『スタンピング』 -〈ウサギの勇者〉あるいは、〈刈るもの〉 の物語-
みなはら
第1話 『スタンピング』 -〈ウサギの勇者〉あるいは、〈刈るもの〉の物語-
『スタンピング』 -
◇◇◇◇◇◇
ネザーランド・ドワーフ(ミニチュアウサギ)オランダ原産
・グレードワーフ(オーカ)ブルーオター
・ブラウンドワーフ(ストロー)フォーン
ストロー:槍使い
オーカ:ナイフ使い
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これはある世界の物語。
中世に近い文明を持つ、鉄と火と魔法の世界。
現在、この世界で一番繁栄をしている種族は人だった。
この世界には人に準ずる、あるいは、人をはるかに超える知性を待つ種族たちが住み、暮らしていた。
そのうち幾つかの種は、人により、知性ある種族と認められていた。
彼らのなかで人と近いものは、人と交わり、文明と呼ぶ厄介な豊穣という甘美な毒をその身に受け、その幾らかは人に近いものいう地位を甘受していた。
彼らは人と共に生きた。生きざるを得なかった。
緩やかな死と共に、やがて居なくなったもの。
混じりあい、新たな人と成ったもの。
人との交わりを嫌うもの。
人を避けたもの。
争いの果てに絶えたものもいた。
知性ある
そうして広がる人の世界のなかで、ひっそりと生きた。
世界の天秤は、人に傾き続けていった。
けれどもその中に、ウサギは含まれて居なかった。
人と話さないウサギは人でなかった。
◆◆◆
暗闇のなかで小さく跳ねて動く生き物。その小さな群れ。
そのなかの二羽の物語だ。
https://29321.mitemin.net/i553098/
グレードワーフ(ブルーオター)のオーカ。
ブラウンドワーフ(フォーン)のストロー。
子供の頃に人間に捉えられた経験がある。
明るい色合いのストローに率いられた群れ。
刈り群れのリーダーであり、気分屋だが明るく仲間に好かれるストローと違い、
オーカはどちらかというと陰気で、他のウサギをあまり身近には置きたがらない。
物想いにふけることが多く、巣穴では独りでいることが多い。
オーカは群れから離れずに跳びながら、辺りへの警戒を怠らずに、今も考えることをやめない。
自分たちを捕まえた
なぜ殺したり乱暴しないで、撫でさするのだろう?
彼らは
ごくたまに
やはり
逃げるか刈るか、
けれどもストローは人が好きなのだ。
小さな
家族を殺して皮を剥ぎ食べた大きな
捕まっているとき、小さな
大きな
ストローや自分たちの
だから自分よりも幼いストローを連れて、
たぶんストローには
◆◆◆
穴が広くなってくる。
https://28310.mitemin.net/i552246/
獣たちを刈るナイフ、
恐ろしく軽く鋭いそれを取り、手入れを始める。
自分やストローたちが
ただ、ウサギの作ったものは人の技に及ばない。
刃の鋭さ、重さ、いろいろが人のものへと並べずに、追いすがることもできない。
そのなかで、
まだウサギの知らない知識がいくつも含まれている。
刻まれた
その刻みをただ真似ても、同じ力は起こらない。
とはいえ、
たとえ
今、
自分たちは一方的に人に捉えられ、好きにされるだけのものではなくなった。
その事はウサギたちの群れに異様な興奮を与えた。
不用意に近づいてくる
そうした危険には対処できる。
今の自分たちならば、巣に近づいてくる
刈り倒す。
今、
◆◇◇◇◆
ストローの
タタン!(そこで止まって!)
タン!(了解!)
仲間からの
ウサギの
注意深くしていても、
そして、静かに待ちうけるウサギたちの包囲の輪の中へと気づかずに入り、その刈り群れの罠に陥る。
ダンッ!(攻撃っ!)
ウサギの攻撃は静かだ。
雄叫びも、ときの声もない。
もっとも、ウサギには声帯が無いのだから、声を発することも無いのだが……。
「出たぞ!死のウサギどもだ!」(…!………!)
「カエルバノグ(注)災厄の再来か!」(……………!)
