ソード・ワールド2.5 リプレイ《Ordinary Adventurers in Raxia》
もっぷ
遅過ぎる始まり 〜 キャラクター作成
——それは、三月上旬のこと。友人からのURL付きのメッセージから始まった。
「〇〇さん(筆者のこと)、今から一シナリオやってリプレイ書きましょう」
名指しされた私はURLを開く。そこに書かれてたのは『求む、あなただけの冒険譚! ソード・ワールド2.5 リプレイコンテスト』という文言。どうやら小説投稿サイト『カクヨム』で開かれるTRPGのリプレイコンテストのようだ。
私はすぐに返事を送る。
「書いてみたくはあるけど、ソドワはプレイ経験すら少ないからなあ……」
友人がこの話を持ちかけてきたのは、私が最近TRPGのリプレイを書いて公開し始めていたからだろう。実際リプレイを書くのは大変ではあるが楽しく、趣味レベルとはいえそれなりに気合を入れて書いているからか友人の中には続きを楽しみにしてくれてる人もいる(メッセージを送ってきた友人もその一人)。
なので『リプレイコンテスト』というたくさんの人に読んでもらえそうな企画に大いに興味をそそられたのは事実なのだが……この三月四月は新しい現場に引っ越しにと今までにないくらい忙しいことが決まっていた。
さらに返事に書いた通り私はソード・ワールドのプレイ経験が非常に少ない。そもそものTRPG経験も多くは無いが、その中でもソード・ワールドは過去のシリーズを含めても片手以下の回数しかプレイしておらず、世界観の理解すら微妙だ。そんな状況かつ前述の忙しさの中でリプレイを書くのは厳しい予感しかしない。締め切りも五月末までだし。
そんな気持ちから前述のような〝やらないであろう〟返事を送ったことで、友人も「書かないな」と思ったのだろう。特に何も言わずすぐに別の話に切り替わり、この話はそのまま忘れ去られた。
……しかし、私の頭の中は違った。引越しをして、新しい現場での仕事をやりつつも、頭の中で「なんとかリプレイ書けないかなあ……」と考え続けていたのだ。
持ってないサプリメントを買い、合間の時間で公式のリプレイを読み、「ソドワなら単発シナリオより短くてもキャンペーンがいいよな……」と簡単なシナリオを考え——そして、リプレイコンテストの期間も既に半分近く過ぎた四月の下旬。ついに決心した私は友人たちにメッセージを送った。
「【急募】SW2.5リプレイ用短期集中キャンペーンセッション プレイヤー募集」
○
GM(筆者):——それでは揃ったところで始めよう。おはようございまーす!
一同:おはようございまーす!
五月上旬。
急な呼びかけにも関わらず参加を表明してくれた四人のプレイヤーがそこには集まってくれていた。
——〝集まった〟とは書いたが、このご時世である。実際に集まったのはオンラインで会話ができるボイスチャットソフトの部屋の中。
つまり、今回のセッションは全てオンラインセッション(オンセ)で行うことに。
GM:みなさん急な呼びかけに集まっていただきありがとうございます。本日はカクヨムのソード・ワールド2.5のリプレイコンテストに応募しようかなと思いまして集まってもらいました。友人Bに唆されたので。
一同:いえーい。
GM:しかも急なのに一話完結ではなく三話くらいやろうかなと思っちゃったのでキャンペーンセッションです!
友人B:イエーイ!
友人A:やったぜ!
友人C:どうせ四話とか五話とかまで伸びるんでしょ?
GM:それ五月中に書き終わらないから! 締め切り五月三十一日なんだよ……。(一同笑)
友人C:頑張って(笑)。
GM:実際、三話ですら書き終わるか怪しい、むしろ一話完結ですら書き終われるかわからないのに俺は何をやってるんだろうって気もしてるけど……ま、何にせよこのセッションはリプレイとして公開されることはご承知おきくださいね。
友人D:はーい。
GM:とはいえリプレイにするからこうしてくれといった特別なことはないのでみなさんはいつも通り遊んでくれれば良いと思います。
友人C:NGワードとかある?
