バブみ道日丿宮組

お題:不本意な小説トレーニング 制限時間:15分

 夢の中で物語を作ることは不可能。

 それは記憶の断片を利用して作られるから、物語というべきものではない。

 とはいえ、夢の中で小説を書くのであれば、どうだろうか。

 それは現実に残ることはないが、なにか身についてたりしないだろうか。書くということは夢の中でも特殊なことではないだろうか。

 そう考えてみると、寝るという行為はかなり意味のあることに思える。

 例えば、試験の予習であったり、お気に入りの本の反復。記憶にあるというのであれば、これらも中に含まれる。それが可能であれば、夢というのは素晴らしき機能だ。

 だが、実際にそれが形となることは一切ないため、身についてるとは断定することはできない。

 夢は所詮夢でしかない。

 なら、本来の役目通り記憶の整理として利用するのか?

 否。

 夢の中でしか生まれない可能性というのもある。それを捨て置くというのは勿体ない。

 まぁどんなに傑作品が生まれたとして起きた瞬間にすべてが消し飛んでしまう。意識がないというのは所詮そういうことでしかないのだ。

 だからこそ、鍛える必要がある。

 覚えていられるように、楽しいが消えないように。

「起きた?」

「起きてる」

 声は端っこの方から聞こえた。

 ベッドから起き上がれば、彼女が机でパソコンのキーボードを打鍵してた。

「あなたの夢のイメージがある程度まとまった」

「読めるレベルのもの?」

 彼女が行ったことは、寝てる人からイメージを抜き取ること。

「寝言がもう少し具体的なものであればそうであったと思う」

 夢を形にするために行ったこと。

 それは夢の中の行動を口にするということ。

 これは一人ではできないし、寝言から想像力を引き出せる者ではなければならない。

「でも、面白そうなのは書けた」

「読めるレベルじゃないか」

「時間ってのがあれば、補填はいくらでもできるから」

 彼女の手招きに従い、ボクはそれを確認する。

 これを自分が見てたという実感はなかった。

 まるで知らない1つの物語がそこにはあった。

「どう?」

「わからない」

 でも、それが夢の物語であるのか、判断つかなかった。

 これは彼女のためにはじめたトレーニングであって、ボクのためのアクションではないから。

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バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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