第161話 謁見室での攻防
対峙する僕らの前には、リヴォルドが張った結界の中に、遠くから総統、リヴォルド、特選隊。
対するこっちは、ほぼフルメンバーの僕たち宵の明星。
これがこの、謁見室らしき大部屋の最奥だね。
で、それ以外にも壁際を中心にこの国の魔導師や兵士が、ちょっとためらい気味にこっちをうかがっている。で、後方、入ってきたドアの方には、この国の冒険者を中心とした、腕に自信のある人達。
奥の僕たち以外には、なんとなく動くのをどうしようかな、なんて、ためらいが感じる。
言っても、この国の最高戦力って魔導師で、中でもリヴォルドとその親衛隊とも言える特選隊。そのほかの魔導師って、兵士とドローな感じみたい、強さも扱いも。
そのリヴォルドたちに対峙してる僕たちだけど、きっと壁際の兵士や魔導師ってば、後ろから攻撃しようと思えばできると思う。でももしそんなことをしたら、さらに後ろから冒険者たちが襲いかかってきそうで動けない、そんな感じ。そう解説してくれたのはミラ姉。勉強になります。
てことで、僕らは真正面の人達だけを相手にしてればいいんだって。
「儂があの石頭を相手にするしかあるまいて。」
やれやれ、と言いながら、このお見合い状態を動かしたのはドクだった。
杖を掲げて、無属性っていうか僕もよくやる単純な魔力の放出。
杖があるからってだけじゃなくて、やっぱりすごいコントロール。
一点に絞ってレーザーみたいに収束させ、
パリン
魔力の聴力に、ガラスの割れるような音が聞こえたと思ったら、簡単にリヴォルドの結界がはじけたよ。
「アーチャは博士のフォロー!アンナとミランダは魔導師どもを牽制。俺とラッセイでヤツらの魔導具を外す。ダー、ヤツらに魔導具を使わせるな。コントロールを奪え。ヨシュアはダーの護衛、ミミは後方指揮!」
ゴーダンが早口に命令する。
オウッ、と口々に短く答えるやいなやみんなは動き出す。
そのまえから、ドクはリヴォルドに魔法をたたき込んでるけど。
まずはうちの魔導師の攻撃。
アンナとミラ姉が特選隊に魔法を細かく次々に撃ちまくる。
特選隊は集中して魔導具であるペンダントに魔力を注ごうとしていたところ、アンナ達の攻撃を避けようと、中断を余儀なくされる。
大半は、その時点で、中断。
とみるや否や、ゴーダンとセイ兄の剣がチェーンを次々と弾いていく。
僕はそこまで視認して、いまだ魔導具と魔力が切れてない数名、正確には4人の魔導師の魔導具めがけて、魔力を注ぐんだ。近くの目についたものから順々に。
魔導具のチェーンが切れても、魔力を吸い続ける魔導具。
でも基本は一緒だ。彼らの魔力の限界ギリギリアウトに設定されている。
僕らが教養所の研究所から取ってきた研究成果では、このペンダントに使われる術式の考察もあって、個々人にあったギリギリセーフのものを使えば一番効率良く、大きな魔力を使えるってあったんだ。でもこれを使っちゃうと、人により数日から数ヶ月の療養を余儀なくされる。
特選隊の一人一人にその容量が研究されていたんだ。
つまりギリギリがどこか、臨床実験済みってわけ。
臨床実験でアウトの人も少なくない数いたみたい。アウトになった場合どうなるか。何度も見てきた、魔力行使と命が引き替え。
ひどいのは、命と引き替えでも魔法が発動できない場合。死んじゃうのは仕方ないとしても、研究者の総括がひどい。魔導具だってこんな方法だと使い捨てだからね、魔石とか魔導具の無駄遣いだった、って考察がされているんだ。そこに犠牲者へのコメントはなかった・・・
特選隊は、なんだかんだで選ばれた人達。
だから、一人一人ギリギリセーフにカスタマイズされた魔導具を、緊急用に持たされている。それとは別にさらに緊急用として持たされているものがある。それが、ギリギリアウトに設定された魔導具。
命と引き替えにお国の大事を守ること、そう教育されているんだって。
それができれば最高の名誉だと、教養所でも教えられる、というのはバンミの証言。