GM:無いよ。それはリプレイ化する時に自動で消滅するから大丈夫。(一同笑)いつも通り自由にやってね。
ここで、急な呼び掛けに集まってくれた頼もしい友人たちを簡単に紹介しよう。
●友人A
面白そうなこと、楽しそうなことにすぐに首を突っ込んできてくれるノリの良い友人。人をイジるのもイジられるのも楽しさのため。ちょっとやり過ぎちゃうこともあるのはご愛嬌です。TRPGでもロールを楽しむノリの良さがあるが、キャラ作や戦闘では記憶している膨大なデータから強いビルドや効率を追い求めるガチなデータ狂の側面も併せ持つ。GM的には、頼もしくもあり脅威でもあり?
●友人B
TRPG好きで行動的な友人。何を隠そう最初のメッセージを私に送ってきたのもこの友人である。基本的に常識人だが、時には歯に衣着せぬ物言いも辞さない姿勢はいつも勉強になります。今回のメンバーの中ではソード・ワールド(過去シリーズ含む)の経験が最も多く、ほとんど全ての過去作を所有しているらしい。このSW2.5はまだあまりプレイできていないで、このセッションも楽しみにしてくれてたとか。ありがとう。
●友人C
知識経験豊富な頼もしい友人。ただし、アドバイスをくれる時の真面目さと遊ぶ時のはっちゃけぶりのギャップがすごい。あと定期的にド天然をかます。そのせいか他のメンバーよりも年上なのにたいていはイジられ側になっているが……まあ本人はその扱いに満更でもなさそうだなと思ってます。TRPGでは友人Bに次いでソード・ワールド経験が豊富。PCはギャグキャラが多い印象だけど、今回はどんなPCが来るかな?
●友人D
奇人変人が多い私の友人の中で希少な常識人枠の友人。会話してて平穏な雰囲気を感じられる良い意味で普通な人。でも結構な頻度の天然な発言や行動でよく場を爆笑の渦に包んでくる。やっぱり常識人枠じゃないのかもしれない。TRPGでは自他共に認めるダイス運の悪さを持ち、「2dの期待値は5」「固定値こそ正義」などとよく言っているが、TRPGに彩りをもたらすその出目を出せるこの友人は、すごくダイスの女神に愛されているのだとGMは本気で思っている。今回も楽しい出目をよろしくお願いします。
それと、本リプレイで使う最低限のTRPG用語も説明しておこう。
●PL:プレイヤーの略。TRPGを遊ぶ人自体を指す言葉。後述するGMもゲームを遊ぶプレイヤーではあるのだが、PLと言う場合はGMは除く場合が多い。
●PC:プレイヤーキャラクターの略。PLがTRPGの世界の中で演じ、動かすキャラクター自体のこと。ソード・ワールドの世界にいるのはPLではなくPCだ。
●GM:ゲームマスターの略。シナリオを考え、PC以外のキャラクターを動かし、PLの無茶振りに応える役割。ここでは筆者が担当している。大変だけど楽しいよ。
●ダイス:サイコロのこと。ソード・ワールドでは一般的な六面体(1〜6の目が出る)サイコロしか使用しないので、ダイスと言ったら1〜6のサイコロだと思ってね。
●1d、2d:ダイスを振って合計値を出すこと。1dならダイスを1個、2dならダイスを2個振って出目の合計値を出す。2d+4など「+○」とあればその数値も足すぞ。
●セッション:TRPGにおける一回のゲームプレイのこと。まず何かしら依頼を受けたり騒動が起きたりして、PCがその解決に動いて、最後は問題を(たいていは敵と戦って)解決して報酬や経験点を得るまでの一連を指す。「シナリオ」もほぼ同義で使われることが多い。なお、「キャンペーンセッション」は基本的に同じPCでセッションを何回も繰り返すことを指すぞ。
GM:——さて、事前にも伝えてますが今回みなさんが使うルールブックは『基本1~3』です。GM側はモンスターデータに『モンストラスロア』とか他のサプリメントも使わせてもらいますが、プレイヤー側は基本のみを使ってください。そこに書かれてるのは全て使用可能です。
友人A:ほいほい。
GM:キャラ作成はじっくり作成での初期作成です。個別キャラ毎の導入の設定……いわゆるハンドアウトはありません。
友人B:了解です。
GM:一応こちらからお願いする最低限の設定としては……今回はルールブック1にあるブルライト地方、その南部にあるハーヴェス王国が最初の舞台になります。この地方で最も活気のある国だそうで……あと細かいことはルールブック1の379ページ以降を見てください。
友人D:はい(笑)。
GM:このハーヴェスの首都……の近くにある街からみんなの冒険が始まります。それなりに活気のある街で、ハーヴェスの首都とは比べ物にならないけど、十二分に多くの人たちが住んでいる街です。名前は……あ、決めてなかった。
一同:(笑)
GM:こんな時のためのネーミング辞典だ! えーっと……(本を適当に開きつつ)……うん、「ヴァール」にしよう。みんなにはハーヴェス王国内の街の一つ、ヴァールの街でパーティを組んでいる駆け出しの冒険者になってもらいます。既にパーティを組んでるけど、一~二回簡単な依頼を受けたくらいかな。
友人B:お、追加経験点をくれてもいいのよ?
