第113話 犯人捜し
ん~。これはどうしたもんだろう・・・
僕は、ちょっと困ってしまったよ。
あのね、ナッタジ商会が行っている牛乳配達。それに使ってる配達箱が盗まれる事件が相次いだって教えられた。だから、僕たちが仕込んでいた追跡機能を使って、僕は盗まれた牛乳の配達箱を探してみたんだけど・・・・
僕は、結果を見て、どうしようかと、困っちゃった。
「ダー、盗難のこと、聞いたんだって?」
そこに、ヨシュ兄がやってきたよ。
地図を持ってきてくれたから、僕がやろうとしたことに気づいていたんだね。
僕は、前に、地図と目標物の在処をリンクさせてモニタリングしたことがあったから、今回もそれをしようと思ったんだ。僕は地図を用意する前にとりあえず魔法を発動させてたんだけど・・・
「ん?やっぱり地図いらなかったかな?」
ヨシュ兄が苦笑しながら聞いてきた。
やっぱり?
てことは、犯人の予想、ついてたってこと?
「念のため、どこか教えて。」
ヨシュ兄が地図を開く。
すごいな。前に使った地図より見やすいよ。
なんていうか住宅地図みたいになってて、いくつかの家にしるしがついてる。このしるしは牛乳配達を行ってる先なんだって。で、その横に別のマークがつけられてるのもあって、どうやら盗まれたって報告があったところらしいよ。在庫があったから、盗まれたところも再設置はしてるんだって。うちの番頭さんは優秀です。
で、僕が魔法でチェックして、本来置いてある所じゃないところに、しかも複数あれば、犯人で正解ってこと。
実はうちの商会以外に複数あるところは、地図がなくても分かるところで・・・
あれれ?関係なく2つあるところも4件ほどあるね。なくなったって嘘言ってもう一つ設置した、って感じ?便乗犯だね、これ。
ヨシュ兄にそのおうちを告げると、やれやれって言いながら、そっちはあとでいいや、だって。こっちは魔力が登録してあるはずだから、おうちの中で別の使い道に、まぁ、簡易冷蔵庫がわりに使えるもんね。遠隔で登録外せるように改良した方がいいかもしれないね。
さて、問題の、真犯人です。
在庫が減っちゃったうちの倉庫よりもたくさん持ってるのが見つかってます。
ハハハ、うちの2軒隣だね。僕は、その商会であろう場所を指さしたよ。
商会のあるのは町の中心部。商店街みたいになってるところ。ちょっぴり寂れかけていた3年前とは違って、どんどん新商会も入ってきてるし、人も増えて、まさに賑やかな商店街って感じ。この町ではナンバーワン商会は、おかげさまでナッタジがキープです。けど、領都に店を構える支店とかも入ってきてて、うかうかとしてられない、そんな感じ。
ダンシュタでは、ここ3年、色々ママたちが頑張ったこともあって、質とアイデアで抜きんでてるって思われてるよ。新商品もいっぱい出てるしね。
新商品開発は僕が任されてます、エッヘン。ていうか、この世界では、新商品、ていうのはなかなか出ないの。ずっと同じ物を同じように提供する、ってのが、商会の仕事だと思われてるからね。
ただ、ひいじいさんの時代から、ナッタジではみんながビックリする便利な物や珍しい物を提供してきたんだって。もともとは乳製品。けど、その加工品であるバターやチーズは、こっちの世界で食べられていたものとは全然違ったらしい。今では結構製法が広まって、同じようなのも出回ってるけどね。
製法はひいじいさんが欲しがってる人にどんどん提供してたみたいです。いちいち自分で作らなくても作ってくれるなら楽で良いじゃない?という発想だったようです。そもそもが自分が食べたいから作っただけ、どこででも食べられるようになれば万々歳、そう言ってたらしいよ。
ひいじいさんが亡くなって、ママが継ぐまでの長い間はナッタジの乳製品も質が落ちて、他の商会の商品と変わらなくなってたんだけどね、ママがちゃんと継いでからは、しっかり質も向上しました。領都からも、なんだったら王都からも買い付けにくるぐらい。
ただね、ご近所の商会も、すぐに僕らの商品真似するんだよね。特許とかないから、文句は言えないんだけど。これについても対処はしなくちゃなんないと思ってた矢先、この事件。
きっと、この2軒隣の商会が牛乳配達か、配達箱の秘密を暴いて、自分も真似しようと行った犯行、ってことだと思う。
「それに追加で、ナッタジ商会を困らせたり、ちゃんと配達してこなかったっていう信用の下落を目標にしてるんだろうね。」
とは、ヨシュ兄の意見です。
しかしまぁ、どうする?
乗り込んでいって、返せって言うのは簡単。なんだったら憲兵さんと一緒に行くのもいいかもしんない。
商会だから用心棒とかいるかもしんないけど、正直、僕とヨシュ兄だけでも、負ける気はしないよ。
「そうは言っても、潰すのも面倒があるしね。」
ヨシュ兄は、突撃!に賛成じゃないみたいです。どうして?
「あのね、冒険者としてちゃんとした人から依頼を受けての突撃なら許される。領主様からとかね。だけどね、個人が勝手に成敗!とかはダメなんだ。この国はちゃんとした法律っていうのがあるからね。ちゃんと、資格を持った人が、手続きを踏んでじゃないと、踏み込むとかはできないんだよ。」
「それは分かるけど。だったら憲兵さんに言って踏み込んで貰う?」
「ん~。証拠があるから踏み込んだら大丈夫だと思うんだけどね・・・」
なんだか煮え切らないなぁ。
「たとえば、だよ?ダーなら、配達箱をこっそりとライバル店の倉庫に置いておく、なんてことできる?」
「・・・多分できるよ。」
「でしょ?宵の明星のメンバーなら誰でもそんなに苦労しなくてもできるよね。」
「できるけど・・・でも、誰もそんなことしないよ。」
「うん、そうだね。でもね、私たちがそんなことできるだろうってことは、多くの人が知ってる。悪い人だったらそれを利用して、ナッタジ商会がライバル商会の自分を嵌めようと置いてったんだって主張するかもしれない。」
「そんなこと・・・・」
「うん、そこまでしないかもしれないね。だけどね、正直言うと、私はそこまでしかねない商会だって思ってるんだ、あのゼールクっていう商会は、ね。」
そう言って、ヨシュ兄は眉をひそめたんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます