タイムカプセル

燈 歩

1.

「なんだろう?」


 ツツジの陰に隠れようと思ったら発見した。黒い羽根。そうっと白い付け根の部分をつかんでみる。つかんだところはかたくて白い色が強い。先の方に行くにつれて細くなっていくし、白い色から透明な色になっていく。


 先の方はシュッとしたしっかりとした線がたくさんある。指でさわってみると、サラサラしてくすぐったい感じがする。でもぼくの指を通ったあとは、ちゃんと元の形に戻っていく。


 きっと、カラスの羽根だ。初めて見たけれど、黒い色をしている鳥なんてカラスに決まっている。


 羽根をお日様に向けてよく見てみると、キラキラして透き通っていて、とても軽い。鳥はみんなこんなに大きな羽根がたくさんあるから空が飛べるんだな。


 ぼくもこの羽根がたくさんあったら、空をすいすい飛ぶことができるのかな。


「タケシくん、みーつけた!」


 リョウタくんの大きな声がして、しまった、と思った。


 かくれんぼで遊んでいたんだっけ。リョウタくんの方を見てみると、シュンくんもユウキくんもいない。ぼくが一番に見つかってしまったんだ。


「そ、そんなことより、これ見てよ!」


 ぼくはちょっとだけ自慢げにリョウタくんに言った。


「わあ! 羽根だ、カラスの羽根だ!」


 近づいてきたリョウタくんがあんまり大きな声で言うもんだから、さくらの木の陰からはシュンくんが、水飲み場の向こうからはユウキくんがひょっこり顔を出した。


「タケシくん、すごいね! どこで見つけたの?」


 リョウタくんがウキウキしてぼくに聞いてくる。


「ここに隠れようと思ったら見つけて、かくれんぼなんかしてる場合じゃなかったんだ」


「ずるいぞ」


 シュンくんがやってきて、ぼくの話に途中から入ってきた。


「ここは、オレが先に隠れようと思っていたんだから、オレの羽根だ」


 そう言って、ぼくのカラスの羽根を横取りしようとする。


「違うよ。ぼくが見つけたんだから、ぼくの羽根だよ」


 取られないように、背中に隠す。


「そうだよ、シュンは真っ先にあの木の陰に走っていったじゃないか」


 ユウキくんもやって来て、ぼくを助けてくれた。そうだ、これはぼくが最初に見つけたんだからぼくのものだ。


「じゃあじゃんけんで決めようぜ。それならいいでしょ」


「だめだってば。ぼくが見つけたんだから、ぼくのだよ」


 背中に隠したカラスの羽根をぎゅっと握った。羽根の白くてかたいところが、手の平に食い込みそうだった。


「ねえ、ちょっとだけでいいから見せてよ」


「見るだけだよ」


 リョウタくんがそう言うから、ぼくはカラスの羽根をしっかり握ったまま、みんなに見せた。


「わあ、かっこういいね」


「カラスの羽根って初めて見た」


「ずるい、タケシだけこんなの見つけてずるい」


「見るだけ、見るだけだよ」


 ぼくは気持ちが良かった。みんながうらやましがるものを持っているから。リョウタくんは楽しそうにしているし、真面目なユウキくんも楽しそうにしている。シュンくんは悔しがっている。


「これをぼくのたからものにする」


「わあ、いいなぁ」


 帰ったら、たからものの中にこの羽根を入れよう。絶対にかっこういい、ぼくだけのたからもの。ミキにもポチにも貸してなんかあげない。大事にしまっておかなくちゃ。

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