第27話 生徒会演説回 前編
「…とりあえず、先輩方は帰ってくれませんか?」
申し訳なさそうにライトが言う。
「…チッ、後悔しても知らねえからな?」
ぺっと唾を吐きながらジョンたちは去って行った。
「相変わらず人気だねぇエレンちゃん。ライトも心の中穏やかじゃないでしょ」
「…そういえばシオンも生徒会に立候補したらしいじゃないか。補佐官は誰なんだ?」
「あ、露骨な話題変え。まぁ良いけど。
ラインとレインよ。」
シオンの言葉にギョッとするライト。
「マジか!お前らなの!?大丈夫!?」
「「お前マジで最近酷いな!?!?」」
「ジョークジョーク。でも意外だな、シオンはそういうことには興味ないと思ってたんだが。」
「…私も前向いていかなきゃって思ったからね。自分を少し変えたいんだよね。」
悲しそうに微笑むシオン。
「…そうか。」
この前の一件で人生のあり方を変えた人はライトやエレンだけではない。
関わった全ての人間が変わったと言っても過言ではないだろう。
「とりあえずもうすぐ昼休み終わるし、教室に戻ろっか!」
シオンの声に促され、校舎内へと歩いていくライトたちだった。
放課後、ライトとエレンは選抜練習が終わり、帰路についていた。
「エレン。」
「何?」
「お前、明日の演説回で何するつもりだ?」
ライトがエレンに尋ねる。
「ものすごく嫌な予感がして俺不安なんだが。むしろ嫌な予感しかしないんだが?」
「あら安心しなさい。変なことはやらないから。」
「お前の『変なこと』がどこまでか分からないから不安なんだよ。ていうか俺明日の補佐官の演説なんて言えば良いの?公約とかなんかないの?」
「あら、公約ね。強いて言うならライトと私は結婚しますみたいな感じで。他は私とのイチャイチャを話してくれれば良いわ。」
「お前は俺を死なせたいの?」
絶世の美少女でスタイルも良く、学年男女問わず人気のエレンとの日々の学校生活で、かなりライトは恨まれている。そんな中、その内容を演説したら夜道に刺されかねない。いや、間違いなく刺されるだろう。
「…とりあえずお前の良いところ言うから、あとは任せたぞ。…頼むから変なことだけはするなよ?」
「はいはい。じゃあまた明日ね。」
(絶対分かってねぇな。コイツ。)
いつの間にか王門まで着いていたらしい。
手を軽く振ってエレンが城の中へと入っていく。彼女の胸の青い月が煌めいた。
ライトはため息を吐いて踵を返し、自宅へと向かう。
(とりあえず、アイツがやりそうなことを考えよう。未然に防いでやる。)
エレンがやることはまず間違いなく自分に関わることだろう。平穏な学園生活を送るためにはこれ以上好き勝手にさせるわけにはいかない。
エレンに付き纏われてる…もとい、一緒にいるので、既にライトの学園生活には平穏の「へ」の字もあるか分からないが…。
「1番考えられるのは公前で公開プロポーズだよな。」
そんなことされたら間違いなく学園生活は終わる。
「いや、違う…。そうか!プロポーズさせるんだ!!」
エレンの話術ならライトがプロポーズしなければならない状況を作ることは容易だろう。加えて、エレンはあぁ見えて乙女だ。プロポーズは男のライトからやって貰いたいと考えるのが普通だろう。
「…となると指輪か…。おそらく事前に否応無しに渡されるんだな。」
使う資料があるから〜とか言って自分に指輪の入ったケースを渡す気か!!
そうすれば全ての事がエレンの思い通りに働く!!!
「絶対阻止してやる…。」
そう決意したライトだった。
翌日。
今日は講堂で生徒会選挙(立候補者及び補佐官演説)があるので、午前の授業はない。
数百人の生徒が全員講堂に入っているので、少し蒸し暑い感じとガヤガヤとした声が聞こえて来る。
生徒会選挙演説は学年が下の者から順に行われる。
なんとエレンはトップバッターだった。
しかも、それはエレンが希望したらしい。
「怪しすぎるだろ…。本当に。」
トップバッターは誰もが避けたいものだろう。まぁ、エレンは生徒会に入りたくないと言っていたので緊張感はおそらく無いのでとっととやってしまいたいと言うことなのだろう。
とりあえず何かエレンに動かれる前に先に講堂まで行ってしまおう。
そう思って講堂へと向かい、廊下を走るライト。
「おい、平民。」
突然ぶっきらぼうに呼ばれ、立ち止まる。
声のした方を見ると、ジョンが居た。
周りには取り巻き数人も居る。
全員揃ってニヤニヤとこちらを見ていた。
「何か用ですか?俺これから講堂に向かわなきゃいけないんですが?」
ライトはとりあえずの返事をする。
「ハッ…、良いんだよそんなん。それよりお前に話がある。」
「…何ですか?」
「エレンを俺に寄越せ。」
「は?」
「は?じゃねえよ。アイツの顔や身体は俺様に相応しいって言ってんだよ。」
(身体目当てかよ、屑が。)
ギリッと奥歯を噛むライト。
「ハッそんなに睨むなよ。タダってわけじゃないぜ?金なら払うし、時々俺とエレンの情事を見させてやってもいいぜ?」
ライトのこめかみに青筋が浮かび上がる。
我慢の限界も近い。
「悪い話じゃないだろ?なら、そうだな。テメェが一生俺様の奴隷になるなら、コイツらの後にエレンを一回抱かせてやるよ。ま、
ジョンにつられてゲラゲラと笑う周囲だったが——
「
「は?」
ライトの言葉に場が静まる。
「テメェ何言って……ひっ!!」
ジョンがライトの胸ぐらを掴もうとするも、ライトの表情を見て軽く悲鳴をあげた。
殺気に満ち溢れた黒い目をしたライトが淡々と告げる。
「二度と俺の
ライトはそう言い放つと講堂へと歩いて行く。
残された者たちはただ唖然としていた。
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