女神のサイコロ

チョッキリ

プロローグ

プロローグ ざっくり言うとこの世界は神様たちの悪ノリに次ぐ悪ノリで出来上がりました。ごめんなさい

 昔々、6柱はしらの神々がいました。


 神々は遊ぶのが大好きで、よく6柱で集まって、サイコロを振って遊んでいました。サイコロの出た目でなにかを決めるという遊びです。サイコロを使って、け事をしたり、殴り合ってみたり、出た目に応じて話題を提供したりして遊んでいました。


 しかし、そうした遊びも気の遠くなる程、ながい時間、きょうじていれば、やがて飽きがきます。そこである時、とある遊びを始めることにしました。


 題して「天地創造」という遊びです。




 まず、その遊びには舞台が必要だという話になりました。そこで、色彩感覚に優れた森神しんしんリベカが木々や海、大地などの世界を作りました。

 他の5柱の神々は大喜びで、美しい風景を愛でました。


 しかし、せっかく美しい風景なのに、いつも同じ明るさではつまらない、という意見が次第に出てきます。そこで、今度は火神グレアムが光と闇を作りました。

 これにより、明るさと暗さのコントラストが加わり、世界は一層美しく輝くようになりました。


 賢神けんしんライラは火神かしんグレアムの発想を受け、世界に時間を付け足すことを提案します。全てのものは時間が経てばち果て、そして新しいものに移り替わります。

 世界はこれによって常に変化が生じるようになりました。これは大変画期的なアイディアでした。いつ見ても変化があるので、この世界をより楽しむことができるようになりました。どんなに美しい光景ですら永遠ではないので、ますます神々は世界を眺めることに没頭ぼっとうしていきます。


 しかし、獣神じゅうしんブラムは美しい風景だけでは飽きてしまいました。そこで、もっと予測がつかない様々な動きをする獣を作り出します。

 これには他の5柱の神々は大層驚き、歓喜しました。しばらくは空前の獣作成ブームが巻き起こり、様々な獣が誕生していきます。獣に合わせて植物にも様々な形が生まれました。


 そして、創造神アマイア———我々が敬愛する「女神アマイア」は、自分達に似た「人間」を生み出しました。

 この人間は、神々の特徴に似せて作られたため、神々は夢中で自分たちに似たこの生き物を甘やかしました。賢神ライラは人間に知恵を与え、さらにこの遊びを盛り上げました。


「もうこのままずっと見ていられる」と神々の中では大ブームとなります。




「これは最高の遊びだ!」


「これを考えたやつは天才だ!」


「誰が考えたんだっけ?」


「我々じゃね?」


「我々天才!!!!」


「てか、人間良くね?男は俺に似てイケメンだし、女はかわいいし」


「「「「それな!」」」」




 しかし、自分がなにもしていないうちに遊びが完成してしまったので、魔神ウロスはちっとも面白くありません。本来、次は自分の番であったのに、賢神ライラは2回も世界に関与しており、とても腹が立ちました。




「よし、この遊びをぶっ壊そう」




 魔神ウロスは他の神々が浮かれている隙に、世界に混沌を作りました。

 これにより、順風満帆じゅんぷうまんぱんで幸せいっぱいだった世界に恨みや憎しみ、不安や絶望、恐怖、裏切り、欲望などが生まれていきます。


 調子に乗った魔神ウロスはさらに世界の滅びを望む存在、魔物を生み出します。




 少し経って、世界を観察した他の神々は異変に気付きます。


「あれ?俺たちの人間ちゃんたちがなんか気持ち悪い生き物に食われてんだけど」


「は?マジでか。あ、なんか落ち込んでるヤツがいる。え、こっちは人間が人間を殺してる」


「なんだこれ、カオスか。え?どゆこと?」


 そして神々はなにが起きたのか一瞬わからず、驚きます。そこに魔神ウロスがドヤ顔で「俺がやりました」と宣言します。


「ぶざけんなよ!」


「俺たちの傑作をぶち壊す気か!?」


「戦争だ!!!」


「ああん?てめーらが俺を仲間外れにしたんでしょーが!!」


 ここで魔神ウロスとその他の神々は完全にたもとを分かちます。

創造神アマイアは魔物に対抗するために人間に「加護」という力を授けることにしました。他の神々も創造神アマイアに倣って自分に似ている人間に「加護」を与えていきます。


 そうして人間には種族が生まれました。


 ヒューマン、エルフ、ドワーフ、トントゥ、獣人の誕生です。




 神々の「加護」を受けた人間は協力して魔物を退治していきます。

 一時は世界を滅ぼす勢いで増えていた魔物達がどんどん減っていくのを見た魔神ウロスは、とうとう掟破おきてやぶりの奥の手を使います。


「俺がこの世界に入ってなにもかもぶっ壊してやる!!」


 魔神ウロスは世界に飛び込みます。




「いやいやいやいや・・・それは流石に大人気なさすぎでしょ・・・」


 神々は慌てます。しかし、いくら魔神ウロスとは言え、残りの神5柱がかりで戦えば簡単に抑え込んでしまえます。


「アイツはやりすぎだけど、でもなぁ・・・意外と結構良いバランスになってたのよね」


「わっかる~~~。実はスリルがあって楽しいと思ってました」


「え?どうする?みんなで行く?」


「いや~、それはいくらなんでもなぁ・・・」




 神々は魔神ウロスをどうするか相談しました。


「あー・・・でもあんまり時間ないよな。アイツ、このままだと世界壊しちゃうよ」


「ちょっと、アマイア、人間作ったのアンタなんだから、責任取ってアンタ、止めてきなさいよ」


「え~・・・ちょっと揉め事はなぁ・・・うーん・・・でも子どもたち可愛いし・・・わかった。ちょっと行ってくる!」


 こうして創造神アマイアは魔神ウロスを追って世界へ飛び込みました。




 魔神ウロスに創造神アマイアは何度も和解を求めますが、元々はお遊びだったとはいえ、今や完全に引っ込みがつかなくなった魔神ウロスは頑として首を縦に振りませんでした。


「ああ~・・・コイツ、めんどくせぇ・・・どうするかな・・・私、戦うの嫌いだしなぁ・・・困ったなぁ」


 魔神ウロスが直接世界を滅茶苦茶にすることは、創造神アマイアがなんとか食い止めましたが、魔神ウロスを力ずくで黙らせるほどの力は創造神アマイアにはありません。


 困った創造神アマイアが世界を眺めていると、ふと、魔物達をぎ払う人間の集団を見つけます。


「あれ、この子達、ちょっと強くね?この子達を私がサポートすれば、ワンチャン、ウロス君、封印できそうだわ!」




 そして、創造神アマイアは英雄オルロ達に力を貸し、大冒険の末、見事、魔神ウロスを大陸の果てに封印したのでした。

 しかし、創造神アマイアも魔神ウロスを封印するために、久しぶりに全力を出したため、疲れ切ってしまい、今もこの世界のどこかで身体を休めているのです。




 創造神アマイアは人間を助けた女神として、現在まで「女神アマイア」として信仰されています。




  ハーヴィ=エンドア著『ざっくりと理解!この世界の成り立ち』より抜粋


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