雷のような吠え声と、金属の
耳の良い
オーカは表情を変えず大きな
穴ウサギにとって、
耳は暗闇で目以上に機能し、
床や壁、天井すら
ウサギの骨は鳥のように空洞で脆いが軽く、強靭な脚力で洞窟内を素早く立体的に疾駆されると、人の目ではその軌道は捉えがたく、
ましてや暗闇ともなれば、四肢の刃物などをむやみに振り回しても、まず捉えられない。
ここでは、
暗闇で目が利かず、耳はウサギにはるかに及ばない
◆◆◇◆◆
冒険者には反応できない素早さで、
未熟なウサギが、
けれども、この
その瞳に槍を突き立て、跳びすさりながら足先で
新たな槍を準備して突進することを繰り返している。
あんな真似はストローにしか出来ない。
激しく振動を立てて倒れる
串刺しにされて、焼かれ食われた親や仲間たちの復讐だと、
興奮したように
ストローの眼に映る、
自分の姿もストローと変わらない。
興奮し、ぎらぎらとした目を輝かせている姿が映る。
自分が小さな
自分も、あの時に少し大きな
けれども、
小さな
あの優しい手のひらの温もりは忘れていない。
忘れられない。
そうして
小さな
大きな
おそらくは悲鳴であろう、意味のわからない叫びか言葉かわからない音を、鳥のように口から吐きながら倒れる
大きな
オーカは次の
◆◆◆◆◆
狩りはウサギたちの圧勝。
一羽の被害も出ずに、
嬉しげな
オーカはそこに混じらずに、すこし離れたところから彼らの様子を聴いていた。
刈り落としの
ウサギのこと、刈られた
ウサギが勝てば人はいなくなる。
人が勝てば居なくなるのはウサギだ。
そうなれば、過去に居なくなった、人と相容れなかった種族と同じように、
ウサギは
そして人の世が続く。
オーカには、人とウサギの二つが交わる世が訪れないことが、すこしだけ残念だった。
自分はストローのように狂っているのかもしれない。
オーカは誰にも聞かれぬように、そっと息を吐いた。
◇◇◇◇◇
時が過ぎて、
ブルーのオーカも、フォーンのストローも居なくなった頃、
ウサギたちの
魔法的な素養があり、
ただ、ウサギたちは声を持たないため、
けれども
オーカが
初の
ブルーのオーカの奪ったナイフには数々の
ナイフに刻まれた数々の
ロップたち、
それらの紋章の効果、
ルーンマスターたちは、ウサギ独自の魔法を紡ぐようになり、
https://28310.mitemin.net/i552247/
そののち、
人とウサギ、両者の交流が始まるのは、
ロップ(垂れ耳ウサギ)の中から現れた
筆談による
◇◆◇◆◇◆◇
オーカの望んだであろう世界が訪れる。
世界の天秤がウサギに傾くかは、未だわからない。
https://29321.mitemin.net/i553099/
『スタンピング』
〈おわり〉 あるいは、〈はじまり〉
〈登場人物〉
・ネザーランド・ドワーフ(ミニチュアウサギ)オランダ原産
グレードワーフ(オーカ)ブルーオター
ブラウンドワーフ(ストロー)フォーン
ストロー:槍使い
オーカ:ナイフ使い
・ホーランド・ロップ(垂れ耳ミニチュア)ドイツ産
ロップ(仮称、名称無し):紋章師
-つぶやき-
モンティパイソンの方々と、ロバートウッドヘッド氏に感謝を。
そして耳男を愛した手塚治虫大先生に、変わらぬ感謝と敬愛を捧げます。←自分にとって、二羽の主人公ウサギは、ある意味で耳男でした。
そして、
イメージをお渡しして、自分のわがままを聞いていただき、ウサギのフェルトアートを苦労して作っていただきました、
天理妙我さま!
ご自分で描かれたイラストで、分かりやすくフェルト製作のデザイン説明(アドバイス)をしていただきました、
塩谷 文庫歌さま!
お二人に感謝を。
どうもありがとうございました(*´∀`)♪
感謝しておりますm(_ _)m
(注) 本文中のカエルバノグは誤記(故意)です(^_^;) (カルバノグ洞窟の怪物、ウィズの
ロップは垂れ耳、ここではホーランド・ロップ(垂れ耳ミニチュア)というウサギ品種のことです。ドイツ産のウサギです。←原産はオランダ、だったかな?
ネザーランド・ドワーフ(ミニチュアウサギ)オランダ原産のウサギです。
ちなみに、ネザーランド・ドワーフはピーターラビットに登場するウサギ品種だそうです ̄(=∵=) ̄←ピーターラビット、可愛いですよね♪(^ω^)
余談ですが、
ダッチ・ラビット(パンダウサギ)オランダ原産イギリス産です。←パンダも出せば良かったなと後で思いました(^_^;)
本文挿し絵に使った以下の二枚の写真は、
フェルトアートの達人、天理妙我さまにお願いして作っていただいた、
主人公ウサギのオーカとストロー。ネザーランド・ドワーフと、
結局名前を付けなかった垂れ耳ウサギの紋章師。ホーランド・ロップです。
天理妙我さま、どうもありがとうございました!(≧▽≦)
https://29321.mitemin.net/i553099/
https://29321.mitemin.net/i553098/
お願いしていた当初は、もっとさりげない物語の内容、描写で進める予定だったんですね( ̄▽ ̄;)←お願いしたあと、だんだん
とっても可愛いフェルトウサギ(*´∀`)♪
残虐シーンに使って良いのか?と悩み、
当初、こんなの~♪と、ネットで撮ってきたサンプルとを折衷案で、とりあえず試しに両方とも挿し絵にはめて投稿してみました(^ω^)
みょうがさんのフェルトウサギのようなラブリーウサギが襲いかかる演出の方がよろしかったですかねぇ?(^_^;)
読んでいただき、どうもありがとうございました!(≧▽≦)
『スタンピング』 -〈ウサギの勇者〉あるいは、〈刈るもの〉 の物語- みなはら @minahara
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