いじめではないなにか
バブみ道日丿宮組
お題:暴かれた道 制限時間:15分
いじめではないなにか
願望が叶う装置があれば、僕が進む道を険しくはしないだろう。
「……ん」
今日は外履きか。
盗難管理ぐらいまともにやってほしいものだ。監視カメラの1つでもついてれば学校が対処してくれるかもしれないが、ないものはない。
「……はぁ」
上履きで外を歩けないことはないから、問題はない。このまま帰るとしよう。明日にはどうせ戻ってきてるだろう。
このいじめのような状況が始まったのは、とあるクラスの男子からの告白を断ってからだ。
別にクラスメイトに無視されたり、トイレの上から水をまかれたり、机にひどい言葉をかかれたり、机の中に死体があったりということはない。
主に起こってることといえば、上履きが七色に装飾されてたり、男性が抱き合ってる写真集が下駄箱に入ってたり、仲がそれほどよくもない男子に肩を叩かれたりするぐらい。
これといって問題にするようなことじゃない。たまたまそういう展開が選ばれたわけで、ぜったいにその展開が選ばれたわけじゃない。道というのはほんらいそういうものだ。
まぁ……毎日のように下駄箱にいろんなものを入れられるのはたまったもんじゃないけど……。
昨日なんかは大量のラブレターが入ってて、クラスでいらぬ注目を浴びた。中身はどれもシンプルで『あなたに恋してます』『好きです付き合ってください』『おっぱい触らせてください』という感じで悪い感じなのはない。ちなみに差出人名は書いてない。完全に無意味な手紙だ。
内容的には気持ち悪いという感触はない。さすがにおっぱいは触らせたくはないが……第一にもふほどのものを持ってない。誰かに好かれてるかもしれないという感触だけを浴びせるのがいじめとはいえないので教師にはさぞ人気者のように見えただろうな。
実際にホームルームで僕が手紙に悪戦苦闘してる姿を教師は楽しそうな視線をこちらに向けてた。
「……なにしてるの?」
玄関口を出ようとすると、告白してきた男子がいた。
しかも僕の外履きを持って。
「これいる?」
「いるもなにも僕のだよね? 返してよ」
一悶着あるのかなと思ったが、特に何も起こらなかった。
「いい匂いだったよ」
「そう……良かったね」
こんな変態が告白してきたのか。残念だ。優しそうな顔をしながら匂いフェチだとは……。この靴除菌したほうがいいかな? 洗ったほうがいいのかな? それとも捨てたほうが?
いや……なにをしたとしてもまたどうせこの男子はやってくるだろう。
いたずらしてたのがこの男子だけなのかはわからないが……。
「さようなら」
上履きを下駄箱にしまい、外履きで玄関口に戻るまで、男子はずっとこちらを見てた。
「さよなら」
視線が遠ざかってる感覚を味わいながら、僕は学校をあとにした。
絶対に上履きになにかされてるだろうと、そう思いながら……。
いじめではないなにか バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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