第191話 潜水魔法を作ろう(2)
一応、できたよ。
何がって、僕の潜水魔法。といってもまだまだ改造の余地あり、っていうかここから本当に使えるものにしなくちゃねってところかな。
できたのは、空気の膜を纏って、水の中を普通に歩く、ってところ。
ほら、みんなにお魚さんの水と僕たちの空気は一緒ってお話ししたじゃない?
そのときに、水魔法で敵を閉じ込めて、おぼれさせちゃう魔法とか、使ったことあったな、って思って、その逆バージョンだね、って思ったら簡単にできました。
大きくしたり小さくしたり、僕の魔力なら、相当デカくても大丈夫。下手したらこの湖も包めるんじゃない、なんて、誰かが冗談で言ったけど、なんか出来そうな気がする・・・・
って言ったら、ネリアが怖い顔になったので、冗談ってことにしておこう・・・
だいたいバレずに水の中から侵入できないかな、って作戦なのに、そんなにでっかい空気の塊つくったら目立って仕方ないじゃない。作戦的にアウトだねぇってアーチャと言ってたら、ネリア、目がマジになってました。
「まったく、なんて非常識なのよ。魔法ってもっとちゃんとした理論ってものが、ね・・・」
って、まだ小言が始まっちゃう。
けどね、僕、結構理論的なお話ししてると思うんだ。
ん?ダメ?今までの魔法理論から離れすぎ?うーん。僕、魔法の理論とかちゃんと習ったことがないから分かんな~い。
でもさ。僕の魔法の先生は、ドク、だよ?領都の魔導師養成校校長だよ?ドクが魔法はイメージ、思ったことを魔力に乗せればなんでもできる、ていうのが魔法理論の要だって教えてくれたんだもん。
歴史、なにそれおいしいの?
そんな風に言ったら、ミラ姉に叱られちゃった。
ネリアがこの国の魔導師の普通なんだ、って。
ミラ姉やうちのパーティだけじゃなくて、不屈の美蝶のおねえさまがたも、そういう意味ではズレちゃってるから、ネリアの良識は、とっても大切にしなきゃ、だそうです。
魔導師って面倒だね。
自分が正しい、って信じなきゃ魔法が上手く使えない。
だって、魔法はイメージ、イメージは信じることも入ってるから。
だから、今まで魔導師として築いてきた知恵を大事に大事にできない人は、立派な魔導師にはなれないんだって。
でもね、魔導師は同時に新しい世界の開拓者でなくちゃならない。
先駆けでなくちゃ、高位の魔導師として成功はできない。
自分だけの理論。自分だけの魔法。
それがあるからちょっぴり秘密主義にもなるし、好奇心旺盛なマッドな人にもなっちゃうんだ。
不屈の美蝶さんはね、自分をとっても信じていて、新しいことが大好きな人が多い。珍しいことを自分の目で見て、自分で感じることが大事って僕に教えてくれたよ。
でね、どんなに常識的なことでも、自分の目で見てないなら信じ切ることはないし、逆にどんなに理不尽でも自分が見たなら信じられる、そうです。
僕の理屈って、僕がやってることの説明だから、目の前で見たなら信じられるし、自分の魔法に組み入れられる、っていうの。
ネリアも正しいし美蝶も正しい。
だから、そのあり方を指摘できるのは、本人と師匠だけだ、そうミラ姉に叱られちゃった。
とかなんとかいいつつ、僕は自分の周りに空気の膜を作って、水の中に入って行くことが出来ました。
僕にとってのベストな大きさは、歩くなら、万歳してジャンプしても飛び出さないぐらいの球体、かな。
泳ぐときはね、流線型に纏うと早く動けるようです。これは僕が流線型が適しているって思っているからなのか、物理的に正しいからなのか、は、正直分からない。
僕のを見て、次に出来たのは(って言っても、3日もかかったけどね)、ノアさんだったよ。ノアさんは風と水の魔法が出来て、それを合わせて氷の魔法を使うっていう、2つ持ちだからね。うん、ネリアといっしょ。
ネリアは土と火を持ってて、合わせ技でマグマを使う。2つ持ちでも二種の魔法を組み合わせて使える人はほとんどいないから、すごい魔導師、なんだそうです。
ノアさんって、水魔法も使うから、僕が言った水魔法と同じように空気で膜を作る、っていうの、ある程度理解しやすかったって言ってたよ。
でもね、風ってのは動くものでしょ。これを固定させるっていう考え方が難しかったようです。風と空気が同じだよ、ってのもなかなかこの世界の人には理解しづらいってのもあるのかな。
でもね、風で竜巻みたいなのはつくれるから、その場で動かさないでガワだけ作る、って発想に変えたようです。
でね、僕の場合は、空気を纏ってそのまま、歩いて湖に入って見せたんだけどね、ノアさんはまず湖に入って、自分の周りに風を起こし、ゆっくりと、風のある場所を広げて空間を作り出す、っていう方法をとったみたい。
まだ、その空間をひきつれての移動は難しそうだけど、またそのあたりは、新しい方法を見つけるだろうな、って思います。
そうそう。すごいな、って思ったのはやっぱりネリア。
あのね、今回の作戦で水に入る、ってのはできないけどね、ノアが水に入って風で水を避けてるのを見て、それなら、って自分もドボンって湖に入っていっちゃったんだ。でね、ノアのやったみたいに、自分の周りの水を火魔法で、ググッて避けて球体にしちゃったの。しかも、そのまま泳いで動けちゃった。
すぐに魔力不足でプカーって浮いちゃったけどね。一発でそこまでやっちゃった。
「もう、本当にネリアは負けず嫌いなんだから。」
ノアさんは、そんな様子を見てやさしく笑っています。うん、全然ネリアより大人だね。
ノアのお姉さん、どうもネリアにライバル視されているようです。珍しい2属性持ちの上に合体魔法も使うから、ギルドでも並んで名前が挙がっちゃうんだよね。一方通行でネリアがずっと意識してるみたいです。
「ほんとかわいいんだから。」
クスクスって笑うノアさん。
でも、魔力切れまで、水の中で風を纏って動こうと努力してたの、きっと悔しかったんだろうね。フフフ。
僕は、そんな二人の様子を見ながら、二酸化炭素問題をチェックしたり、他の人の様子を見たり・・・
えっとね、アーチャはノアさんを見たあとすぐに真似して、しかもノアさんより上手に空間を固定した上に、歩いちゃいました。
僕と、追いかけっこして遊ぶぐらいに、すぐに上達したのはさすがだね。
二酸化炭素問題。
多分二酸化炭素は下から溜まるよね、ってことで、足下にろうそくを立ててうろうろしてみました。
あのね、これは魔法の不思議、なのかもね。
いつまでもろうそくは普通に燃えていて、ろうそくが短くなって消えるまでどうもならなかったよ。
あれ?って思って、もう、ろうそくの大きさで空間を作ったんだけどね、うん、消えないんだ。
どうやら、酸素濃度が変わらないようです。
不思議だね。
こういうところが魔法と科学の違い、ってやつだと納得して、次に進むしようね。
ちなみに、アーチャ。
そもそもろうそくに火がつかなかった。
これも不思議です・・・
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