遺言
バブみ道日丿宮組
お題:小説家たちの怒り 制限時間:15分
遺言
これを読んでるということは、あなたは失敗をしたのでしょう。
どうですか? 世界を敵に回した気分は?
わたしはとても怖かったですよ。どうして死ななきゃいけないんだと何度も叫びました。誰もわたしの声に耳をかしてもらえませんでした。
涙を流して、床に転ばされたわたしをあなたは見ていましたね。なにもしようとせず、わたしを見捨てて兵士に突き出してましたね。
生きるために必死だったのでしょう。気持ちはわからなくもありません。
ですが、わたしだったらしたいとは思いません。
わたしが作ったはずの作品はあなた名義で世界に広まってます。
いろんな人に読んでもらえるというのはとても気分がいいですが、自分の作品として出せないのはすごく悔しいことでした。
だから、わたしは国の惨状を暴露した小説を書いたのです。
それは物語だからといって許されるものではなかった。
そう、世間は判断したのでしょう。それは間違った答えでは決してないでしょう。
だから兵士はわたしの元にやってきた。
書いたという事実を武器にあなたは生贄を差し出したのです。
けれど、わたしには書くことしかできませんでした。
あなたのように世渡り上手ではないですし、あなたのように人柄がいいわけでもありません。
ただ文字を形にすることだけがわたしに唯一与えられた才能です。
こうして手紙を残せるのは奇跡にも近いです。
死刑執行人がわたしの声を聞いてくれたのです。
彼は読者でした。もちろん、わたしが書いてるは知りません。あなたのことを大分褒めてました。きっと世界はそうなのでしょう。
失敗作として出された本は偽物が書いた本。そう広まってます。あなたは少しでも不利になってはいません。
ですが、今は違いますね?
こうして読んでるということは、あなたはわたしのいた牢屋にいるでしょう。
盗作の罪は死刑。
あなたも知ってたはずです。
悪魔のようなささやきに乗ってしまったのはわたしですが、悪魔になったのもあなたです。
ですから、先に地獄で待ってます。
そこでわたしとたくさんお話しましょう。
牢屋でたくさんの小説を考えたのですから、少し長くなるかもしれませんが。
では、さようなら。
また会う日まで。
遺言 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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