GM:そんなものはない! 追加経験点を得られない程度の冒険を数回やり終えたくらいの駆け出し冒険者。
友人C:報酬のお金は?
GM:生活費に消えた。
友人A:生活費に消える程度の報酬の依頼か。ドブさらいと薬草取りと……。
友人B:あと猫探しだな。(一同笑)
GM:(笑)まあ具体的にどんな依頼をやってたかはお任せしますが……それくらいの依頼は既にやり終えたパーティ、という関係性です。この街には冒険者ギルドの支部もあるので今のところはそこを中心に活動してる、というところです。
友人A:なるほど。
GM:というのが最低限の初期設定。それ以外の設定や経歴はご自由にお考えください。——それじゃあ、みなさんキャラクターを作りましょう。
そんなこんなで始まったキャラクター作成。TRPGのプレイの中で実際にセッションをするのと同じくらい楽しい時間の始まりだ。
友人C:みんなはやりたい種族とか職業(技能)は決まってる?
友人A:今のところリルドラ戦士の基本型かなーと思ってる。ガチガチに硬くして前に出るタイプにしようかなと。
友人B:ファイター? グラップラー?
友人A:ファイターで金属鎧かな。命中はちょっとひどいことになりそうだけど。
友人B:じゃああとは——スカウトとヒーラーと魔法攻撃か。
ソード・ワールド2.5のPC(プレイヤーキャラクター)作成では、種族・能力値・技能・戦闘特技といったゲーム的なデータを決めた後に、経歴などデータには関わらないプロフィールを決定していくのが基本的な流れだ。
特に「技能」——他のゲームで言うところの「職業」や「クラス」にあたる部分は、冒険者としてパーティを組む以上は各自好き勝手に選ぶわけにもいかない。回復役が一人もいなかったり、誰も前衛になれなかったりでは戦いもおぼつかないため、最低限の役割分担は相談して決めることになる。
そして技能によってはそれに適した種族と適性が無い種族が出てくる。剣と魔法のファンタジー世界であるソード・ワールドではいわゆる人間だけでなく、エルフやドワーフ、さらにウサギ姿のタビットや竜の姿をしたリルドラケンなど、姿も文化も多様な種族(まとめて「人族」と呼ばれる)が共に生活している。能力だけでなく姿も大きく異なるので好みから種族を選びたいところではあるが……いくらTRPGが自由な遊びといっても、技能とあまりに不適当な組み合わせは推奨できない。なので、まずは好きな種族かやりたい役割(技能)を相談していくのだ。
友人C:そういう友人Bは?
友人B:種族はまだ悩んでる。職業は何パターンか考えてるけど……今のところはフェアリーテイマーで考えてるかな。魔法での攻撃と支援。
友人C:なるほど。
友人A:じゃあ(ボイスチャットの集合時間に)遅れてきた友人Cは残りの必須技能よろしく。セージとレンジャーとスカウトな。
友人C:学校の委員会決めかよ!?(一同笑)
友人D:戦闘する気ゼロだな(笑)。
技能には大別して「戦士系技能」「魔法使い系技能」「その他系技能」があり、戦士系と魔法使い系は主に戦闘のための技能、その他は補助や戦闘以外で役立つ技能だ。
友人Aが言った「セージ」「レンジャー」「スカウト」は全てパーティ内で一人は持つべき必須とも言える技能なのだが……戦闘ではほとんど役に立たない「その他系技能」。ファンタジーRPGで戦うのが全くできないとか不憫すぎるのでやめようね!
友人C:友人Dはー? …………あれ、友人Dいる?
友人B:……いないんじゃない?
GM:声が聞こえないな。(友人Dに)虚空に向かって喋ってないかー?
