第40話 規則が凄かった

 二人は、冒険者協会に戻って来た。店の人に聞けば、お金のやり取りはカードを通してのみだと聞いたからだ。


 「あの、カードに手持ちのお金を入れるって事できますか?」

 「うん? 君達か。いくら持っているんだい?」


 ”全部入れちゃうと、何かあった時に困るだろうからまずは1枚だけ”


 金貨一枚を出すと、「ほう」っと言ってカウンターの男性は金貨を手にする。


 「ではこちらは、返済に当てますね」

 「え~!? なんで」

 「私は、手引きを読んで下さいと渡しましたよ。訪ねる前にちゃんと読みましょう」

 「「………」」

 「お金を貸す事は出来ます。Fランクは、銀貨1枚。次に借りられるのは1か月後になります。Eランクになれば、銀貨10枚。Dランク以上になれば、銀貨50枚。因みにCランクでお金を借りた場合は、Dランクに戻されます。どう致しますか? 銀貨1枚ずつ借りられますか?」


 ”何それ。支払ったのに借りないといけないの?”


 「………」

 「じゃ僕だけ借ります」

 「では、かざしてください」


 仕方がなくエストキラは、銀貨1枚を借りた。


 「あぁ、読むならそこの階段を上がって3階が、D~Fランクの休憩所になっているから使うとよい」

 「どうも……」


 二人は言われた通りトボトボと階段を上っていく。なんかやる気をそがれた感じだ。3階に着くと、驚く事にランクごとに座れる場所が決められていた。Fランクは一番奥で、誰も座っていなかった。

 それも当たり前だ。数日でEランクになるだろうから。

 Fランクと書かれたベンチに二人は並んで座る。冒険者の手引きは、一冊しかもらわなかったので、エストキラはが読む事にした。

 リナは、アルを肩に抱っこしている。


 〈してはいけない事・出来ない事〉

 〇街や休憩区で問題を起こしてはいけない。罰金が科せられます。

 〇神官、貴族、一般人からモノやお金を奪ってはいけない。また嘘をついたり傷つけてもいけない。罰金または死罪になります。

 〇冒険者マークがついた施設にあるモノを壊したり盗んだりした者は、罰金または死罪になります。

 〇用もないのに村に立ち寄ってはならない。罰金が科せられます。

 〇クエストを肩代わりしてはいけない。両者に罰金が科せられます。

 〇冒険者マークがついた施設では、お金は使えません。また持っているお金を冒険者カードに入れる事はできません。

 〇錬金術協会での買い物は禁止します。罰金が科せられ、物は没収致します。

 〇討伐号令が発動した場合、怪我や病気で動けない場合を除き、拒否できません。


 ”何これ……”


 まだまだ書いてあるが、規則が凄く、何かあれば罰金か死罪だった。


 「ごめん。リナ……」

 「え? 何?」


 最初のページを開いて見せる。みるみるリナの顔が青ざめた。

 冤罪だとしてもそれを立証できなければ、死罪もあり得る内容だ。


 ”出来るだけ、他人と関わらない方がいいかも”


 「すごく極端なのね。とりあえずは、役立つ本を買いましょう」

 「うん」


 二人は、さっきの中古屋に戻るも薬草などに関する本はなかった。建物を出て、歩くと雑貨屋を発見する。


 「ここならあるかも」


 そう思い入れば、中古屋の2倍から5倍する値段で売られていた。


 ”汚したり壊したりしないようにしないと……”


 二人は緊張して店内を見て回る。本を見つけるも二人は値段を見て固まった。銀貨1枚だったのだ。


 「ど、どうしようか」


 ”中を見たいが、触れて何か言われてもこまる。買うと決めるまで手を触れるのが怖い”


 「買いましょう。採取全集って言うタイトルだもの。採取するモノが載っているはずよ」

 「うん……」


 リナも確かめたいが、怖くて触れられなかった。


 「これ下さい」

 「あいよ」


 本に貼られていたテープの様な物を外して渡された。防犯防止の魔法陣のテープだ。渡された本をエストキラは、かばんにしまう。

 二人は、周りに気を付けて建物の外に出た。


 ”ふう。緊張した。リナの腕が疲れるだろうから一旦人気がないところへ移動しよう”


 「街の外へ出ようか」


 リナは、うんと頷く。

 街の外に出る時は、すんなりだ。しばらく二人は道なりに歩いていた。


 「きゃー!」


 いきなりリナが叫んだ。

 驚いて振り向けば、あの酔っ払いの男が後ろからリナに抱き着いていた!


 「いや、離して!」

 「やめろ!」

 「先輩からのアドバイスだ。相手が冒険者なら街の外で、物を奪ったりしても罰せられないんだぜ」


 ”だったらなぜボードを持つ僕じゃなく、リナに抱き着くんだよ!”


 「ぐわぁ」


 男の腕をアルが噛みつき男が手を離した隙に、エストキラが男の腹に頭突きを食らわすと男はひっくり返る。


 「リナ、ボードに乗って!」


 エストキラは、ボードに乗ったリナを抱きしめた。


 「フライ」

 「待て、このやろう!」


 男が起き上がるもエストキラ達は、男の手が届かない場所まで浮き上がり、道を外れ森へと飛ぶ。

 リナは、小刻みに震えていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る