第7話 白鳳院先輩との話し合い(1)



 ※(全視点)



 僕が告白した翌日の朝、校門前でバスケ部の滝沢(たきざわ) 龍(りゅう)先輩の恋人で、きらびやかな銀髪に、まぶしいばかりの美少女で有名な、北欧ハーフの白鳳院(はくほういん) 誌愛(しあ)先輩が待ち構えていて、


「さりーの事で話があるから、お昼一緒に食べよ~。あ、さりーは今日熱出して休みだから不在ね~」


 とお呼びだしを受けたのだった。


 周囲に同じクラスの生徒もいたのか、その日は朝のホームルーム前と、その後の休み時間が来るたびに、クラスの男子女子に白鳳院先輩の事を根掘り葉掘り、やっかみ半分に聞かれて困った。


 部活の先輩の恋人で、部活関連での話があるのだろう、と誤魔化しておいたが、元々目立つのが嫌いな僕としては、余り歓迎する事態ではない。


 でも、白鳳院先輩は黒河先輩の幼馴染で親友だと聞いている。恐らくは話の内容は、昨日の告白と、休んだ黒河先輩の事についてだろう。


 僕としては、黒河先輩の親友なのだから、その心証を悪くは出来ない。


 今までも部活の練習の応援に来ていて、お互い初対面ではないけれど、彼女は基本、彼氏の滝沢先輩しか見てないので、僕の印象がどんな物なのかは分からない。


 かなり天然で不思議な感じのする女子(ひと)だけれど、ここは好印象を稼いで、黒河先輩の印象を良くする事に繋げたい。一応、申し込みの返事はまだもらっていないのだし、OKの返事を貰える可能性が、少しでもあると思いたいところなのだ。


 多分そうじゃないかと考えていた、風早(かぜはや)ラルク先輩との仲が偽装である事が分かって、いきなり性急的に、衝動的に告白してしまったのは早まった真似だったかもしれない。


 そこの事ではこの学校を受験するかどうか迷ったぐらいの重大事だったので、思わず先走ってしまった。


 もう少し慎重に、冷静にいこう。何事も、状況を見て確実な戦略、戦術をたてるのが勝利の鍵だ、と師匠もよく言っていた。でも、恋愛なんて今までした事もない自分に、何をどう戦略を立てられるのか疑問だけれど、ともかく落ち着いて……。



 ※



 いつも皆(四人)で食べているけれど、今日は大事な話だから二人だけでね、と中庭の端のベンチに二人で座る。


 同じ様にベンチで昼食中の他の学生からは、明らかに注目されているが、距離があるので話声は聞こえる心配はない。


 僕は自分で作った弁当を、白鳳院先輩は、小食なのかサンドイッチを食べただけ……あれ?それなりにあった筈なのに、僕と同じ位に食べ終わっている。気のせいかな?


「じゃあ早速本題なんだけど~、君はさりーのどういう所が好きなの?」


 本題の中核過ぎて、飲みかけていたパックの牛乳が、思わず気管に入って思いっきりむせてしまった。


「ゲホゲホ……ど、どういう所って……」


「う~ん、つまり、ぜん君は、ほとんどさりーとは付き合い、というものがないでしょ?学年が違うから、余計に。そういう人って単に、さりーの外見だけ見てのぼせ上がって、“好き”とか軽く言うんだけど、それって本当の好きなの?アイドルや映画スターを好きと同じ様な、内面そっちのけな好きじゃないの?」


 何だか、普段はのんびりのほほんな白鳳院先輩と口調の印象がまるで違う。


 早口にまくし立てられて、僕は呆気に取られた。


「どうなの?」


 目つきすら険しい。


「あ……え、と、僕は、別に黒河先輩の外見にだけ惹かれた訳じゃ、ありませんよ。先輩が美人なのは勿論分かってますが、僕の母も、相当な美人なので、綺麗な女の人に耐性がある、といいますか……。確かに内面を分かっているとはとてもいえませんが……」


 ここは余り飾らず、本当の事を言うしかないだろう。


「ふむ?そういえば、君はさりーの事、“ずっと”好きだった、とか言ったらしいけど、入学して2カ月のずっとなんて、大袈裟じゃないかな?」


「あ、それも違うんです。僕が、黒河先輩の事を知った……初めて見かけたのは、一昨年(おととし)の夏の中学バスケット大会の県予選の会場で、滝沢先輩達の活躍もその時初めて見たんですが……」


「へぇー、そうなんだ。それでそれで?」


 厳しい追及風だったのが、興味本位な感じに変わってる……。


「それで、バスケにも興味を持って、大会はあの伝説的な決勝戦まで見続けてたんです。でも、見ていると、応援席で一人だけつまらなそうに退屈そうにしている黒河先輩の事が気になっていって……」


