第114話 血族と同族 4
「セアラ……アナを好いてくれているのは嬉しいのですが、私達教師も休校になったからといって子供達を放ってはおけません……」
「はい…?」
脈絡も無さそうに始まった話にセアラの緩んでいた顔に固さが戻った。
「ええと?」
「休校になっても街に残り続ける教師達が集まって、やはり疎開しない子供達のために郊外のどこかで昼間の避難所を兼ねた私設教室を開けないかと計画しています。市の公認と施設を得られれば、この街でもより安全な教室が出来るはずです」
「あれ!?じゃあじゃあ…レオノーラさんもアナちゃんも結局は学校……?」
「そうですね、まだ計画の段階ですから全てが未定ですが……あまり間を空けると疎開した子供達との差が広がってしまいますからね。なるべく早く話を進めたいと思っています」
セアラは頭をひねって考えた。好きな時に好きなだけ遊んで、これを機に
「ううむぅ…………ならば、その教室とかが始まるまでがチャンスかあ…ふむむう……」
一人でそんな事を目論んで、チラリと自分を気にするセアラを見てフレヤは思う。
(どうせヒマだけど、ウチの仕事は休む気満々ね?)
でもそんなことはさらりと流した。
「それじゃあセンセーはこの街に残るのね?まあ、センセーの家も学校も街の中心地からは離れているものね……」
「ええ、それでも取り敢えず…といったところですが。もしもの時にはあの子もひとりでも飛べる歳です。ですから取り敢えずは、まだこの街を見守るつもりです」
どこか超然として、そして世界を俯瞰しているところも『彼女達』の特徴的なところだ。
「そう……センセーだってかなりの意地っ張りじゃない?その上、自分にも厳しい…………」
「そうですか?」
「ええ、尊敬する……尊敬できる姉さんよ!」
その言葉を聞いてレオノーラはとても嬉しそうに目を細めた。そして、そんな自分の言葉と気持ちを正面から受け止められるレオノーラがフレヤは誇らしかった。
「そういえばセアラ、家族会議で結局何が決まったの?マルケイヒー家はどうするの??」
2人の話しを聞き入っていたセアラは急に話しを振られて驚いた。
「はえっ?ウチ…?あ、そうだ……ウチはおばあちゃんの所で間借りする事になりましたー」
「ああ、やっぱり郊外のあのお屋敷ね?」
「えー?屋敷だなんて、ここに比べれば小っちゃいちっちゃい」
マルケイヒーには街の北側に代々受け継いでいる本宅があった。4代前に建てられたその家は広い庭付き一戸建て、2世帯が楽に暮らしても余る広さがある。
「それでね、フレヤさん。お母さんからフレヤさんに言づてがあるんだけど……」
あらたまるセアラにどきり…と、させられる。
「わたしに……?」
セアラが腰に手を当てて前のめりになった。
「ええとね……『私達と一緒に来るか、私がそっちで一緒に住むか…好きな方を選びなさいっ、フレイ!』だってさ……」
フレヤが固まった。
「………………は?」
「あの感じだと拒否権は無いよー?ああなっちゃうとホント頑固なんだから……」
「う、ううむ……」
お互いの自由を尊重するのが魔女同士の関わり合いだが、ノルシュトレームとマルケイヒーの関係はその枠の中には収まらない。セアラの両親からはフレヤは自分の娘だと言い切られるほどに愛されていた。
「ちゃ、ちゃんと話しておかないと後が怖そうね……」
「うんうん。まずはタップリとおしゃべりに付き合って髪の毛が擦り切れるくらい撫でさせてあげないとー」
「!」
フレヤは両手で思わず髪をおさえた。更にアーサラの取り扱い説明は続く……
「向かい合わせじゃダメですよー?横に寄り添っていつでもお母さんが抱きつけるようにしてあげないとー!」
そしてフレヤはうなだれる。
「え、ええ知ってる……もっとちゃんとケアしておかなかった私が悪いの……」
「なんだかんだ1時間かな、それでようやく準備完了だけど……でもどうかなーー?今回はフレヤさんの同居は絶対みたいでー……でもいいじゃないですか、ウチから通えば?」
「まあ、ね。それはかまわないのだけど……と、とにかく、話してみる…………」
どうやってアーサラを攻略しようか、難しい顔をするフレヤをセアラが笑った。
「うふふ……考えてみればおかしかったんだよねー?今は一人暮らしのフレヤさんがウチの家族会議に呼ばれなかったなんて……最初から有無を言わせるつもりがなかったんだねー」
「そう言われれば…そうね。そういうことね、まったく……」
くすくすとセアラとレオノーラに笑われてフレヤは苦笑いしか出てこなかった。
「ふふ、まいったわね。でもこうなると……気になるわね?エラはまあ、想像出来るけれど……ソフィアはどうするのか…ふたりとも何か聞いてる?」
レオノーラは首を振り、セアラも首を傾げて言う。
「ワタシも何も……どうするんだろう?ルカちゃんにも会いたいなあ……」
するとその願いに応えるように再びメイポールのドアが開いた。
「いま…私のこと、呼んだ?セアラちゃん……」
「にょーーっ!?」
「っ!!」
3人はあまりにも神がかったタイミングに目を疑った。でもそこにソフィアが立っていたのは確かだった。
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