2枚目:訪問者
しっとりと降る雨の中、ざくざく地面を踏む足音が聞こえる。尖った部分に
彼女は武器としている矛を持っており、どうやら山の見廻りをしている最中らしい。山の神というのはその周辺の秩序をある程度保つために、実は毎日暇というわけでもない。
歩き続けていると、少し
「調子はどうです?」
「ああ、お陰様で」
元来二人とも静かになることに抵抗が無いようで、暫くは二人の足音だけが鳴っていた。その内、天狐が上を見上げる。
「静かな雨ですね」
「心地がいい」
「流石は水を司る神といいましょうか。でも、そうですね、私も嫌いじゃないですよ、この感じ」
「これで晴れていたら狐の嫁入りだったな」
「ああ確かに」
くすくすと笑う天狐に、つられて龍神も口元を緩ませた。四本の毛並み豊かな尾と艶めいた黒い鱗の尾が楽しげに揺れる。
「このあと家へ来るか?家のがわらび餅を拵えると言っていたが」
「おや、ではご
「ぜひ。多い方が楽しいだろう」
雨は強まりも弱まりもせず、ただしとしとと全てを濡らしていく。それにより景色の彩度は落ちようが、雨の日の落ち着いた色合いが二人とも好きだった。
「この感じでは、雨上がりが楽しみですね」
「ああ、きっと全てが
それを含めて、雨がすきだと龍神は呟いた。
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