第8話孤児院⑦
女の方が一方的に男をまくし立てる様に喋っていた。
「
女の髪は茶色に染めていて顔には薄く化粧が施されスカートは短い。世間一般からしたら別に普通なのかも知れないが、俺から見たらあんなもんはギャルだ。
ギャルがただギャーギャー騒ぐの何て日常茶飯事だけど、今日は特にうるさかった。
男の方も髪を茶色に染めていて背が高くモテると思う? 多分。
内容的には良く分からないけど、多分俺とみくとは逆にマイナスのイメージになってしまったのだろう。
まぁ俺とみくの関係が良いイメージかどうかも定かではないがな。
例えるなら普段悪い奴だと思っていたら良い奴で、逆に普段良い奴だと思っていた奴が悪い奴になってしまったのだろう。
それでいうなら俺は最強だ。
普段から嫌われてる俺はプラスになる事しかないからな。
自分で思っていて何か悲しくはなるけど。
「それじゃあどうする? 先生にお願いしてこの企画中止にしてもらう」
翼と呼ばれていた男がギャルの顔を睨みなから応えていた。
『中止』と聞いたクラスは落ちこんでいる生徒、喜んでいる生徒が半分ずつ見えた。
俺はどっちかというとまだみくとの共同生活を続けたい。何となくだけどな。
騒ぎを聞きつけ先生が教室に入ってきた。
「いったい何があった!?」
先生は状況が理解していないらしく教室内をキョロキョロと見回していた。
気を効かせた生徒が先生に詳しく説明していた。
「さてと、どうする? 続けるか続けないかはお前達が決めて欲しい」
状況を理解した先生がクラスの皆に質問したら教室内にはしばらく沈黙が続いた。
「とは言っても話し合うのは不可能だから多数決を採る。このままペアの企画を続けてもいいと思える人は手を挙げて?」
さっきクラスの表情を見た感じで俺を含め半分ほど手を挙げた。
一応先生は反対の方も手を挙げさせたがやはり半分。
クラスは全体で40人、半分半分なので結果はでなかった。
「先生どうするんですか?」
もう恒例といっていいのかも知れない、みくがクラスの代表として先生に質問していた。
「あ、そう言えばまだ1票残ってました」
先生はわざとらしく気付いた感じを装っている様な表情をしていた。
「誰ですか?」
「私の1票です」
「私はもちろん賛成に手を挙げます。だから皆さん、ペアになった方と青春を謳歌して下さい」
クラス中で賛成の人達は盛り上がっていたが、1人だけ絶対に反対の人が声をだした。
「私は嫌です」
今日の発端となったギャルだ。
名前は………やっぱり分からないや。
「翼とはもう一緒に共同生活は出来ません」
「そこまで嫌なのにはそれなりの理由がある外ですけど、教えて下さい」
ギャルは理由を言いたくないのか急に喋らなくなり、さっきまでの威勢が完全に消えた。
クラス全体がしばらく沈黙していたがギャルがようやく重い口を開いた。
「私の家は自分で言うのはあれなんですけど、裕福なんです」
ただの自慢話だった。
何あの緊張感。そんなどうでもいい事だったらマジであの時間返せよ。
しかも凄いどや顔で先生見てるじゃん。
「それで私もクラスの人気者の翼と一緒になっちゃって舞い上がってたのかも知れませんが、武が欲しい物をたくさん買っちゃって」
俺も誰かに貢いで欲しいです。
逆に貢がないと俺に女は出来ないと思うけど。
「それに味をしめた翼があれ欲しいこれ欲しいとか言ってきて。それで私ふと気付いたんです。何やってるんだろうって」
今の話し聞く限りだと自業自得だと思うのは俺だけか。
「間違ってたらすいません。今の話しを総合すると、あなたが悪いと思うんですけど」
先生もどうやら同意見の様だ。
「もう私は無理です」
「分かりまし」
「ありがとうございます」
ギャルは先生の話しを遮り喋った。
「人の話しは最後まで聞きましょうね。人気者の翼君をとるか、悟君と交換するかあなたが決めて下さい」
先生、今一番関係ない俺が引き合いにだされたけど。
多分あれだろ。俺がクラスに馴染めてないからだろ。
何か目から涙が···。
「翼にします」
即答かよ。
返せよ。
この茶番と俺の硝子の心を返せよ。
さっきの長考と違い過ぎるだろ。
引き続き俺はみくとのペアで共同生活をする事が決まった。
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