第1-2話 潜水艦と女の子を拾いました
ギルドをクビになり、海岸をトボトボと歩いていた僕の目の前に現れた異世界からの贈り物である”ギフト”……。
僕の記憶では、どの記録でも見たことのない超大型サイズ……全長120メートル以上の船とか、世界初じゃないだろうか?
過去に見つかった最大の外輪船 (船の横に水車のような車輪がついており、それを回して進む)でも全長70メートルくらいのはず……。
……おっと、あまり驚いてもいられない、さっそくブリーディングを試してみないと!
この世界では、”ギフト”は基本的に公共物として国やギルドに登録する必要がある。
また、最初にブリーディング (機械使役)を行い、使い方を”解析”した術者には専用使用権が認められるのだ。
要は早い者勝ちなので、他の術者に見つからないうちにコトを済ます必要がある。
……だけど、こんなサイズのギフト、動かせるようになるんだろうか?
いままで電話やムセンキ?などのヘンテコアイテムしかブリーディングできなかった僕のスキルで出来るとは思えないけど……使用権の譲渡を見据えたとしても、最初に発見して最初にブリーディングを試したという事実は重要なのだ!
もし、ワンチャン動かせれば……書物に書いてあった通りなら、コイツは海に潜れる船……世界の物流に革命を起こせるかもしれない!
余談だが、危険を冒し、世界中を飛び回り荷物を運ぶ仕事をする人間を【トランスポーター】と呼ぶ。
ブリーダー兼トランスポーター (注:修行中)の僕は本来なら超エリートのはずなのだが……おかしい。
ととっ、自分の現状を嘆いても始まらない。
僕は精神を集中し、「ブリーディング (機械使役)」の魔法を唱える。
その瞬間、激しい赤と緑の光が巻き起こり……!
カッ!!
「うわっ!? なんだ!?」
大きな炸裂音と共に、砂埃が舞い上がる。
「わぷっ、ぺっぺっ…………ええっ?」
砂埃が収まった後、そこに立っていたのは…………ふたりの女の子だった。
*** ***
「あれあれ~? ふわわ、人間になってるよぉ!?」
あわあわと慌てているのは、身長170センチ近くあるだろうか、大柄な女の子。
ふわふわとしたグレーのミドルヘアーに優しそうな赤い瞳。
サイドテールを赤いリボンでまとめ、セーラー服とかいう異世界の制服が、スタイルの良い彼女の身体を覆っている。
ボトムスは白のショートパンツ、すらりと長く伸びた白い足先にはスニーカーを履いている。
全体的にふんわりと優しい雰囲気をまとった美少女だ。
「あいたた……いきなり引っ張り込まれて、なんなのよもう!」
尻もちをついて口をとがらせているのは、対照的に小柄な女の子。
緑色の長い髪をオレンジのリボンで留めてツインテールにしている。
大きな赤い瞳は、彼女の気の強さを表すようにきりりと吊り上がっている。
白のシャツに茶色のジャケット、同じく茶色のショートパンツ。
細い脚は白の二―ソックスに覆われ、足先はローファーだ。
こちらはとても気の強そうな美少女。
「な……なんだこれ……?」
驚きのあまり、呆然とする僕。
ブリーディング (機械使役)を使った結果、人間?が出て来るなんて聞いたことが無い……普通はその”ギフト”の使い方を魔法的に解析し、魔力を込めることで (単体で動かせるものは)動かせるようになるのである。
「う~んと、キミがわたしを”呼び出した”のかな?」
「わたし、この潜水艦”伊402”の精霊?ってヤツ? ……良く分かんないけどよろしく、マスター!」
「名前はそうね……”イオニ”って呼んでっ!!」
グレーの髪、背の高い方の女の子がそう言ってにっこりと僕に微笑みかけてくる。
いきなり”マスター”とか言われても僕、さっぱり分かんないんですけど……。
「もう! アナタが”ブリーディング”ってヤツであたしたちを呼び出したんでしょ!? しっかしりてよ!」
「あたし、ソイツに積んである飛行機”晴嵐 (せいらん)”の精霊! いまは整備中だから飛べないけど……役に立つんだから!」
「名前は晴嵐だから……”セーラ”って呼びなさい!」
緑髪のちっちゃい方の女の子が僕にびしりと指を突き付けながらそう宣言する。
”セイラン”? ひ、飛行機?
これも書物に書いてあった内容だけど、機械の力で空を飛ぶとか……それに、この子たちは”ギフト”の精霊だって??
僕がさらに混乱していると、緑髪の方……セーラが僕につかつかと歩み寄り、バチンと思いっきり背中をたたかれる。
「だから! ここにある伊402と晴嵐を動かすためにあたしたちが呼び出されたってコトじゃない!?」
「こっちだって、いきなり身体を貰っていろんな知識をアタマに詰め込まれてびっくりしてるんだから、あたしたちを呼び出した張本人として、”この世界”の事を説明してもらうわよ!」
「……ひとまず、わたしの艦内に行かない? お茶とお菓子もあるよ?」
セーラに気合を入れられ、イオニが微笑む。
その瞬間、巨大な船体の真ん中あたりに載っている塔 (艦橋)のてっぺんに付いている鉄のハッチがガコンと自動的に開き、僕はふたりに両腕を掴まれるとそのハッチに向けて引き摺られていった。
「えっ、ちょっと……わわっ」
見た目に似合わず力の強い二人に抵抗することが出来ず、僕は美少女ふたりに巨大な鉄の船……潜水艦の中に連れ込まれたのだった。
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