墓祭り

バブみ道日丿宮組

お題:楽しい墓 制限時間:15分

墓祭り

 墓祭りという言葉を知ってるだろうか。

 無論僕も数週間前までそのテーマを知らなかった。

 はじめて訪れたとき、恐怖を感じたが一時的な状況なのだと割り切った。

 

 墓祭り、それは死者が蘇る一夜のパーティ。


 僕は幼い頃に亡くなった彼女に会うために祭りに参加してる。

 現れるのは当時の姿なのに、喋る内容は大人の会話なのでたまに違和感を覚えるが仕方のないことだ。死者は生者と違って長い間墓地にとどまる。

 その結果として、周りの熟練した死者たちにより知恵を授かる。脳がないこともあって、知恵は知識へと変わり、秀才を生む。それを利用したビジネスを考えた人は当然いる。

 だが、死者はずっと現世にいられるわけじゃない。

 墓祭りという決まった夜にだけ現れる。

 その数時間の間になにかが出来上がればいいのだが、死者は生者との会話を楽しむだけで、研究や新しい世界を求めちゃいない。

 ただ……例外もいて、生きてる間に完成できなかったものを完成しようと出版社や、上司、家族、恋人、会社を呼び出してメモを取らせることはある。

 まぁ内容が難しくてメモを取るのはほぼ不可能といわれてる。彼らの言葉は多次元過ぎてよく稀に聞き取れないものへと昇華する。それらを吸収できれば、人間の発展もあるだろうが、言葉は録音、録画に残らない。そのため言葉を解析するのは不可能。その場で理解する必要がある。

 そういうこともあって、今じゃ楽しい墓地見学としてツアーが開催されるようになった。

 それはどうしてかといえば、死者が蘇る場所は世界中でただここだけであり、その街であるからだ。

 スタジアム10個分の広さを持った庭園のような墓地は毎度のこと人で溢れかえる。

 誰しもが会いたい人に会う。それだけを楽しみに生きてここにくる。

 ただ……死者であっても、姿を見せない者もいるらしく、誰もが楽しめるというものじゃない。ちなみに僕は死んだ両親には一度も会えてない。

 会いたくないのか、会えないのか。

 理由はわからない。

 幽霊である彼女もあった記憶がないということだ。

 つまりは死んだからといって、墓祭りに現れるメンバーになるわけじゃないということ。だからこそ、死んだら会おうというやからはいない。

 生を必死に生きようと頑張ってる。

 僕はどうだろうか。生きてるといえるのだろうか。

 わからない。

 だから、今日も墓祭りにやってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

墓祭り バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る