第10話
そう決心し立ち上がり、飛び立とうとするわたしをふたりが慌て、引きとどめる。
「おろかなとりはしんでんにぃぃっ!」
「えっエールっ絶対離すなよっ!!」
「わ、か、るぅっ!」
右腕にハットくん、左腕にエールくん。
がっしりしがみつかれては、振り払うことも出来ない。
無理に羽ばたき、傷付けたくない。
大人しくすると、拘束が緩まった。
離しては貰えない。
…隙がない。
「ハァハァ…あ、アレク様、確認させて下さい…」
「…なにをだい」
ハットくんが息を切らしながら、恐る恐る訊ねてくる。
「ハァ…ふぅ…フレイル先輩は、アレク様を見て顔を真っ赤にしますか?」
思い返す。
「ああ…発熱したように真っ赤になって…心配して熱を冷まそうと触れようとしたところを払い退けられ逃げられてしまった…ぐす…」
思い出すと胸に切り裂かれたような痛みが生じた。
「それ以来、目も合わせてくれない、ですね?」
「…ああ…うつむいて…顔を背けて…近寄ると…一定の距離を…ぐず…」
「ご自身がめっちゃ良い匂いする自覚は?」
「…けものしゅうのことか?すまないくさくてみずあびしてくる…ぐすっ」
聖なる湖畔に三日浸かれば、きっと綺麗になるはずだ。
「後にして下さい。それより、手土産…本当に要りませんとか言われましたか?」
そう問われ、思い返す。
「…いや…言われてはいないが…」
「じゃあ、なんで手土産不要そうにしてる、って思ったんですか」
「それは…『いつもお土産を持って来てくださるのに…俺はまともな礼も言えぬ無作法ばっかり繰り返して俺は愚か者です!嫌われて当然なんです!』と、まだ白鷹とアレクが同一視されていない時に言われて」
「えぇ…アレク様…」
「アレク様ぁ」
「え?え?」
ふたりがわたしに残念なものを見るような視線を向けてくる。
わたし、何かしただろうか。
「それはフレイル先輩が、アレク様にお土産貰ってるのに失礼な態度しか取れなくて困ってるって、白鷹様に相談したんですよ?…なんて答えたんですか」
「…や、止めるように伝えよう…と」
その時フレイルくんは安堵したような、寂しそうな表情を浮かべていた。
わたしは迷惑行為が止まって良かった、でも物はちょっと欲しいかも、というとこかと思ったのだが。
「…寂しかったでしょうね…それ…楽しみにしてたのに…」
「たの、しみ…?」
「お礼が出来ない自分が嫌われてる、って…アレク様が来ることを喜んでるって意味じゃないですか」
わたしは、エールくんの言葉をゆっくり噛み砕く。
確かにそうとも取れる。
だが、そんなはずない。
理解、出来ない。
わたし、アレクが来ることを喜ぶ?
そんな莫迦な。
「フレイルくんはわたしの話なんて、聞いてくれない」
「なんの話するんですか?」
「そ、その…恋をしたのでどうすればよいのかの教本を」
「…アレク様の姿ででも?」
「そ、そうだが」
「…誰かに片想いしてるひとの話は楽しいですか?」
「…うう…だっだが、同一してからは別の話題をするようにしているっ」
「ま、まさか戦の話ですか!?」
「そ、うだが…?それと…好き子が出来そうだったが駄目だったという」
「アレク様っっ!駄目すぎですよ!フレイル先輩があんまりだっ!」
「アレク様ぁっ…よりにもよってそんな話題…嫌に決まってます!」
何故か怒られた。
何故だ。
「…駄目だ。アレク様はまだ人間の感情がまだ理解出来てないんだった。今回のお叱りも勘違いして逃げた訳だし」
「そうだね。それじゃあ、分かり易いように動いて貰えばいいんじゃないかな」
「どうするんだ」
「告白するんだよ」
「それだ」
「多分、というか、絶対好きだし」
「あ、俺分かったわ。なんでフレイル先輩が砦に来てたのか…心配でたまんなかったんだ…」
「なのに、アレク様は誰かを好きで、自分じゃない誰かに恋をしようとしてそんな話ばっかりしてくる…酷い…」
「ああ、酷い…と、言う事でアレク様」
「う、うむ…?」
「告白のお時間でございます」
ハットくんが忠実な騎士と成りてわたしの前に跪いた。
え?
告白の時間と申したか我が騎士よ。
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