未定

@kona_milk

死体

空から死体が降ってきた。

本当に? たぶんそう。死体。人間の?

それはなかなか「重そうな」音がした。1人の人間の、体。死体。重さのある音。


空から死体が降ってきた。まるで雨でも降るみたいに。止まない雨。止まない死体。

なんせ、死体は大きい。雨粒と違って当然に。

雨は側溝に流れていく。マンホールに流れていく。死体は流れない。

積み重なっていく。どこまで? 雨みたいに降る死体。今日の降死体量は何mm?


私はどこから話しているのか。

だって、そんな――雨みたいな――勢いで死体が降ってきているなら、死体に降られているなら、私なんてすぐに埋まってしまうのではないか。

そう、そうだ、私は既に埋まっている。

身動きひとつ取れない。

死体が降ってきてすぐに、私は降ってくる死体に押し潰され、身動きひとつ取れない。

上からどすどすと音がする。

体にかかる圧が増していく。


きっと私は死ぬだろう。このまま埋もれて死ぬだろう。

死体に埋もれて死体になる……なんて、そんなの、何も面白くない。


生きたい。生きたいな。

もがくことももうできない。

そして、そして……。


――。


死体が降った空に虹がかかる。

虹を映す水溜りはない。

死体は止んだ?

止んだかもしれない。


もう降られたくないな。

もう死体には降られたくない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

未定 @kona_milk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る