第214話 7歳の決断(中)

 「ダー。ここからは将来の話だ。じっくり考えて欲しいことがある。」

 真剣なゴーダン、そして仲間たち。

 僕は背筋を伸ばした。


 「ダーは、強い。その魔力は世界屈指のものだ。それは分かるな。」

 僕は頷く。

 謙遜、とかはしない。

 上には上がいるだろうけど、僕の魔力がでっかいことに変わりはない。

 「それに、前世の記憶もあるだろうが、発想自体がユニークで、新しい物を生み出していく。その頭と、それを現実にできる力がある。」

 うーん。正直実感はない。それに現実にしてくれるのは、いつだって周りの人達だ。僕だけじゃ何にも出来ないよ。


 「まぁそんな顔をするな。もちろん現実化するにはカイザーやみんなの力がいるのは分かる。だがな、そういう力をすでに人脈としてお前は持っている。それはお前の力だ。」

 分かるようなわかんないような。

 でも、しぶしぶ僕は頷いた。


 「そしてな。そんな力は欲しがる奴がいっぱいいる。それも分かるな。」

 頷くしかない。

 「今、リヴァルドでも思い出したか?だがな、それだけじゃないぞ。今回のことで、他国にも、そしてこの国でも、お前のことはいろいろ知られた。前々から注目されていたお前は、ただの子供じゃないと、世界中が知ってしまった。」

 ・・・・

 「ザドヴァの新総統が、お前を養子に、と言ってきたことは知ってるな。まぁ、あのときは行商人のパッデの子、と言ってきたから、知らぬ存ぜぬで国王も貫いてくれたようだが・・・」

 確かに。そのことは王様から聞いたね。

 「その前にも、ただ会っただけだが、博士の叔父とかいうのがお前にご執心だった。」

 あったねぇ、そんなことも。

 お食事しただけだったけど、僕を養子にしたがってた。

 確かに、いろいろと国を超えて、欲しがられてきたなぁ。


 「その昔は、実際に奴隷だったお前を買い取ったバカ貴族がいたな。」

 そのバカ貴族は、今はダンシュタの代官だけどね。しかも初期メンバーの内4人もの元雇い主だ。ハハ。

 「あのバカ貴族は外見だけで、お前を欲しがった。まぁ、見ただけで、その髪なら将来は有望だと分かるからな。」


 この世界、なぜか髪の色が濃いほど、魔力が多いとされる。される、っていうか、実際そうなんだよね。ただし、魔力の通り道を通さないと魔法は使えない。それに教えて貰わなきゃ、魔法を使えるようにはなれないってされている。

 さらには、魔力の通り道に魔力を通すと、何らかの体の変異が起こるらしい。魔法はそのままだと、自分の体を壊してしまう。だから通り道をじっくり通すことで、魔法に耐えれるように体を変えていくみたい。

 この変異の課程で、肉体が壊れる者もいる。魔力の通り道だけ壊しちゃうなら、魔法を使えない人になるだけ。最悪の場合は死んでしまう。

 だから、魔力の通り道を通すのは命がけの作業で、その誘導には特殊な技能がいるってされる。

 普通はある程度大きくなってから、ゆっくりと何旬も使って通していく。一般家庭の魔導具を使う程度なら、完全に通しきらなくても、ちょっと魔力を動かせれば十分。庶民はだいたいがこの安全圏でやめちゃうらしい。この程度なら親から子への指導で出来る。


 この魔法の通り道を開くのは早いほうが質も量も良くなるってのは常識。だけど、危険を考えると普通は、10歳前後にちょっとだけ、魔導具を使える程度に魔力の道を通すんだ。

 貴族では、少しでも早く魔力の通り道を通して、強い魔導師に育てようってことで、7歳とか8歳の子に施す場合があるって聞いた。髪色の濃い貴族の子の特権だそう。けど、やっぱり失敗が多いから、次男三男とかにやる場合が多いんだって。時には女の子とか。

 長男っていうか跡継ぎ様には10歳が普通。だから強い魔導師ってだけで、跡継ぎが変わることはない。少なくともこの国ではね。


 こういった常識なんてくそくらえの僕の人生。

 今日7歳。

 才がありそうな貴族の跡継ぎではない子がやっと訓練を始めるお年頃。

 たまたま運良く生きていた。

 魔法を使いに使い、ときに魔力切れを起こして生死をさまよった。

 もともとの素質にそんな経験が僕の魔力を押し上げたんだと思う。

 それに、まだまだ強くなる、っていうのは魔法の権威ドクのお墨付きだ。

 精進すればまだまだ伸びるって。


 だけど、外側から見れば、とんでもない魔法を使う、冒険者見習いのチビッコだ。手に入れれるなら手に入れたい。偉い人がそう思うのも仕方がない、って状況になっちゃった。


 「ダー。自分の状況は賢いお前なら分かると思う。お前は多くの人にとって、どんな手段を使っても手に入れたい、そんな子供だ。そして、そんな人達から守る手段は、正直言って余りにも小さい。単なる冒険者パーティでどこまで守り切れるか。勘違いするな。俺たちはどんなことがあっても、お前を守る気まんまんだ。だがな、気持ちと可能かどうかは別だ。」

 僕をどこかにやるんだろうか?そんな不安がわき上がってくる。

 僕はみんなといたいんだ。


 「俺たちもいつかはこんな状況が来るだろうし、そのために力を付けようと頑張っては来た。だが、想像以上に早かったともいえる。もう少し大きくなるまで隠せると思ったんだがな。だがな、甘いどころか、もっと前からこの事態を予測して、提案してくれていた方がいたんだ。」

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