私のぼうや
平行宇宙
冒険の始まり編
第1話 今日もいい日
「おはよう!」
「今日も元気だね!」
「うちにも2本頼むよ。」
「ヨーグルト、あるかい?」
田舎町ダンシュタ。
僕の住む村からほど近い町。
僕は、僕が住んでいる屋敷から僕の足で走って1時間ほどのこの町に、ほぼ毎朝走ってミルクを届けている。
僕の名はアレクサンダー・ナッタジ。親しい人は僕のことをダーとか、アレクって呼ぶ。そうでない人は・・・・
「坊ちゃま、ミルク余ってたらくださいな。」
「坊ちゃま、チーズはありますか?」
そう、僕のことを多くの人が坊ちゃまなんて、気恥ずかしい呼び名で呼んでくる。何回も名前で呼んで、って言ってるんだけど、、聞いちゃくれない。
そう、僕は、アレクサンダー・ナッタジ。この町一番の商会ナッタジ商会会頭の息子なんだ。
息子って言っても別に偉いわけじゃない。
僕は商人見習いで、かつ冒険者見習いだ。
僕の髪の毛を見て分かるように、魔導師としても、そこそこ有名。
この世界では、魔法があって、その人の魔力量が多いほど、髪の色は濃くなり、その色は属性を現す、とされる。
で、僕の髪はベースは濃い濃い藍色。まるで夜空のようだ、とよく言われる。しかもそのベースの中に多種多様の色のきらめきがまるで宝石の粒のようにきらめいている。そのおかげか、多すぎる魔力量に、多彩すぎる種類の魔法、を、使うことが出来る。本来、僕の年齢では魔法は使うことが出来ないんだけどね。まぁ、赤ちゃんの時に色々あって、なぜか5歳で国有数の、というか一番の魔導師、と目されている。一番といっても魔力量と多彩さだけが取り柄で、諸々考慮すると、そんなたいしたもんじゃない、というのは、自分でも分かってるけどね。
まぁ、魔力云々は、今はどうでもいい。
僕は今、ナッタジ邸からここダンシュタの町まで、日課のランニングを兼ねた牛乳配達を行っている所なんだ。牛乳といっても牛のミルクじゃなくて、「モーメー」ていう家畜の乳を搾ったものなんだけどね。
このミルク製品は、なんといっても僕の家の特産品。
健康安全、を売りに、なんと各家に配達してるんだ。
実を言うと、僕は前世に地球と呼ばれる異世界で生きた記憶がある。と言ってもどこの誰だった、とかまでの記憶はなくて、その世界での常識とか、知恵とか、そういったものの記憶がある、てだけなんだけどね。それで、僕は生きながらえた、とも言えるから、前世の記憶はけっこう頼りになる。その一つに、ミルクにはばい菌あるから、煮沸したら安全だよ、なんて知識もあって、わがナッタジ商会のミルクでおなかを壊す可能性はとっても低い。他のミルクと一線を画す人気商品になっている理由の一つってわけだね。
また、僕が産まれる前から乳製品はナッタジ商会のメイン商品なんだけど、バターやチーズ、ヨーグルトは領主様だけじゃなくて、王様にも献上されている。これってすごいことなんだよ。まぁ、こうやって献上できるのはママのおじいさん、僕から言えばひいじいさんの功績であるから、僕がエッヘン、て言う話でもないんだけどね。
僕がエッヘン、て言っていいのかどうか、今、走って配達しているミルクには、僕のアイデアが満載です。嘘。言い過ぎました。これは僕の前世の知識を使った
前世で僕が生きてた時代ではほぼ廃れていたんだけど、昔、牛乳やさんの商売方法に、毎日指定の本数を家の前に置かれた牛乳箱に配達する、というのがあったんだ。牛乳屋さんのマークがついた特別の配達箱を配布し、その中に毎日瓶の牛乳を入れる。家の人は、毎日新鮮な牛乳が配達されてわざわざ買いに行かなくても良いし、牛乳やさんは、定期で購入してくれる客がある上、その牛乳箱に宣伝効果もあって一石二鳥。
僕は、この商売方法を提案し、僕が中心にこの配達システムを構築することを提案し、了承されたんだ。
僕は、とある協力者と一緒にまずはある魔導具を開発した。
牛乳を入れておくにしても、ここはかなり暑い地域。雨が少なく、前世で言うところのアメリカ西部劇の世界観に近い。
どの程度放置されるかも知れないし、また、それなりに犯罪もあるから、盗まれる可能性や、入れたのに入ってなかったとかその逆の主張がないとはいえない。そんなことを考慮しつつ、僕らナッタジ商会の宣伝も兼ねて、うちの商標入りミルク用冷却ボックスを開発したんだ。
このボックスは一応無料レンタルとして、定期購入者に配布した。
購入者には、魔力を登録して貰い(max3人まで登録可)、その人じゃなきゃ開かないようにした。そして、中には冷却の魔方陣。このおかげで中は一定の温度に保つことができる。ボックス自体を盗まれないように、ある程度物理的に固定するとともに、GPS機能の魔方陣も設置。GPS機能っていっても、これを扱えるのは僕だけなんだけどね。昔、この機能を使って、いろいろやっちゃいました、テヘッ。
購入者は、朝に入れられたミルクをその日のうちに取り込んでもらう。そして、ボックスの中に昨日の分のミルク瓶を入れて貰う。
瓶が欲しいとか、割れちゃったら、箱に入れなくてよく、代わりに瓶代はいただく。
このサービスは一応魔導具を使ってるから、魔導具に魔力を流す必要があるけど、新しいミルクを入れたときに、魔力補充をするのも配達者の役目、かな?
僕は、この配達の責任者だから、こっちにいるときはランニングを兼ねて、僕の仕事にしているんだ。この町には僕のことを知る人が多い、っていうかほとんど知ってくれてるから、たくさんの人に声をかけられ声を返し、注文を受け、配達や回収、魔力補填を行いつつ、本店であるナッタジ商会に到着する。後はナッタジ商会の過不足を見て、仕入れなんかを考え、接客もするし、時には生産者と交流する。
そんな、充実した時間を、僕は日々過ごしているんだ。
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