オンセあるあるのトラブルの代表(だとGMが思っている)「音が途切れる」。
マイクの問題やネットワークの問題など原因は多岐にわたるが……このトラブルの厄介なところは、一対一のやり取り中とかでない限り喋ってる方も聞いてる方も途切れていることがすぐにはわからないところだ。そのせいで場合によっては数分間も誰にも声が届いてない状態——GMはこれをよく「虚空・壁に向かって喋る」と形容する——になってしまう。
友人D:(少しして)……途切れてた。聞こえる?
友人A:ああ、いたいた。
友人D:知らぬ間に切れてたみたい。びっくりした。……えーっと、種族と技能の話だよね。なら敏捷高めの種族でグラップラー&スカウトとか狙おうかな。
友人A:お、いいね。こっちは当てることを考えてない構築になりそうだし……。
友人B:前衛で「当てることを考えてない」は草生えるんだが。(一同笑)
友人D:なるほどね。うーん、自分は種族どうしようかなあ。人間かなー?
友人B:人間は能力値の運ゲーがやばいよね。運命変転はシンプルに強いけど。……うーん、基礎能力値見るとどうしてもこっちはエルフになっちゃうなー。
友人D:魔法使うなら困ったらエルフになるよね。
友人A:その代わり体はもやしになるけどな。
友人C:メリアも気になるなあ。メリアの短命種って寿命どうだっけ?
友人D:(ルルブを見つつ)短命種は10年程度、長命種は300年程度だってよ。
友人C:……女神フルシルの神聖魔法でそよ風を発生させると「植物の成長を促す」ってあるんだけど、短命種には自爆攻撃じゃね?(一同笑)
GM:違うから! メリアは植物由来だけどもう人族になってるから大丈夫だよ!
わいわいと楽しい相談が続く。
そして、大まかに各自やりたい種族や役割が決まったところで——。
友人A:これ以上は能力値のダイス目次第だなー。そろそろダイス振りたい。
GM:それじゃあそろそろオンセツールも起動して進めよう。
TRPGは主に会話で進むゲームだが、ダイスを振るのも楽しみの一つ。ボイスチャットソフトだけではダイスは振れないので、同時にダイスを振ったりコマを置いたりできるネット上のオンセツールも使って遊ぶのが一般的だ。
GM:キャラ作成はルルブの通りに進めていくよ。まずは種族と生まれを決めてもらって、その後に能力値決めだ。能力値決めはダイス振りで、ルルブの指針に合わせて三セット分振ってもらってその中から好きなセットを選ぶ方法で行ってください。
友人A:了解です。
キャラクターの能力値は六種類。それぞれ種族(と生まれ)で決まった基本値に、決められたダイスを振った値を足して能力値が決まる。
ダイスを振るので出目次第で全部弱いキャラクターや全部強いキャラクターなど、運で大きな差が出てしまうこともありうる。そのため、ソード・ワールド2.5では「六回振って一つの能力値セットを出すのを三回繰り返し、そこから一つ選ぶ」のを推奨している。
友人B:よし能力値決めるぞ。(能力値のダイスを振りながら)うーん、もやしだなー。生まれたくはないな。(一同笑)
GM:「生まれたくない」って言い方はどうよ(笑)。
友人D:確かにステータス微妙だけどね(笑)。
友人B:(三回振り終わって)……二人目か三人目だなー。二人目なら敏捷でスカウトいけるけど、三人目は生命力が最大値かー。
友人D:よし、グラップラー目指すぞー。(ダイスを振る)ちょっと? 一番欲しい「器用度」と「敏捷度」が両方1・2って死んでるんですけど?(一同笑)
GM:グラップラーで命中もしないし回避もできないと(笑)。
友人D:せっかく生命力と筋力は高いのに……とりあえず二回目振ろう。
ダイス振りは常に悲喜交交。思った出目が出たり、狙いと真逆の出目が出たりと喜びの声や悲しみの叫びが出て大変楽しい(?)時間をしばし過ごす。
程なくして能力値も決定。そこから技能などその他のデータも決まり、アイテムも購入して——データ面はみんな完成したようだ。
GM:さて、データは完成したところで、最後は大事な大事なプロフィールだ。
プロフィールでは名前や見た目の他、PCの過去にあった事や冒険者をしている理由などのPCの背景設定も決めていく。これらはゲーム的な強さには何も影響しないが、自分であって自分でない、PCの「個性」を決める大事なポイントだ。
これらは任意に決めてもいいが、悩む人のために表も用意されている。ソード・ワールド2.5ではPCの過去である「経歴」と冒険者である理由にもなる「冒険に出た理由」の表が用意されており、ダイスを数回振ると[大恋愛をしたことがある]とか[師と呼べる人物がいる]とか[卵を温めたことがある]といった素敵な(そしてよくわからない)背景設定を付けてくれるぞ。
——まあ〝悩む人のために〟とは言ったものの、ダイスを振る楽しさを知ってしまっている者のやり方なんて決まっているようなもので……。
GM:まずは「経歴」と「冒険に出た理由」を決めていこう。任意で決めるかダイスを振るかできるけど……任意で決めたい人はー?