「あ~~、さりーは男性嫌いなのもあって、余りバスケに興味なかったから、私達が無理につき合ってもらってたのよね~」


 白鳳院先輩は困った様に苦笑いしている。


「あの、全国大会前優勝の有名中学を、10点差、5シュート圏内まで追い詰めて負けてしまった決勝は、感動でした……。


 でも僕は、その盛り上がりの中で、一人寂しそうにしている黒河先輩の事が気になってしまって、つい目で追う様に、知らない内になっていて、先輩達の中学が対外試合にいっている時とかは、欠かさず見に行ってたんですが、最初はバスケが目的だった筈なのに、黒河先輩を気にする比重の方が大きくなっていって、俺もその、初めてだったので、その感情がなにかよく分からず、持て余してたんですけど……」


「ふむふむ」


「先輩達が進学して、その……黒河先輩が、風早先輩の、恋人だって噂話がそこに進学した同じ中学の先輩達から聞かされて、その、ハッキリ自覚した、といいますか……」


「ありゃま」


「で、俺も先輩達の高校に進学しようと考えていたんですが、もしその話が本当なら、俺は尊敬する先輩達の部活に入れても、自分がどれだけ好きになっても届かない人への想いに苦しむ事になるのか、と進路を迷いに迷ったのですが……」


「………」


 罰の悪い顔をしている。


「でも、大会中や、他の試合の時もですが、その様子から、風早先輩の恋人は、いつも三人一緒に応援していた、もう一人の可愛い感じの女の子で、その……事情があって、黒河先輩を見せかけの“恋人”にしているのかな、と。勝手な自分の願望込みの憶測でしたが、それに一縷の望みを繋いで進学して来た訳なんです」


 なんとか自分の状況を説明出来たかな?余り人に言いたい話ではなかったけれど、僕が本気だと分かってもらえないと、この先なんてきっとないだろうから。


「……うんじゃあ、君の気持は本当だとして、事情があって、男性不信になったさりーを、君は私達が今までずっとして来た様に、守れるのかな?


 昨日、さりーを助けてくれたらしいけど、あれは君のファンクラブがしでかした事で、プラスマイナス相殺だよね。君は、大事な選択を迫られた時に、サリーを守る選択が取れるのかな?」


 また厳しい目に戻って、白鳳院先輩は言う。


「それは、勿論守る選択をします!絶対、必ず!」


 必要以上に力を込めて言った。


「それなら、あの過激なファンクラブをどうにかしないと駄目だよね?なんか問題になって来ているみたいだし」


「……そうなんですよね。もうこれで何回目かの問題行動で、僕と同じクラスの女子も何人か脅されて、気の弱い子はしばらく学校を休んだりもしてます。


 一応、先生や生徒会に言って、厳重注意してもらってる筈なんですが……」


 正直頭が痛い。


「ありゃりゃ。ともかく、それはそれとして、私としては、さりーがずっと男嫌い克服出来ないのは、これからの将来、長い目から見ても、絶対に良くない方向にしか行かないと思うから、何とかしたいとは思っていたの」


「はぁ……」


「君は、さりーのリハビリ相手には最適じゃないかと、私は思っているのよ。なんか、男臭くない、背が低くて可愛い印象だから、普通に話せた、って言ってたし」


「……余り男としては、嬉しい評価じゃありませんね」


「まともに話せないよりはいいでしょ。それじゃあ、さりーがどうしてそうなったか、過去の話を聞く覚悟はある?」


 男性不信になった過去……。当然、余りいい話ではないだろうけれど、それを聞いて僕が、黒河先輩の力になれるのなら、それは絶対聞くべきだ。


「あります!聞かせて下さい!」


 白鳳院先輩はそれを聞いて、何故かニヤリと意味ありげに笑った。










************************

女主人公:黒河(くろかわ) 沙理砂(さりさ)

自称ごく普通の女子高生。母親がスペイン出身のゴージャス美人で、その血を継いで容姿は黒髪美人だが、性格は平凡な父親似。過去のトラウマから男性全般が苦手。


男主人公:神無月(かんなづき) 全(ぜん)

高校一年生だが、背の高くない沙理砂よりも低く、小さい印象がある。

バスケ部所属。その小ささに似合わぬ活躍から、三年女子を中心としたファンクラブがある。本人は迷惑にしか思っていない。

物語冒頭で沙理砂に告白している。


白鳳院(はくほういん) 誌愛(しあ)

沙理砂の幼馴染で一番の親友。北欧出身の(実は)貴族の母を持つ。白鳳院家も日本で有数の名家でお金持ち。使用人やメイド等が当り前にいる。

本人は輝く様な銀髪(プラチナブロンド)で、容姿も美人。普段おっとりぽよぽよ天然不思議系美少女だが、実はキャラを演じているらしい。

心に傷を持つ沙理砂を大事にしていて過保護状態。

沙理砂に相応しい相手か、全を厳しく審査している。


苗字を、向こうのキャラの特性に合わせて考えたので、余り普通な苗字が少ないかもです。

後書きキャラ表は、某氏の作品に影響を受けて(^ー^)ノ



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