ、でも何故だろう…間違っていないような……ん、でも何をだろう??」
レオノーラに聞かれなければその感覚を意識もしなかっただろう。しかし敢えて聞かれると自分の行動に説明が出来ないでいる。レオノーラとフレヤは目を見合わせた。しかも……
フレヤは無意識に壁の向こうにある見えるはずの無い道を想像していた。
(え…なんで?)
そしてゆっくりと何かにドアの前まで目線を導かれて、止まった。
(でもまさか……)
半信半疑なんて結局は疑っているんじゃないか。そんな程度に思っていたが、それじゃあ確信はあるのに信じきれない……この心理を抱えた時にフレヤは初めてこの言葉の意味を理解した。そしてやっぱり曖昧の扉は開く……
「っ!」
キッ…と、細い音を立てた扉に四人の視線が集まる。しかもフレヤが信じきれずに確信していたエラが現れた。
ソフィアは息を飲んで驚き、セアラは首を傾けたまま動かない。レオノーラはフレヤに驚嘆を訴え、フレヤは肩をすくめてブルっと震えた。
(鳥肌が立ったわ……)
しかし一番純粋に驚いたのは誰でもないエラだった。
「えっ?!な…何で皆んないるのっ?!ナゼそんな目でワタシを見ているのっ??」
とまあ、エラの目にはいつもの喋り方を忘れるほど珍妙な光景に映った。それに見てとれる感情は驚きと困惑ばかり、なのだから。
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