一同:…………(無言)。
GM:——サイコロを振りたい人ー?
一同:(元気に)はーい!
当然、考えるよりも先にダイスを振るのだ。
GM:(笑)それじゃあ順番にダイスを振っていこう。最初にやりたい人ー?
一同:…………(無言)。
GM:……振りたいって言った割にみんな積極性が足りないぞ!(一同笑)
友人A:(笑)それじゃあ俺からやろうかな。
GM:OK。経歴は最大三回、冒険に出た理由は一回振るぞ。別に全部採用しなくても大丈夫だし、気に入らなければ振り直してもいいので気楽にどうぞ。
●友人Aの経歴と冒険に出た理由
経歴A[かつて信頼できる友人がいた]
経歴B[血縁者と死別したことがある]
経歴C[大怪我をしたことがある]
冒険に出た理由[最強の存在になるため]
友人A:信頼できる友人が「いた」……って、裏切られてる?
友人D:亡くなったとかじゃないの?
GM:過去形でも反転したとは限らないぞ。昔いただけで今どうなってるかは自由だから、「かつていた。今もいる」でも良いし。
友人A:そして死別と大怪我と……あー、なるほどね。
GM:それに[かつて信頼できる友人がいた]ことが関わっているのかも?
友人B:大怪我をして親友を失って、「俺は最強になる」と……。
友人A:経歴の理由は巨大な何かに襲われたとかかな……。ヒロイックな感じがする。
こうしてランダムに選ばれた設定を繋げて自分のPCを考えるのも楽しいもの。友人Aが「うーん」と考え始めたところで、次の人に移る。
友人C:よし、次は俺がやr(ピーンポーン)すいません。(一同爆笑)
GM:ちょうどデリバリーが届いたか(笑)。
友人A:タイミング良過ぎるでしょ(笑)。
——次の人に移れなかった。オンセ……というより、近年のリモートあるあるだなあ。
友人C:(少しして)……戻りましたー。今度こそ振ります。
●友人Cの経歴と冒険に出た理由
経歴A[異種族の街で育った]
経歴B[知り合いに生き返った人がいる]
経歴C[ガキ大将だった]
冒険に出た理由[まだ見ぬ世界を見るため]
友人C:異種族の街……自分が人間だから、人間以外の種族が多い街で育ったと。そしてガキ大将……地獄みたいな場所しか想像できない。
GM:ま、経歴は全部使う必要もないし、ピンとこなければ振り直しや任意決めも自由だからね。ただのとっかかりってことで。
友人C:はーい。とりあえず考えるよ。
友人D:じゃあ次振ってみよう。(ダイスを振る)
●友人Dの経歴と冒険に出た理由
経歴A[恥ずかしいあだ名を持っている/いた]
経歴B[大好きな食べ物がある/あった]
経歴C[守りの剣を手に持ったことがある]
冒険に出た理由[奈落を滅ぼすため]
GM:「いる/いた」とかは今あってもいいし、昔でもいいってことね。
友人D:全体的に使いにくいなー。うーん、まあ全部使わずに一~二個チョイスかな? ちょっと考えます。
友人B:それじゃあ最後は私だな。
●友人Bの経歴と冒険に出た理由
経歴A[許嫁がいる(いた)]
経歴B[告白されたことがある]
経歴C[大切な人と生き別れている]
冒険に出た理由[故郷にいられなくなって]
友人B:おい途中でリア充って言ったやつ誰だ。全然リア充じゃねえぞ。(一同笑)
友人C:すいません(笑)。許嫁に告白はリア充かと思ったら、最後にオチが。
友人D:「許嫁→告白」からの「生き別れ」はキレイなコンボだな(笑)。
友人A:起承転結だなー。
GM:さて、これらの経歴から少し設定を考えてもらって、あとは年齢・性別・名前を決めてください。外見の特徴は……ご自由にどうぞ。髪の色とか身長が高いか低いかとかわかりやすいのくらいは決めるといいかもね。
ここでシンキング&ブレイクタイム。各自飲み物を飲みながら設定を練っていく。
友人D:……うーん、やっぱりもう一回経歴振っていいですか。
GM:振り直しね。どうぞ。
●友人Dの経歴と冒険に出た理由(振り直し)
経歴A[恥ずかしいあだ名を持っている/いた]
経歴B[子供の頃に家出したことがある]
経歴C[奇妙な予言をされたことがある]
冒険に出た理由[探している人がいる]
友人D:「恥ずかしいあだ名」から逃れられないんですが。(一同笑)それと……奇妙な予言……?
