追放【トランスポーター】、僕だけの【機械使役】で世界最強最速の運び屋になる ~異世界の「潜水艦」「飛行機」を手足に世界の海と空へ! ドラゴンとか相手じゃないです 装甲カチカチだし~
第2-4話 トランスポーター・フェドの初仕事
第2-4話 トランスポーター・フェドの初仕事
「くく……トランスポーター・フェド!」
「君の初仕事は、これだ!」
ここはジェント運輸の社長室……僕はイレーネ社長に呼び出され、トランスポーターとしての初仕事を仰せつかっていた。
「これは……積み荷は食料と医薬品……運び先はリトルアイランドですか」
リトルアイランドとは、ジェント王国の近海に広がる島国だ。
直径数キロほどの島々で構成され、人口は1万人ほど……漁業と観光業が主力産業のミニ国家だ。
「実は最近、凶悪な海棲モンスターが出没していてな……海路による物流が止まっているんだ」
「え!? リトルアイランドってジェント王国の最南端から20キロほどの近海にありますよね? ”魔の海”の外側なんじゃ……」
そう、凶悪なモンスターが棲む”魔の海”は、陸地からおよそ30キロ以上離れた領域であり、なぜかは分からないが、モンスターは”魔の海”より陸地側には入ってこない。
そのおかげで近海の島には人が住み、漁業も出来ているというわけ。
その常識が覆されるとなると、結構大ごとなんだけど……。
「正直、私の方でも情報は集めているが……シードラゴンクラスのモンスターが複数棲みついたのは確かなようだ」
シードラゴン……シーサーペントに比べると小型だが、体長は10メートルを超える。
生半可な装備ではとても相手が出来ない凶悪モンスターだ。
「そこで、リトルアイランドからの緊急要請で、君に当座の食料を運んでほしいというわけだ」
「とりあえず、到着最優先で……到着後、余裕があればシードラゴンを退治してもよいぞ……その場合は追加報酬を出す」
「あとそうだな……リトルアイランドは風光明媚な場所だから、任務完了後は遊んでくるといい」
「ウチのおごりだ」
イレーネ社長はにやりと微笑むと、ジェント運輸の名前が入った手形を何枚か渡してくれる。
費用はここにツケておけ、という事だろう。
今回は人道支援という事もあり、リトルアイランドへ請求される運賃も良心的だ……イレーネ社長、さすが王族だけはあるなぁ……。
ノブレス・オブリージュ。
たまに暴走しても誇り高きジェント王国の王族……。
僕は改めてこの社長のもとで頑張ろうと心に決めるのだった。
*** ***
「むむぅ! 離島で食料と医薬品が足らないっ!?」
「これは絶対行かなきゃだめだよセーラちゃん!」
「失敗は許されないよ! よ~し、わたし……気合入れるぞっ!」
「そうね……モンスターに封鎖された島か……人々を助けるために食料を積んで封鎖を突破する……」
「異世界でもモグラ輸送だけど……絶対みんなを助けなきゃね!」
「あたしたちの船も翼も! 罪なき人々を守るためにあるんだっ!」
「イオニ! ”どらごん”とやらがいつ襲ってきてもいいように、武装の点検やるわよ!」
「了解っ!」
僕がイオニとセーラに初仕事の内容を説明すると、一気に顔を紅潮させ、気合を入れるふたり。
離島への食糧輸送……こういう任務に元の世界で思い入れがあるのだろう。
やる気マックスのふたりを頼もしく思う僕。
”息抜き”の件は後でもいいかな……伊402の事はふたりに任せ、僕は積み荷を点検する。
小麦数百トンに食肉、調味料……とくにリトルアイランドで作れない魔法薬や、なんにでも使える”マテリアル”は多めに……。
通常の外輪船十隻分ほどの物資を積める伊402は頼もしい。
この輸送が成功すれば、数か月は安心だろう。
出来れば、シードラゴンも退治したいね。
ジェント運輸の社員さんたちの協力も得て、伊402号は急速に出港準備を整えていった。
*** ***
「両舷前進微速!」
「伊402、出港します!」
ドドドドドドッ
勇ましいイオニの号令と共に、ディーゼルエンジンの駆動音が高くなり、ゆっくりと伊402の艦体が動き出す。
「ふふ……リトルアイランドの住人も期待しているとのことだ。 頑張ってくれたまえ」
イレーネ社長をはじめ、ジェント運輸の社員の皆さんが手を振って見送ってくれる。
何人かは、不安そうな表情を浮かべ、涙ぐんでいる人もいる。
海棲モンスターが待ち構える海域への船出……この世界の常識では、今生の別れとなってもおかしくはない。
その思いが、彼らに現れているんだろう。
だけど、僕たちにそんな心配は不要なのだ!
この1週間の猛特訓で、見違えるほど操艦が上達したイオニ、射撃の腕をさらに磨き上げたセーラ。
僕たちの戦力は、さらに向上していた。
「う~ん、タマが撃ち放題なのはいいわね~♪」
「最後の方なんて、あたしたち実戦部隊でも数回の出撃分しかタマを渡してもらえなかったし」
連日の射撃訓練で思う存分弾をぶっ放したセーラは上機嫌だ。
「い、一応……マテリアルにも限りがあるから撃ち放題じゃないからね?」
「分かってるって♪ 言葉のアヤよ?」
コンバージョン (物質変換)で使用するマテリアルは、実費精算なのだ。
トランスポーター業務で売り上げた金額から、手数料とマテリアルの費用を差し引いた金額が僕たちに支払われる。
ジェント王国に来る時に積んできたコショウとマツタケの売り上げで、手元資金には余裕があるけれど。
晴嵐の修理や燃料にも大量のマテリアルが必要なので、多少は気にしておく必要があるのだ。
「それで……フェド、目的地までは水上航行で行く?」
「う~ん、シードラゴンは呼吸の時以外、基本的に水中で過ごすから……生息域に入る前に潜航しておいた方がいいと思う」
「おっけ、じゃあ……”リトルアイランド”手前20カイリ (約36キロメートル)手前から潜航して移動ね」
シードラゴンは水中から不意打ちを仕掛けてくることがある。
僕は防御魔法も使えるけど、甲板に立っている時にシードラゴンの攻撃を受けた場合、守り切れる自信はない。
艦内にいる方が安全だろう。
ただ、シードラゴンに遭遇したとして、”魚雷”は節約しないとな……。
イオニから聞いた”アイツ”を使ってみるか……。
伊402号の一応の責任者として、敵への備えは必要である。
僕たちを乗せた艦は、穏やかな海を割りながら目的地であるリトルアイランドへと向かっていた。
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