第25話 お化け屋敷。

 このお化け屋敷のテーマは廃遊園地だった。

 入場門をくぐると真っ先に見えるのがこの遊園地の目玉になるお城。もちろん廃墟でドラキュラ伯爵のお城みたいにコウモリが飛んでいる。

 園内は昼間だというのに薄暗く空には真っ赤な月が昇っていた。これも月に作られた大型都市ならではの技術だろう。

「月面から空に月を見上げることになるのは不思議な気分だな。」

 カズマがそうつぶやくと日傘をしまってカズマの腕に抱き着いて来たディアナが自分の考えを答えた。

「たぶんこのテーマパークのプロデュサーかデザイナーが地上の人なんだよ。」

「なるほどな。つまり自分たちのイメージがそこ止まりだった訳だな。」

「月面のお城のバックに赤い地球が見えるほうが臨場感あるのにね。」

「だよな~。」

 そんなことを話しながらお土産物屋さんが並ぶメインストリートを抜ける。

「最初どれ行く?」

「ふっふっふ、お化け屋敷と言ったら絶叫、絶叫と言ったらジェットコースター、ならば最初に行くのはスリラーマウンテンよ。」

 カズマの質問にディアナは拳を上げて宣言する。

「という訳で早速GoGoGoGoGo!」

「あっ、20分待ちだってさ。」

「何でこんなニッチなテーマパークに人集まっとんじゃい。」

「いや、人が集まらないと本当に廃墟になるからね。」

「そこがいいなじゃん。心霊スポット行ったら順番待ちとか萎えるでしょうが。」

「それじゃあ先に他のとこ行く?」

「仕方ないわね。じゃあ空いてるところにしましょう。」

「それならミラーハウスなんかどうかな。人も少ないしなかなか雰囲気あるぞ。」

「いいわね。そこにしましょうか。」


 ミラーハウスは魔女の館の廃墟をイメージした作りになっている。

 暗い室内を懐中電灯で進んでいく仕様になっていて、なかなかに廃墟を探索している雰囲気が出ている。

 ひび割れた鏡の中にいくつもの自分の姿が移り込む。

 廊下だと思ったらガラスの壁があるなど迷路みたいになっている。

 少しづつ、少しづつ進んでいくと――――


 ガシャー―――――――――――ン。


 と、大音量で何かが割れる音が周りから聞こえて来た。

「うおう。今のはビックリしたな。」

「そう、よくある演出じゃない。」

「その割には俺の手を掴むのに力が入っているけど。」

「そそそ、そうかしら!これはあれよ。もっとお兄ちゃんにくっ付いていたいからよ。」

「ほんとにそうか~?」

「ホントよ。なんならここで始めてもいいくらいの気分よ。」

「いや、お前TPOはわきまえろよ。」

「だからこれで我慢してるんじゃない。」

 そんな風にイチャついていたら。


 ピコーンピコーンピコーンピコーンピコーンピコーンピコーン


「わあ!」

「なんだ、端末からだな。」

 突如端末から響いた音は緊急警報を知らせるものだった。

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