GM:さっき振ったやつと組み合わせて採用したりとかしてもいいので自由に考えてね。
悩んだ友人Dも振り直したところから少し思い付いてきた様子。
——そして、各自のPCが完成した!
GM:——さて、全員キャラ作は完了かな?
一同:はーい!
友人B:バッチコーイ。
GM:それじゃあセッションを始める前に、まずは各PCの自己紹介からだ。順番は……キャラクターシートを出してくれた順でいいかな。まずは友人Aからお願いします。
●友人Aのキャラクター紹介
友人A(以降、グラウム):俺からか。えー、キャラクター名はグラウム。種族はリルドラケンで年齢三十一才、性別は男だ。元々は普通に暮らしていたんだが、強大なドラゴンに襲われて信頼できる友人たちを殺された上に自分も怪我を負ってしまった。その経験から自分の手の届く範囲の人を守れる——最強の存在になるため冒険者になったんだ。
リルドラケンは二足歩行する小型のドラゴン。強靭な鱗を持ち、翼と尻尾の生えたその姿は完全にドラゴンのそれだが、交流を好み社交的な性格も多く、この世界では人族として数えられる存在だ。ちなみに幻獣としてのドラゴンも別で存在するし、時に強大な敵として冒険者の前に立ち塞がることもある。かつてグラウムたちを襲ったドラゴンは幻獣の方のドラゴンだろう。
グラウム:技能はファイター2レベル、スカウト1レベル、エンハンサー1レベルを持っている。スカウトを取ったのは……何故かパーティ内では敏捷度が高い方になってるらしいので……。
友人D:(見えないけど多分目を逸らしながら)なんでだろうなー。(一同笑)
GM:本当は友人Dが敏捷高めを狙ってたんだけど……まあ出目の問題なので仕方ないね(笑)。
スカウトは日本語で言う「斥候」のこと。隠密行動や偵察を行う役割で、ゲーム的には何かを探したり罠などの危険を察知したり、戦闘での先制を取るのも担う重要な技能だ。
隠れたり先制を取ったりするスカウトには「敏捷度」の能力値が重要で、リルドラケンは敏捷度の基本になる【技】が低い種族なので本来はスカウト向きではないのだが、敏捷度の値を決めるダイス(2d)で最大値の12を出した上に、高めの敏捷を狙っていた友人Dの出目が振るわなかったためにこうなったようだ。
こうした思い通りにいかないのを補い合うのもTRPGの楽しさ。一方の友人Dがどうなったかは……後の自己紹介をお楽しみに。
グラウム:今で敏捷度17なので、次に成長で上がるか指輪買うかすれば敏捷度ボーナスも上がるからそこは楽しみ。
各能力値では値を6で割った「能力値ボーナス」という数値も出している。主にゲーム中でダイスの合計値に足す値には「能力値」ではなく「能力値ボーナス」の値が使われる。ここでは17ではボーナスが2のところから、18になればボーナスが3になる。そのため、能力値が6の倍数になるかならないかは非常に重要なのだ。
友人B:武器は何持ってる?
