第193話 潜水魔法を作ろう(4)

 風は動くもの。

 固定する、という意味、というか概念を頭では理解しても、心ではなかなか納得できない、どうもそんな感じです。

 はい。

 結論、ていうかね、5日経っても、空気を切り取って、自分の身に纏わせ、それで水の中を移動する、という、この魔法を出来たのはアーチャと僕だけでした。


 どうもね、風魔法で水をどけちゃう、というところまではOKなんだけどね。

 それでちょっとなら動くことはできるんだ。

 だけどね、それは体の周りにグルグルと風を回して水を弾くっていうか、トルネードの球の中に自分を置く、って感じのもので、僕たちみたいに空気を纏うっていうような静かなものではないみたい。

 あの風のグルグルを止めれば良いんだけど、グルグルだから風で、風は止まらない、そう心が信じちゃってるから、無理みたいなんだ。


 でね、それでも一応水の中である程度長時間活動できるし、ま、いっか、て、僕は思ったの。深いところで自分の周りに風を纏ってるだけなら、地上からバレないだろうし、ってね。実際、僕が実験して、みんなみたいにクルクル風を纏って潜ったら、僕3人分くらいの深さで、さざ波と変わんない、って実験できたし。

 水中に向かってずっと魔力を索敵でもしてなきゃ、見つかることはないと思う。

 そんな人いないし。索敵の魔法って、あんまりやってる人いないみたいです。セスではメジャーっぽいけどね。


 けどね、ここでちょっと問題が・・・

 このやり方だと、ものすごく魔力使うね。

 深くなればなるほど、水の押してくる力が強くて、どける力がむちゃくちゃいる。

 正直、僕でも、予想される深度の滞在には、30分とか持たないかも。


 「いやいや、私、普通に潜った方が長く潜れるからね。」

 と、ノアさん。

 ミラ姉も、サマンさんも、そうだねぇって言ってる。ミラ姉の身体能力だったら、もっとかもしれないって。

 「でも、何かで深いところに放り出されたら、瞬間的に体を守るのにはいいかも。」

 ミラ姉が、そんな風に言ってました。


 あと、どうやらここ数日、相当魔力を使って変わったことしたので、みんな、ちょっぴり魔力量とコントロール力がアップしたんだって。大人になると、特に魔力量なんて変わらないから、びっくりしつつ喜んでました。

 あとね、監督してたネリアが

 「あなたたち、無駄に風を作ってんなら、刃を飛ばして魚の一匹でも獲ったら?」

なんて、言ったらしく、纏った風から風の刃を出す、なんて、ことができるようになったようです。お魚も増えて、みんなも水の中での新たな戦闘力を得た、って喜んでたよ。


 てことで、潜水魔法なんだけどね、アーチャが出来たのは、森の中でのセスの生活が大きな影響を及ぼしていたみたいです。なんかね、空気を意識して生活してるんだって。森の香り、とか、振動とか、そういうのを常に意識してるんだそうです。でね、水中と同じように、空中も何かに満たされていて、振動とかが感じるんだ、って分かってたんだって。だから水を囲うように空気を囲うってのは感覚的にすぐに出来たみたい。ママのひしゃくをみたら、ああ、これが空中にあるものか、水の中なら泡なのか、って分かった、って言ってたよ。で、それをみんなに説明したけど・・・ハハ、セスじゃないしね。


 ただ、ここで残念なこと。

 自由にアーチャは水中のを移動出来るようになったんだけどね、そう地面です。

 なんかね、水中移動がね、できないの。

 泳ぐだけだよ?って言うんだけどね、体を横にすると浮いちゃうの。

 好きな深度で移動、ってできないの?なんで?


 うーむ。どうやら、僕、知らずに重力魔法でコントロールしてたみたい。そういや、前世でもダイビングって沈むのが難しくて重りとか付けるって聞いた気がする。それで、肺の空気を使って平衡を保つ、んだったっけ?

 思いついて、いろいろ鉄とか抱っこしてもらったりしたけどね、どうやら、この空気の膜、縦には重力引っ張られるけど、横向くとダメで浮力が勝っちゃうみたい。でね、人にくっついたものって重さが関係なく、なんか泡みたいになっちゃうようです。


 色々考えて、実験して、どうやら僕が手をつないで浮くのを阻止、は出来たよ。

 手をつなぐと、僕の重力魔法の範囲に入るみたい。

 だから、地面を歩いて(走るのもOK)、近くまで行き、横になって浮いて貰って、狙った深度で僕と手を繋ごうってことになりました。

 ずっと手を繋いでも、って思ったけど、一応ほら、湖の中って魚とかいろいろいるんだよね。魚、って言っても魔物だし、僕たちをごちそうだ!って襲ってくるのもいるからね。それぞれ自分で動けなきゃ、危ないんだ。あ、でも、ここの湖のお魚程度なら、僕もアーチャも、ちゃんとやっつけられるから、ね。とっさに躱すには別々の方が安全、ってことです。



 てことで、実際の水中行動は残念ながら二人になりました。

 といっても、他のみんなは残念だった、とかはないです。

 もともと、2班の予定だったんだ。

 もう1班のお仕事?

 ふふふ、カイザーとの共同作業です。

 本当の本心言っちゃうと、僕、カイザー班が良かった。だって、男の子だもん!


 そうそう。あっちも、どうやら戻ってきそう、だって。うん、カイザーたち。パパラギ村からそろそろ出発だって。ゴーダン達も情報収集に余念がありません。


 で、本日の会議。


 ん?

 次の段階?

 あ、そうなんだ?

 そろそろカイザーと、ミラ姉たちが合同訓練?

 どうやら、水中別働隊とカイザーの訓練が、カイザー戻り次第、で始まるんだって。

 で、ママと僕はカイザーと一緒にやってくるパッデと一緒に商業ギルドでお話し?

 了解です!

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