おまけスキルはマスタースキルによって使い勝手が良くなりました
すみ 小桜
第1話 スキル授かりました
”スキルの神様どうか僕にも、授けて下さい”
両ひざを床につき握った左手を右手て包み、うつむきながら一心に祈る少年エストキラ。貧乏な家庭の彼は、よれよれな黒い服にズボン、艶がない紫の長めの髪を黒いスカーフで包み、後ろから見れば少女だ。
細いが思ったより筋肉がついているのは、クワで畑仕事をしてるからだろう。
そんなエストキラの足元がパーッと光り、目を開けた彼の瞳に青い光が映り込み、銀の瞳は淡く青づく。
”やったぁー!”
スキルを授かった証拠だった。彼のほかに二人の足元が輝いている。
「おめでとうございます。では、祭壇にどうぞ」
嬉しさに走って駆けあがるエストキラとは反対に、授からなかった者達がしょんぼりとして帰っていく。今までの彼の光景でもある。
「おめでとう。お名前は?」
「はい。エストキラです」
「では、誓いの言葉を述べて下さい」
渡された紙に書かれた文字を読み上げる。
「私は、授かったスキルを使い、善を尽くす事を誓います」
エストキラの前に立つ神官が頷き、ノートに手を乗せるように促す。
『エストキラ 男 15歳 マスター/』
「おぉ、これは!」
「え? マスター?」
スキルは一人二つ授かる。マスターは、スキルではあまり授からない上位スキル。
”もう一つもマスターならダブルマスター! いやせめて武器製造とか調合とかきて。エンチャント以外!”
『エストキラ 男 15歳 マスター/オプション 最大MP10』
”うん? オプションって何?”
「………」
どういうのだろうとエストキラが神官を見ると渋い顔つきだ。
「もう一つは、オプションだ。向こうの神官に色々説明を聞いて下さい」
「はい……」
先ほどまで期待した顔つきだった神官は、もう興味がないという感じで壁側で立っている年配の神官を見た。エストキラも見ると、がっかりして向かう。
「エストキラさん、スキル授与おめでとうございます。オプションのスキルがどういうモノかわかりますか?」
わからないので軽く首を横に振った。
「オプションは――エンチャントをした時に稀につく効果である」
スキルの書に書かれている文章を神官が読んだ。
”あ、それか!”
「まずは、スキルを見たいと思うだけでスキルが頭の中に浮かび上がりますので、消費MPの確認をお願いします。消費MPは同じスキルでも個々によって違いますので」
「はい……えーと」
”スキルは――”
*マスター レベル:1 消費MP:―
*オプション レベル:1 消費MP:5 対象:装備全般 成功率50%
「消費MPは、5ってなっています」
「ふむ。何のオプションが付くとなってますか?」
「えーと」
*素早さ+1/装備者の素早さを1%あげる。
発動条件:対象に触れながら『スキルスバヤサ』と発する
「素早さプラス1%で装備全般です」
「ほう。ではこれにスキルを発動してみてください。発動方法は人それぞれなので、確認してください」
”そういえば、リナは歌わなくては発動しないとか言っていたっけ? 僕は簡単だ”
神官が出してきたリングに触れる。
「スキルスバヤサ」
――素早さ+1を付与しました
「ついた!」
”凄い。これだけで本当にできるなんて”
「どれどれ。確かに素早さがプラス1%されてます」
「ふん。素早さプラス1%? 俺は、エンチャントと装備製造だ!」
「なんと!」
「俺は、テスガ。エンチャントが1、装備製造が3消費する」
「なんと合わせて4とな!」
驚いて見ると、次に祭壇に上がってきた赤髪の少年だ。エストキラと目が合うとニヤリする。
スキルの授与で一番多いのが、テスガが授かったエンチャント。装備などを強化するスキルで、武器なら攻撃力、防具なら防御力を強化する。次で多いのが攻撃系のスキル。テスガの様にエンチャントと製造が一緒になる事は稀だ。
普通は、製造後エンチャントをするが、テスガならエンチャント付きで製造ができる。もちろん、稀に
「エンチャント時につくのに、わざわざオプションのみ付けにくるやついるかな~」
「う……」
オプションは、エンチャントした時の
「そうでした。エストキラさん、MPが枯渇すると昏倒するので、連続して使わない様にして下さい。スキルがレベルアップすると、最大MPも上昇します。それと……」
「回復ダブルです!!」
説明と被るようにスキルを確認する神官の大きな声が響き渡った。
「なんと!」
「すげ~」
三人が祭壇を見ると、水色の長い髪の少女が嬉しさに飛び上がっている。
「エストキラさん、オプションのスキルを授かった者は少ないので、あまり詳しくはわかりませんので、後は帰ってから自身で詳細確認お願いします。就職については、明日以降で、では失礼」
「え……」
「だとよ」
エストキラを残し二人は、祭壇へと向かう。彼はそういう気分にはなれず、トボトボと出口へと向かった。
これならエンチャントの方がよかったと――。
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