グラウム:武器はヘビーメイス。命中力が低いから当たりやすい武器を選んだ。性能としては、金属鎧に種族特徴の[鱗の皮膚]、エンハンサーの【ビートルスキン】と基本的にはガッチガチに硬い性能。『受けて殺す』というキャラだな。——以上だ。
GM:OK。ではそんなグラウムと一緒に旅をする人……続いては友人B、自己紹介をお願いします。
●友人Bのキャラクター紹介
友人B(以降、アメリア):はいはい。キャラクター名はアメリア・ユニウス。十八才の女性で、種族はエルフ。技能はフェアリーテイマー2レベル、レンジャー1レベル、フェンサー1レベル。
GM:魔法使い系女子か。
フェアリーテイマーはラクシア(ソード・ワールドの世界の名前)の至る所に存在する妖精——自然現象とマナ(魔法の素)が干渉して生まれた存在——と契約して力を借りて魔法を行使する技能だ。六属性の妖精がいて、契約する妖精の属性によって使える魔法が変わるぞ。選び方次第で攻撃・回復・支援など色んな戦い方ができるぞ。
アメリア:えーっと、説明は以上——じゃない!(一同笑)えっと、経歴は……以前はとある場所にあるとある村……人数も少なく規模の小さい村でほっこりまったり暮らしていました。そこは女性が少ない村だったから、しょっちゅう色んな人から告白をされていたんだけど、許嫁がいたので告白されては振る生活をしていました。
友人C:ひどい(笑)。
アメリア:許嫁がいるんだから断るしかないでしょ!(笑)……ただ、ある日森の中に薬草を取りに出かけて帰ってきたら、村が謎の蛮族に滅ぼされていたの。
グラウム:なんと。
アメリア:なので帰るとこもなくなり、生きていくために仕方なく冒険者になったという形です。……だけど、村は滅んでいたけど許嫁の人はきっと生きていると心の中で信じてもいます。その姿も探しながら冒険者をしている、というところ。
GM:なるほど、了解です。呼び名はアメリアでいいのかな?
アメリア:いいわよ。
GM:アメリーとかじゃなくて大丈夫?
アメリア:その呼び方をしていいのはあの人だけよ。(一同笑)
友人C:誰だよ(笑)。
GM:意味深だな(笑)。では続いて友人C。
●友人Cのキャラクター紹介
友人C(以降、クリム):あ、はーい。えっと、プレイヤー名はクリムで——。
GM:(遮って)ちょっ、「プレイヤー名がクリム」っていきなりリアルの方で改名しないでくれ。(一同爆笑)
クリム:はっ、転生してしまった(笑)。気を取り直して……キャラクター名がクリム。種族は人間で年齢十五才、性別は男。プロフィール的には——ヴァールの街で育ったんだけど、住んでいる場所はリカントの人が多く住む地区だったこともあってリカント語をそこそこ話せるようになってる。あ、ゲーム的にはセージ技能で取得してます。(一同笑)
PCが会話したり読み書きしたりできる言語は、ラクシア全土で通じる「交易共通語」以外は基本的に種族によって決まります。人間の場合は「(任意の)地方語」という現実でいうと方言もしくは外国語に相当する言語を取得できますが、当然リカント語は別。
そんな中、セージ技能はレベルが上がるたびに好きな言語の「会話」か「読文」を取得できます。なのでクリムはセージ技能を取得してリカント語の「会話」を取得した、ということ。
クリム:近所に「風と雨の女神フルシル」を信仰する教会があって、小さい頃はその中の学校のような場所で他の子供たちと一緒に勉強をしていた。ただ、他の子とよくケンカもしていてその時は頭を使ったずる賢さでケンカに勝ってきたんだ。それでガキ大将のような立ち位置も得てたんだけど……流石に悪さをし過ぎて大人の神官たちから「お前はもう少し更生しなさい」と特別な神官教育を受けることになってしまった。(一同笑)
アメリア:悪ガキ(笑)。
クリム:結局そのまま神官になって……成人したところでお師さんでもある教会の神父から「お前も成人したんだから他の街に行って巡礼をしてきなさい」と言われて旅に出ることに。遠くまで旅をするため冒険者という肩書きを得て、生活しながら今に至る、というところだね。
グラウム:巡礼の旅か。
クリム:能力値的には知力が21と高くて知力ボーナスが3ある。技能はプリースト(フルシル)2レベルとセージ1レベルを取得。魔物知識判定はそれなりに働けるはず。それ以外はできません。(一同笑)
友人D:プリースト! 回復して!(笑)
クリム:(笑)まだレベルが低くて攻撃は全くできないので、回復と魔物知識判定でがんばる。……あ、そよ風を吹かせることができるよ。フルシルの特殊神聖魔法【ウィンド・サーキュレイション】。
