第2話

「ワレ、ホンマに凄いの付いとるで。」

 コテコテの関西弁を喋るババアにそう告げられた。

 なんでこんなババアと2人で向かい合っているのか。それは悪夢にうなされて占い師に相談したのが原因だ。出向いた占い館では手に負えない、と断られて、次に向かった寺でも断られ、胡散臭い霊媒師には邪険にされるもこのババアを紹介してくれた。

「とりあえず、こいつを飲むんや。」

 ババアはペットボトルに入った焦げ茶色の液体をコップに注ぐ。

「何なんですか、これ。」

「ガーナの霊酒でアドンコっちゅう酒や。まぁ、一息に飲んでみい。」

 言われるがままイッキ飲みした。

「強!度数いくつだよ!」

 思わず口に出る。

「40度や。」

 クソババア。これで解決しなかったら覚えていろよ。一気飲みして良い度数じゃねえ。

「これでひとまずは大丈夫や。今日は帰って寝え。」

「わかりました。ありがとうございました。」

 俺はババアに別れを告げて逃げ出した。関わってられねえ。

「For relaxing times, make it Adonko Bitters time.」

 後ろで何か唱えていたが、無視だ。

 その日は悪夢にうなされる事も無く、ぐっすりと眠れた。ただし、枕もとには短い骨が置かれていた。


「ババア!!てめぇ解決してねえじゃねえか!!」

 翌日、約束通りババアとまた会った。枕もとに置かれた骨を取り出して机の上に差し出した。

「解決するとは一言も言っとらん。そんでも、よく眠れたやろ。」

「それは…その通りです…」

「その骨ちょっと貸してみい。」

 ババアは骨を手にとって観察している。手の平でもて遊び空のコップに骨を入れた。

「そんな悪い物ではあれへん。そんでも一様、徐霊しとくわ。」

 そう言うと、またアドンコを取り出してコップに注いだ。

「また飲めと言うんじゃないでしょうね。」

 俺は恐る恐る尋ねた。あんな物を飲みたくはない。

「あぁ、それは名案やわ。いっちょ飲んでみい。」

「それは無理。」

「良いから、グイッといっちゃってぇ。」

 楽しんでいるのか、このババア。なら付き合ってやんよ。俺は一気に飲みほした。 「おお!威勢が良いな、あんちゃん。これで血染めの日章旗に対抗できるやもしれん。」

「血染めの日章旗?なんだよ、それ。」

「時が来れば嫌でもわかる。ほな、帰れ。」

 クソババアが!俺は苛立ちながら帰路についた。

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