正直言うと、僕らには、彼らがどっちの魔導具を持っているのか、いや、発動しようとしているのかはわかんない。
どっちも持っていて、リヴァルドの命令で使うようだ、というのは、諸々調べていたという冒険者ギルドからの情報。
そして、彼らの予想では、今回みたいな場合、リヴァルドは平気でギリギリアウトの方を使うよう指示しているはず、だって。
上からの命令で人間爆弾みたいなことをしようとしている有能なはずの人達を救うにはどうしたらいいか、そんな話も出てたんだ。
でね、これの基本はあのドアロックと一緒だって、ドクが解明した。
というよりも、複数の魔法陣を繋げるのが「~のとき、次の魔法陣へ行け」ていう命令みたいになってるんだって。魔法陣の複数設置が難しいのは優先順位をつけること。それをうまくやったこの魔法陣、本来は天才的な発明なのに、って、ドクが悲しそうな顔をしていたのを覚えている。
で、どっちにしろこの魔法陣を壊すことが出来るのは分かってるんだ。
各カスタマイズされている以上の魔力を流すこと。
で、この魔導具が出てきたら、この魔力を流すのを、ドクか僕でやろう、って決まってたんだ。アーチャやアンナでは、クスリや特殊な方法で魔改造されてしまった特選隊の魔力量を余裕で上回る、てのが難しそうって理由でね。
で、現状。
ドクは、やっぱりすごかったらしいリヴァルドと対峙している。
相手に対して1歩もひかないぞ、という気迫は彼が上かもしれない。大きな魔法なら簡単にドクが勝ちそうだけど、室内で他にもいっぱい人がいるから、ドクはそっちも気にして戦っている。一方、この国のトップなのに、平気でえぐい魔法を放ちまくっているリヴァルドは、はっきり言ってドク以外見えていないっぽい。
そんなちょっぴり防戦気味のドクを上手にアーチャはフォローしているね。
飛び火しようとしている魔法を弾いているよ。器用だなぁ。
そんな風に思って横目で見ていたら、なにか動いた?
え?総統?
え?消えた?
「ダー、あなたはあなたの仕事を。」
僕が思わず振り返ったら、頭上からヨシュ兄の声。
そうだった、僕は、魔導具を壊して、魔導師たちを解放しなきゃ。
さっき一人目のを壊した。
魔導師は一瞬カクンってなったけど、へ?って顔を上げてキョロキョロ。うん、とりあえず放置で次っ!
2人目。
さっきより深く繋がってる。
同じように魔導具へ僕が魔力を流したら、一瞬抵抗みたいなのを感じた。
慌てて、魔力を切ると、逆流するみたいに、魔導師の人に魔力が流れたよ。
うわって思って見てたら、ゴンって崩れるみたいに倒れ込んだ。気を失ったその人の鼻から、ツーッて血が流れてる。
え?どうしよう。
そのとき、覚えのある優しい魔力がその人を包んだよ。
「ダー大丈夫。ママが見てるから、次の人を助けて上げて。」
そう言って、ママがその人をお姫様抱っこして、連れて行ったよ。
うん。ママだって成人した冒険者。見かけによらずちゃんと力持ち。
ハハ。
僕はホッとして、次の人に向かったんだ。
3人目。
ちょっと疲れた、かも。
4人目。
最後だ。
この人も、逆流させてしまって、だけどミラ姉がやってきて、ママのところに連れて行ってくれた。
僕の仕事はそろそろ終わり?
あ、リヴァルドがセイ兄に縛られている。ドク、いつの間にか勝ったんだね。
そして、あれれ。
奥から出てきたのは、カイザー?
一緒にいるのはザガの商人ギルドのサブギルド長、確かヤーノンさんだっけ?
そして、なんだかうなだれて捕縛されているおじさん?
カイザーが僕に気付いて、ヤーって手を上げてきた。
僕も手をあげようとして、
おや?なんか手がいうこときかないなぁ。
あれ?
あれれ?
立ってるつもりなのに、視線が下がっていく。
?
抱き上げられたのかな?
寝た姿勢でふわふわするよ?
うん、まいっか。
なんか、目につく知り合いの顔が穏やかだし・・・
後は、お・ま・・か・・・・せ・・・・
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