第24話 日光に隠された想い

エレン視点


「…ん…」


あれ?ここ…


暖かい温もりに包まれながら私の目は覚めた


スゥスゥという息遣いと共に、目の前にあるのは想い人の顔。


あぁ…そっか。死んだんだ。私。


てっきり地獄に落ちるとばかり思っていた。

けれど、私は今大好きな人に抱きしめられている。

ライトと2人きり。ここがたとえ地獄だろうと、私にとっては天国だ。


「んっ。」


彼を起こさないようにちょっとだけ動いて彼の唇に軽くキスをする。


あぁ…幸せだなぁ。


幸福感が私の体を包みこむ。


「死んで良かった…。」


「死んでねぇよ、アホ。」


「ひゃう!!」


いきなり聞こえた声にびっくりして変な声が出てしまった。


「え?死んでないって…?」


あの時、私は確かに窓から落ちたのだ。

途中で気絶してしまったけど…


「俺が助けたに決まってるだろ…。本っっっっ当に人騒がせな奴だな…。」


呆れたような顔で言われた。


あぁ…。そっか。助けてくれたんだ。

彼は優しいから…。大嫌いな女でも助けちゃったんだろうな。迷惑かけちゃった。


「…ごめんね。死ななくて。」


バチン!!!!


私の頬に衝撃が走る。彼にビンタされた。


「馬鹿野郎っ!!何が死ななくてだ!?ふざけてるのか!?」


すごく怒ってる。私の目からは涙が溢れる。


「だって…だって…!!」


「お前が死んだら、マリー様はどうなる?国王様はどうなる?…お前の友達はどうなる?」


「っ……!!」


言葉をつまらせる。


何も言えなかった。

そうだ…なんで私はお母様たちのことを考えなかったのだろう。


本当に…自分勝手。


「分かったなら、とっとといつも通り生活しろ。それとお前の体、すごく軽かったぞ?ちゃんとメシ食え。」


「うん…。」


あぁ…辛いなぁ…。本当に自分が嫌になる。


「…学園に通ったら…ライトも普通に接してくれる…?」


「…あぁ。だけど、今のお前では無理だな。ちゃんとマリー様たちに謝れ。」


友達で居てくれるんだ…。

優しいな、やっぱり。


大好き。


「ねぇ…これで、これで最後にするわ。

一言だけ、伝えさせて。そして、忘れて。」


「…あぁ。」


深呼吸をする。あぁ…怖いな。

けど、言わなくちゃ。


「ライト=ファーベル様。私エレン=ルイ=ファマイルは、貴方のことを愛しています。」


ここで終わらせるために。

区切りをつけるために。


私の最初で…最後の…恋を。



ライト視点


「…愛しています。」


綺麗な青い瞳に涙を浮かべながらエレンは俺に言った。


やっぱり本当に最低だな。俺も。


目の前にいるのは普通の女の子。

こんな子を傷つけて、自殺未遂までさせた。


もし、あの時俺がエレンの立場だったら、

耐えられていただろうか?


毎日ストレスを感じる生活を送り、たった1人の理解者である自分の母親が苦しんでいるのを、ただ見ているだけだったのか。


不安だったのだろう。どうして、本当に年の最後まで生きていられると言えるのか。

明日には息を引き取ってしまって、自分は独りぼっちになるかもしれない。


だから、俺たちを頼った。


結果的に言えば、早かったかもしれない。

けれど、1日遅れれば、王妃様は死んでしまったかもしれない。


それなのに…目の前の少女は、何も言い訳一つせずに、己の行いのみを悔いている。


どうして、俺たちがエレンを責められるのか


…どうして、俺はこんなにも、エレンのことを気になるのか、心配なのか、


沈黙が場を支配する。


カーテンの隙間から漏れた朝日が俺たちを包み込み、エレンの胸元で青く月が光る。

幻想的なまでに綺麗だった。


俺が紡がなきゃならない言葉がある。


これからのために。これまでのために。


例え、この関係に終止符を打つことになったとしても——


「俺は…、ライトは—————」


雲が太陽を遮り、部屋が暗くなる。


静寂が部屋を包み込む中、

少女の小さな嗚咽が響き渡っていた——






翌日からエレンは学園に来る様になり、

学園の日常は徐々に戻って行った。


「おはよう、ライト。」


校門前でエレンとライトが出会う。


「あぁ、おはよう。」


ライトとエレンの関係も表面上はいつも通りだ。

例え、お互いの表情に『仮面』をつけていたとしても。


2人は太陽に優しく照らされながら、並んで校舎へと歩き出す。


彼らの新しい関係は…


ここから始まったのだ。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

作者後書き


この回に納得いってない方は多いかもしれません。


作者としては、ここで一旦、この話は区切らせてもらおうと思います。


エレンとライトのこの話の詳細は

2章終了くらいに書く予定です。


(おそらく、読んでくださってる方々の中には、前回の本文に書いてしまっているので、前回のタイトルと照らし合わせて、分かってしまっている人も多いかと思いますが…。)


質問の返答の詳細(?)は近況ノートに書いておいたので見てくださると嬉しいです!


拙い文章力ですが、

これからも応援よろしくお願いします!

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