異能少年たちの裏世界戦闘記録
カマリナ
第1話 10年前の悪夢
夕暮れ色のように広がる光景に言葉を失う。
だけど時間は午後9時で、電灯が全く無い真っ暗な森の中。
そんな状況で佇む6才の少年少女。
少年の名前は雄介、少女は加奈。
二人はさっきまで家の中にいたのだが、今目の前で起きている衝撃的な現実を目の辺りにして戸惑っているのだから。
珍しく夜遅く生徒と保護者達は学校に呼び出され、普段はもう寝る時間に我慢して森の中を歩く。
なんでこんな時間にと思うかもしれないが、それは少年達が住む田舎の村にテレビで震度8以上の地震が来ると速報されたのだ。
すぐ近くに海があり、浸水を避けるため山の頂上になっている小学校へ緊急移動が行われた。
速報通りに地震が来て、村の大半は水没してしまった。
だけどそれだけで被害が収まらなかったのだ。
倉庫の近くのポリタンク、満タンに容れられたガソリン。
それの蓋がしまっておらず倒れ溢れ出て、三メートル先のガス管まで流れ出る。
家庭科室でガス管の近くにあったコンロが落ちて引火、そのまま激しい轟音とともに一気に炎が燃え上がる。
避難していた人の9割以上は学校内にいた。
あとはもう想像がつくだろう。
炎は学校内にいる人間達を囲うように燃え広がったのだ。
つまり少年少女が見た光景は夕焼けの景色ではなく学校が燃えているところだった。
友人と一緒に通った学舎は徐々に形を変え、廃屋になっていき、その友人達はもがき苦しみながら全身火だるまとなって見るに耐えない状況だ。
雄介と加奈の二人は学校で育てていたキュウリの鉢植えを見に行ったため、たまたま助かり、体は無傷でいるがそれでも心に大きな傷を受けてしまう。
それも当然だろう、学校内にいた全員は何故か外に出ようとしなかったのだから。
呆然としている二人、だけどそんな二人を追いつめるかのように学校の炎は森の方に引火し始めたのだ。
風で燃えた廃材の一部が飛び、学校全体を包み込むように燃え始めるのも時間の問題だった。
二人もこのままだと炎に身を焼かれてしまうだろう。
それを見ていた人間はいないが、何故かこの二人だけは10年たった今でも生き残っている。
この記憶は2人の頭には鮮明におぼえているのだが、ここからどうやって助かったのか、それは全く覚えていないのだ。
テレビで大きく取り上げられて、大人、子供あわせて193人の死亡者を出した大災害、
それからはテレビの報道で生存した2人を取り上げられそうになったが、叔母の活躍により10年近く平凡の高校生活を送ることができた。
だけどこの事故が雄介と加奈の2人にとって10年後の悲惨な生活の始まりだとは知るよしもなかった。
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