死神とわたし
バブみ道日丿宮組
お題:残念な何でも屋 制限時間:15分
死神とわたし
地獄に呼ばれたのは、これで何度目になるだろうか。
「君も学習しないね? まぁ、僕としては話し相手ができるからいいよ」
黒い翼を生やしたイケメンの死神が手招きする。
その指示に従い、彼の直ぐ側の瓦礫に腰を下ろす。
「今回は信者を殺したらしいね?」
「そう。神様を信じ過ぎた彼らを救ったーー」
一呼吸
「ーーそういう依頼だったからね」
私はなんでも屋。
窃盗、強盗、殺人、犬の散歩、賄賂、スパイ、いろんなことをしてきた。
そのおかげもあって、命を落とすことが多い。
もっともなんでも屋の中で、何度も蘇るのは私ぐらいだろう。
「神様も酷いことをするものだよね。いいことをするまで死ねないなんてさ」
「私はいいことしてると思うんだけど」
願いを叶えてるのだ、悪いことじゃない。誰もが満足そうに報酬を渡してくる。それは確かなことで、少なくとも1人は満足を得てる。
「その反動が一瞬の地獄行きを招いてるってわかってる?」
「知らない。私は依頼されたことをしてるだけ」
はぁとため息。
ため息を吐きたいのはこっちだ。
何度も、何度も、現世に戻されて、いい加減きっちりと地獄に落としてほしいものだ。
「君の評判は高いからね」
「そりゃ必ず成功させるなんでも屋だからね」
にっこり笑みを作る。
「君が本当にいいことをすれば、きっと天国にいけるよ」
「どうしてそうなる? 私は地獄でいいのに」
殺風景な場所だけど、現世より空気が良い。誰もいない孤独の世界……それが地獄の1つである。
死神である彼がいるのは更生効果を求めてというやつ。
私としては何を更生するのかよくわからないけど、現世に戻る少しの時間、彼と過ごす時間は嫌いじゃない。
「地獄がいいなんていうのは君くらいなものだよ。みんな絶望して、魂となって散ってくっていうのに」
頭をなぜか撫でられた。
「僕からも仕事をお願いしてもいいかな?」
「死神が私に仕事? さすがに私でもできないことあるよ」
空想の産物でしかないような存在相手に何ができるだろうか。
「現世にいる仲間を排除してほしいんだ」
「……それって殺してほしいってこと?」
「そう。実績をあげれないやつだけが現世に居続けるのは腹ただしいことだからね」
なにもない空間に手を彼はあげると、そこから紙を取り出した。
「これが一覧」
「覚えろって?」
「大丈夫、脳に直接入れるから」
そういって、彼は紙ごと頭を撫でた。
「すごい。覚えてる」
「じゃぁ、お願いね」
うっすらと世界がほころんでゆく。
それがこの世界の終わりであり、はじまりでもある。
死神とわたし バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます