第15話 強き者たち

「ライト?どうしたの、そんなに怖い顔して。」


目の前を歩くライトの顔を覗き、エレンが心配そうに尋ねる。


「…さっきのアランって奴、ただ者じゃなかった。」


「へ〜。強者の勘ってやつかしら?」


「…勘だけじゃない。俺がキングだって言ってただろ?」


「…それは別に見れば普通に分かるんじゃない?雰囲気とかで。」


「いや、いくら身体能力が高かろうが、普通見ただけで分かるものじゃない。それに今の俺はお前に比べて魔力量が少ない。あの場なら確実にお前をクイーンだと思うだろう。」


ハッとするエレン。


「…あの一瞬でこちらの力量を判断し、俺を『キング』だって言ったんだ。正直、楽に勝てる相手じゃない。」


押し黙る2人。


正直、ライトは相手を甘く見ていた。

例え魔術が使えなかろうと、左程問題ではない…と。

だが、ロイドの言っていたことはおそらく事実だろう。

あの時、目の前に居たのは紛れもない強者。油断すれば容易に首を切られる、そんな予感。


己の未熟さを再度噛み締めたライトだった。


「あ!いたいた!エレンちゃんたち!何やってんのほんとに!」


シオンたち3人が走ってくる。


「…とりあえず、3人に、特にシオンには話した方が良いだろうな。おそらく、あの場にいた3人と闘うことになるからな。」


そう言うとライトとエレンは3人に駆け寄っていった。




一方、ライト達が去った後の部屋で—


「アラン、貴方が興味を持つなんて珍しいですね。」


「そうだな。あのライトっていう奴、それほどの奴なのか?」


書類を整理しながらエリスとカズが尋ねる。


「…あぁ。凄まじい身体能力の持ち主だった。」


「そうなのか?俺よりもガタイは小さかったが…」


「それだけじゃない。あの身のこなし、油断も隙もない。奇襲なんて通用しないだろう」


「あの露出狂が?信じられませんね。私としてはエレンさんの方が気になりましたけど」


「彼女も凄いよ。おそらく、君たちと同程度の実力だろう。…でも、彼は次元が違う。全力の君たちが2人がかりで戦っても1分、下手すれば30秒ももたないだろうね。」


クスリと笑いながらアランが答える。


「まさか…信じ難いですけど…」


エリスが青ざめて俯く。


「…ぶっちゃけお前とならどうなんだ?アラン。お前が勝てない相手か?」


「さあね。けど、今までみたいに手加減して勝てる相手じゃないことは確かだよ。全力を出してようやく五分五分でところかな?」


「やるのか?を。」


「使わないに越したことは無いけど、そこまで甘い相手じゃ無いと思う。もしかしたら、それすら通用しないかもしれない。だから、君たちは他の2人を倒して、僕とライトとの決闘を手伝って欲しい。最悪、僕が相打ちに持ち込むから。」


アランの言葉に絶句する2人。

一方彼は、楽しそうな表情をしていた。


「フフフ…楽しみだよ。ライト=ルイ=ファマイル。」


ライトの実力は理解していたが、

ライトにとって大事なところを盛大に勘違いしていたアランだった。







学園祭からの帰り道、馬車の中で話し合う5人


「…なるほどね。アランと接触したんだ。」


「…シオン、貴女アランと戦ったことないの?去年出てない?」


「うん、めんどくさくてね。ウチとしてはそれどころじゃなかったし」


曖昧に笑うシオン。


「ライトにそれだけ言わせるってことはほんとに只者じゃないんだろうな。」

「俺たちには想像もつかないぜ。」


ラインとレインも苦しい表情をしている。


「…とりあえず俺がアランと闘う。残り2人を頼みたい。」


「い〜よ〜。ていうか元々そのつもりだし。ライトに勝てない相手に、ウチらがまともにやり合える訳ないしね。」


「悔しいけど同感ね。その代わり、必ず私に勝利とプロポーズをしなさい。」


「あぁ、ありがとう。プロポーズはしないけどな。」


「あ!俺、帰りにまたニーナさん達の店寄りたい!!」

「お!そうだったな!俺もまた食べたい!」


ラインとレインの提案に頷き合う5人。




彼らを乗せた馬車は王国へと走る。




過去の『事実』と、現実の『虚偽』の物語が始まろうとしていた。

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