126話_サキュバスと暑すぎる夏

「暑い……」


今日、僕は184回目の「暑い」を呟いた。


それもそのはず、今日の気温は最高気温39度とインフルエンザにでもかかったような温度、しかも体外の温度なのだ。常時お風呂に入ってるようなものではないか。


買い物から帰ってくると、外の庭でなにやらキャッキャと楽しそうな声がする。


「なんだ、皆そこにいたのか」


そこには水着姿のソフィア、ミュウとシェイドが水を張ったプールで涼んでいた。


アイシャがつくった氷の柱が近くにあるのでひんやり冷たいのだが、もりもり溶けていくのをみて今日の暑さの異常さを再確認する。


「あら、おかえりなさい。シオリ」


真っ赤なビキニを着てサングラスをかけたミュウがこちらを見る。布面積が少なく、いかにもミュウらしいセクシーな水着だ。


「シオリ、おかえりなさい。暑かったでしょう」


ソフィアは水色の爽やかなビキニで、綺麗にくびれたラインがたまらない。髪が濡れないようお団子にしてまとめているので、いつもと違った雰囲気だ。


「早かったなシオリ。こう暑いと大変だっただろう」


意外だったのが、シェイドもビキニを着ていたことだ。真っ白なビキニに引き締まった体。こちらも綺麗な曲線美を描いていて絵になる。


ビーチにいたら確実にナンパの対象になるであろう3人が、家の前でこんなサービスショットを見せてくれているのは、まさしく夏のおかげであった。おかげなのだが、流石に暑すぎて涼しくなりたい。


「でも、なんでまた外にいるんだ?暑いだろ?」


「せっかくの夏なので夏らしいことがしたいなって」


「私が提案したのよ」


ミュウは起き上がると僕の手を掴み、そして僕をプールに引きずり込む。


バシャーン!!


顔からつっこみ水浸しになる僕。


「ぷおっ!何するんだよっ!」


「どう、気持ちいいでしょ?」


「良いは良いけどさ……」


「ミュウ、そんなことしたらシオリが大変でしょう」


「熱中症になるよりいいじゃない。シオリだってだいぶ暑くなってるわよ」


ミュウに抱きつかれて再びプールの中に引きずり込まれる。ひんやりとしたミュウの体は、火照ほてった体に丁度良かった。


「冷たい…」


「気持ちいいでしよ?しばらくこうしていていいわよ。外を歩いていれば暑くもなるわよ」


びしょ濡れになったまま、ミュウの体に顔を埋めているとソフィアが後ろから近付いてきた。


「えいっ」


ピタッと背中にくっつくソフィア。前も妹、後ろは姉にサンドされる。サキュバスサンドイッチの出来上がり。


「シオリ、気持ちいいですか?」


「うん、凄くひんやりする」


「良かった」


「姉様も大胆になったわね。シオリ、上脱いでしまいなさいよ」


「いや、僕水着じゃないから」


「いいのいいの」


「うわー!!」


すぽぽーん。


あっという間に服を脱がされトランクス1枚になる。


「手慣れたものだな」


「シェイド、感心してないで助けてくれよ!!」


「ここは敷地内だ。騒いでも怒られはしない。ゆっくり2人と遊ぶといい」


「そう言うことじゃないんだけどー!!…まぁ、いいか。暑いし、涼しくならないと死んじゃうし」


自分で言うのもなんだが、その場の適応力はだいぶ上がった気がしている。僕はそのままぬるくなってきたプールに浸かることにした。トランクス1丁なのは、この際おいておくことにする。


4人がプールの中に入ると、さすがに満員なので交代で。合法的に触れられる機会というだけあって、僕はほぼ固定。


「天寿様、こんな能力はどうでしょう」


せっせと氷をつくってくれていたアイシャが僕の手になにやら魔法を施す。


「これは?」


「エンチャントアイス。触れたものを少しひんやりさせる能力です」


「へぇ、それは便利だな」


早速自分の首に手を当ててみる、確かに、これはひんやりと気持ちいい。


「気持ちいい、ありがとうアイシャ」


「天寿様のお役に立てて嬉しいです」


にっこりと笑い、また氷づくりに戻るアイシャ。アイシャは普通に良い子で助かる。


「そんなに冷たいの?」


「あぁ、気持ちいいよ」


ミュウの首に手を当てる。


「ひゃぁんっ」


「!!」


ミュウのつやっぽい声にドキッとしてしまう。


「あら、ごめんなさい。びっくりしてしまって。けれど、確かに気持ちいいわね。ねぇ、その手で私の体を触ってくれないかしら」


「いいけど」


ミュウに言われて、肩から腕、お腹、太ももから膝にかけて脚へと全身くまなく撫でていく。


「いい、いいわ…」


体をゾクゾク震わせながら、気持ちよさそうな顔をしているミュウ。冷たさが心地良いようだ。


「ここも、お願い」


言われるがまま腰に手を当てる。


「くぅ…気持ちいいわ。姉様、これクセになりそう」


「そ、そんなに凄いの?」


「やってみてもらった方が早いわ」


興味あり気なソフィアに、ミュウが僕の手を持って行く。


「くはぅ……あ、確かにこれは涼しくて気持ちいい」


「でしょ?」


端から見ると美女2人の腰を触っているトランクス1丁の変態少年。それ以外のなにものでもなかった。



「シオリ、流石にこれ以上されると…」


「変なスイッチが入ってしまいそうね…」


心なしか艶っぽさを増した2人の声。頬も赤く染まり始めている。


「あぁ、ごめん!!」


「その能力があれば、夜も快適に眠れそうね」


「確かに、夏には心強い味方だ。リビングで皆で寝るのもいいかもな」


「それ、いいですね。楽しそうです」


「私も賛成よ、シオリの隣で寝られるのならその方がいいわ。もう反対は姉様ね」


「私はシオリの寝顔を見られればどこでも構わん」


「え、今さらっと気になること言った」


シェイドのコメントはスルーされ、涼んだ僕達は家の中へと入る。


「あっつ!!?」


「外の方が涼しいわね……」


「エアコン、調子悪いんでしょうか……」


「室内35度。これは致命的だな、外に戻るか」


結局、エアコンが直るまでの数日間は、外のプールとアイシャの氷の能力でしのぐこととなった。アイシャの株が少し上がったのは言うまでもない。


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