狭い正義

バブみ道日丿宮組

お題:賢い正義 制限時間:15分

狭い正義

「……?」

 外がなにかしら騒がしかった。

 窓から覗いてみると、松明を持った男が叫んでるようだった。

「俺は放火魔だ! 火を放つぞ!」

 周りにいる人が止めようと近づいたり、離れたりをする。

「……」

 世界的に自宅待機命令が出てから、こういった奇行に走る人が増えた。

 自分だけが助かればいい、自分だけが選べればいい、自分だけが進めばいい。

 そういった思考を持ってる。まったくもって迷惑だ。いますぐ粛清でもされればいい。

「ほら、この家燃やしちゃうぞ」

 そんな男がターゲットにしたのは、僕の家だった。

 大きさ的に大きい屋敷だから注目されたのか?

「……ん」

 さすがに燃やされるのはとても困る。

 家からかれこれ5年は出ていないのを、強制的に出すというのはよろしくない。

「ーーお嬢様どうしましたか?」

「バケツに水入れてきて」

 待機してたメイドが頷き、部屋から退出した。

 その間も男は松明を振り回し、人の迷惑を作り続ける。

 学生の男、スーツ姿の女、おばあちゃん、犬の散歩をしてる若い人。

 対峙してるのはそんな人達。

 誰しもが止めようという正義は出てるものの、決定打になるようなことは起こってない。このまま何もしなければ、おそらく僕の家が燃やされるだろう。

「お嬢様準備ができました」

「あれ? バケツじゃないの?」

 メイドが持ってきたのは、緑色のホース。つまりは、蛇口から直接繋いだもの。

「ちょうどきらしてたようで、こちらでは駄目でしょうか?」

 駄目ということはない。

「じゃぁ回してきて」

「それは遠隔で操作できますので、ご指示をお願いいたします」

 メイドは手に持ったリモコンをこちらに見せてくる。

 今じゃ蛇口を回すのも自動なのか……知らなかった。

「強めでお願い」

 はいという言葉と同時にホースに振動を感じた。

 ホース先を窓の外に向けると、すぐに水が出てきた。

「意外に難しい?」

 水は屋敷の門にあたり、水しぶきをあげた。

 もうちょっと上にすれば、男にあたるかな?

「なにすんだよ、このやろう!」

 水は男に当たり、松明の火は消えた。

 そのタイミングで周りの人が男を抑え込んだ。もう水はいらないだろう。

「終わったみたいだから、片付けておいて」

「わかりました」

 メイドは再度スイッチを押すと、ホースをぐるぐる巻きにして部屋から持ち出した。

 数分後、やってきたパトカーに男は乗せられて、人が拡散してった。

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狭い正義 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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