命日

バブみ道日丿宮組

お題:男同士の弔い 制限時間:15分

命日

「もう5年も前の話か」

「そうだな。お前との付き合いも5年にもなる」

「あの会社糞だったよな。まぁ、その社長をシメた俺たちはもっと糞かもしれないが」

「それだけの悪行だった、と正当化するしかないな。あの社長がいなくなってから、会社はすっごい繁盛してる」

「俺たちもそのメンバーとして輝きたかったな」

「今の会社だって悪くないだろ。アプリランキングとしては毎回上位に入り込んでるんだからな。それにお前が作った会社だろ」

「案は全部そっちのもんだから、実質そっちの会社なような気がするが」

「それをきっちり仕上げたんだから、お前の力のおかげだよ」

「このままお互い謙遜し続けるのもいいが、ここは場所が悪いな。天国への手向けとしてはつまらない内容だ。こいつも散々聞かされて飽き飽きだろう」

「そうだな。あの社長がいなければ、こいつだって死ぬことはなかったし、全責任を取らされることもなかった。社長の馬鹿笑いも発生することもなかった。俺たちがもっと強ければ、潰されなかった」

「現実は非情だ。だから、その力に決して飲み込まれてはいけないってな」

「こいつが生きてたら、怒るかもしれないな。自分の名前を会社名にするなってさ」

「だって、しかたねぇだろ。英語にしたら、やたらかっこいい苗字してるんだから」

「違いないな。それで何度イジったかは数え切れない」

「なぁ知ってるか? 墓に酒をかけるのは禁止になったって」

「そうなのか? まぁ甘いとアリとか大変になるか、住職もそこまで仕事はできないだろうし」

「そういうわけでこいつに飲ませる酒は俺が飲む」

「ただ飲みたいだけじゃないのか? ったくいくつ買ってきたんだよ」

「缶酎ハイ15缶だけだぞ」

「だいぶ多いな」

「お前も飲むんだよ。今日はそういう日だ」

「全くお前には困ったもんだよ。今日は会社の大事な日だからと休日指定にしてさ」

「休みはあったほうがいい、必要のない仕事は取らなくていい。無理して何かを得ても充実感なんてない。余裕のある状態で表彰されるから気持ちいいんだ」

「そうかもしれないな」

「ほら、飲もうぜ」

「しかたないな。付き合うよ」

「そうこなくっちゃな! 天国のこいつにも届くくらいたくさん話そうぜ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

命日 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る