第3話孤児院②
孤児院『ヒマワリ』に入ると三歳位の子供が俺に向かって突進してきたので、かがんで受け入れる態勢をとったが見事に回避された。
俺の嫌われっぷりは子供にも適応されているらしい。
「ママあっこ」
先ほど見事に回避した子供が俺の後ろにいた同級生に『あっこ』とせがんで、抱っこされていた。
あーあっこって抱っこのことね。
「いつからママになったの?」
「違うよ。この施設で、最年長だからママって呼ばれているだけだって」
なるほどね。
危うく昔やっていたドラマの再現かと思ったぜ。
しかも清楚系で真面目そうな顔していてやること早いなと思ったよ。
「この人誰?」
抱っこされていた子供がママに思ったことを質問していた。
子供の素直さは時として心を温めてくれる事もあれば、北極の寒さの様に心を冷やす時もある。
一年前の高校での昼食での話しだ。
高校の昼食は基本的に自由なので誰と食べようか、どこで食べようか自由なのだが、ここに大きな問題がある。
自由と言う事は相手を自分から選ばないといけないということ。
なら俺は当然一人。
場所が自由ということは教室でも屋上でもどこでもいいということ。
なら俺は当然便所飯。
この答えがでた二つを合わせると、一人で便所飯ということになる。
そんな便所飯生活が続いたがさすがに嫌になり、近場の公園に向かったのだが、昼時間は子連れの奥様達の憩いの場になっていたのだ。
そんな中公園で一人で飯を食べていたら無垢な子供が近付いてきてこう言われた。
「お兄ちゃん四面楚歌なの」と。
おいおいずいぶんと難しい言葉知ってるじゃんかよ。
俺は何もいい返す言葉が見付からず、その日から昼時間は公園でご飯を食べるのを止めると心に誓った。
「知らない人よ」
まてーい。
知らない人が自分の家にいたら怖いだろうが。あれか? テレビとかでやってる『知らない人がもし家にいたら』とかの企画か。
一応同じクラスだろうが、名前知らんけど。
急に子供のお腹が『グー』となったので女子生徒が俺に向かって「ご飯にするから適当にどこか座ってて」 と言われた。
何、俺にもご飯があるの。めちゃくちゃ嬉しいんですけど。さっきあなたの事を心の中で失礼極まりないいい方したけどごめんね。
さてと、座っててと言われてもどこに座っていいか分からないぞ。
茶の間には、さん四人の子供が積み木をして遊んでいたり、絵を描いたり、テレビを観たりしていたので俺の場所はなかった。
「お兄ちゃんこっちにおいで」
さっきお腹を鳴らした子供が手招きをして何故か呼んでいるので、絵を描いている最中だっらしいが俺は気にせず横に座った。
さっきの言葉を訂正しよう。
どうやら子供には俺は嫌われていないようだ。
「お兄ちゃんママのこれ?」
絵を描いている手を止めて小指をピンと上に立てて、いっちょまえの顔を見せてきた。
まだ三歳位だと思われるのにいったいどこで覚えてくるんだろうか。
「実は…そうなんだ」
と俺は神妙な面持ちで応えた。
「えー嘘」
子供はピンと伸ばしていた小指を下げ、うつむいてしばらく黙ってしまった。
あれーこれ相当悪いことしちゃったかな。
「ほらバカなこと言ってないでご飯にするわよ」
女子生徒が台所からご飯をこちらの運んできたら、うつむいていた子供はパッと明るくなり直ぐ様、俺の所からいなくなった。
ご飯をテーブルに置いたと同時に周りにいる子供達が群がってきた。
まさに自分が1番多く食べるんだと自己主張するように。
流れに身を任せる様に俺も子供達の群れの中に混ざっていたのは秘密だ。
「それではみなさん手を合わせいただきます。ほら、あなたもやる」
女子高生に言われるがままに手を合わせていただきますをした。
俺の目の前には男なら大好きな肉ジャガ、お味噌汁、ご飯が並べられ割り箸が置かれていた。
「これ食べていいの?」
「目の前に置かれているんだったら食べていいんじゃないの」
まったく素直じゃないとはこのことを言うのだろう。
でも安心して欲しい。素直じゃない女の人の方が男にとっては結構萌えたりもするもんだ。うん。
割り箸を手に取り肉ジャガのお芋を口の中に運んだ。
「う…美味い」
「当然」
女子生徒は自信満々の顔をしてみてきた。
「ママの料理は最高なんだ」
子供も自分が作ったかの様な表情で俺をみてきた。
料理を口に運ぶ度、より美味いと感じてしまう。
この女子生徒天才何じゃないのか。
気付いたら完食してしまっていた。
一番の調味料は便所飯をしてないで皆で食べているかも知れない。
「早くお風呂入ってよね」
女子生徒は俺達が食べ終えた食器をお盆の上に乗せながら言ってきた。
「それじゃあお言葉にあまえて」
と言うと三歳位の子供が俺の手を引き風呂場に案内された。
『フ~』
一人ゆっくりとリラックスしていると『ガラガラ』とお風呂のドアが勢いおく開いた。
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