彼女と私
バブみ道日丿宮組
お題:ワイルドなヒロイン 制限時間:15分
彼女と私
「はっ、はっ、はっ、はっ!」
毎朝聞こえる声がある。
部屋の窓をあけて、庭を見下ろしてみれば、竹刀を振る彼女の姿があった。
「おはよう」
すぐに彼女はこっちに気づいた。
「おはよう。毎日飽きないね」
「日課だからね。ねぇ一緒にやらない?」
「私には才能ないから、やっても無駄だと思う」
彼女には剣道の素質があった。
「竹刀振るのに才能もなにもないよ」
そりゃそうだ。バッドを振り回すのとそれは大差ないこと。
けれど、それらには意味がある。
竹刀を振るのは、剣道という目標がある。
でも、なにもない人間にとってそれは意味のないこと。
私には無意味でも、彼女には意味がある。
それがわかってるからか、
「そう。気持ちいいんだけどね。ジョギングには付き合ってくれるんでしょ?」
「うん、それはする。着替えるから待ってて」
了承の声を聞いて、窓を閉めて寝間着からジャージに着替える。
姿見に写る自分は、とても小さい。
長身の父親と、巨乳の母親。そんな2人からこんなミニサイズの子どもが生まれるなんて、とても怪奇なこと。
幸いなことに筋肉は良質なものをもらえて、運動部に引けを取らない身体を作ることができた。
それでも彼女みたいに男子に勝てるものは持ってない。
「待った?」
「相変わらず着替えに時間かけるんだね」
笑う彼女には棘はない。
「ジャージ姿でも見られれば、見られるからね。きちんとしておきたい」
上から下まで眺める彼女。
言いたいことはわかってる。
どこが変わって、どこに注目を浴びせようというのかと。
「まっいっか。じゃぁ行こうか。今日は隣駅まで行くからね」
彼女はそういったことを口にしない。
誰もが噂する、イキったチビ助と彼女は思わない。
だからこそ、幼馴染として一緒に過ごせてる。
「時間大丈夫?」
「あたしとあなたなら、二駅ぐらいは大丈夫だと思うな」
彼女だけは評価してくれる。
私はそれだけでもいいと思った。
例え、親が彼女を嫌ってても、私だけは彼女を好きでいればいい。
「わかった。じゃぁいこう」
そんな関係をいつまでも持てればいいなと、私は静かに走り始めた。
彼女と私 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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