Final Chapter - 願い -

二日前。

彼の兄……冬馬さんから連絡をもらった。

内容は、瑞樹が旅立ったということだった。


信じられなかった。

なにも伝えずに行ってしまうなんて。

せめて見送らせて欲しかった。


冬馬さんに会えないかと言われたので、

冬馬さんと今日会うことになった。


冬馬さんは彼も住んでいたという実家へ案内してくれた。

そして、彼から渡してほしいと頼まれたと、鍵を渡された。

彼の部屋の鍵だそうだ。

冬馬さんは、終わったら声をかけてと言い残し去っていった。


彼の部屋は物がほとんどなかった。

伽藍とした部屋の机のうえにポツンと一枚の手紙が置かれていた。


普段手紙なんて書かない人だった。

馴れていない文章には彼の想いが詰まっていた。


窓から君を連れ去った薫風が吹く。

窓の側には一つの植木鉢があった。

そこにはブライダルベールの花がひっそりと咲いていた。

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