GM:絶妙な魔法だな……(笑)。役に立つことを祈るよ。——では最後は友人D。
●友人Dのキャラクター紹介
友人D(以降、アザレア):はいよ。まず……名前はアザレア。ナイトメアの女性で、年齢は……(ダイスを振る)じゃあ二十一才。
GM:「じゃあ」って(笑)。
アザレア:決めるの忘れてたの(笑)。あ、人間生まれのナイトメアです。言語の関係でドワーフ生まれと悩んだけど……やっぱり弱点重視で人間生まれに。
ナイトメアは人間、エルフ、ドワーフ、リルドラケンの親から生まれてくる突然変異の種族。どの生まれでも見た目は大柄な人間のようですが、生まれた時から魂に〝穢れ〟を持ち、その証に体に角や痣を持ちます。この魂の〝穢れ〟は人族社会では強く忌避されていて、差別を受けることも。一方で〝穢れ〟の影響か優れた能力を持つことが多く、冒険者たちには歓迎される存在でもあります。ちなみに老衰で死んだ記録が無く、最大寿命が未だ不明でもあるとか。
ナイトメアは生まれに応じて特定属性のダメージが増える[弱点]の種族特徴を持ちます。アザレアが言っているのはこのことで、ドワーフ生まれだと比較的登場しやすい炎属性が弱点になるので、登場率の低い土属性が弱点になる人間生まれを選んだと。
アザレア:経歴は……まだふんわりしてるけど……。
GM:ふんわりとで大丈夫よ。なんとなくで。
アザレア:[奇妙な予言をされたことがある]というのが出たのは……過去に「キミはいずれナイトメアの〝穢れ〟を克服することができるだろう」とかいうよくわからない予言をされたことがある、ということで。
GM:ほほう?
アザレア:「そんなうまい話があるわけないだろ」と表向きは思ってるんだけど、ナイトメアの身で寿命の心配も無いから「何かちょっとした手がかりでも得られないかな……」とふわふわ考えつつ冒険者をやっている。……それくらいかな?
GM:ほいほい。いいんじゃないでしょうか。
アザレア:データ面ではファイター2レベルとスカウト1レベル。装備はヘビーアックスとラウンドシールド、防具にハードレザーを着た普通の戦士タイプね。戦闘特技は《防具習熟A:非金属鎧》。敏捷度が残念なことになっちゃったけど、お金が無いので金属鎧は諦めた。(一同笑)アイテムは持てる範囲で救命草を2個買ってある。以上かな?
GM:了解です。……しかし、「アザレア」と「アメリア」って似てるから呼び間違えそうな気がしてならない。
アザレア:こっちは花の苗のカタログで目に入った名前から取ったけど、まさか響きが似ることになるとは思わなかったよ(笑)。
アメリア:そんなGMが名前を間違えるなんてことするわけないわよねー?(一同笑)
GM:プレッシャーが(笑)。——それでは、グラウム、アメリア、クリム、アザレアの四人パーティの旅の始まりだ!
——PCデータまとめ——
◆グラウム 冒険者レベル2
種族:リルドラケン
年齢/性別:三十一才/男性
HP/MP:34/13
技能:ファイター 2レベル、スカウト 1レベル、エンハンサー 1レベル
戦闘特技:《全力攻撃1》
取得練技:【ビートルスキン】
装備:ヘビーメイス、ラウンドシールド、スプリントアーマー
言語:交易共通語(会話/読文)、ドラゴン語(会話)
◆アメリア・ユニウス 冒険者レベル2
種族:エルフ
年齢/性別:十八才/女性
HP/MP:20/27
技能:フェアリーテイマー 2レベル、レンジャー 1レベル、フェンサー 1レベル
戦闘特技:《ターゲッティング》
装備:ナイフ、バックラー、クロースアーマー
言語:交易共通語(会話/読文)、エルフ語(会話/読文)、妖精語(会話)
◆クリム 冒険者レベル2
種族:人間
年齢/性別:十五才/男性
HP/MP:21/22
技能:プリースト(フルシル) 2レベル、セージ 1レベル
戦闘特技:《魔法拡大/距離》
装備:ナイフ、ハードレザー、聖印
言語:交易共通語(会話/読文)、地方語[ブルライト語](会話/読文)、リカント語(会話)
◆アザレア 冒険者レベル2
種族:ナイトメア(人間生まれ)
年齢/性別:二十一才/女性
HP/MP:26/15
技能:ファイター 2レベル、スカウト 1レベル
戦闘特技:《防具習熟A:非金属鎧》
装備:ヘビーアックス、ラウンドシールド、ハードレザー
言語:交易共通語(会話/読文)、地方語[ブルライト語](会話/読文)
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