間野王華のなぜなぜ期

八神一久

第1話 人権


「ヤオ、人権って何?」

「どうした急に」

「駅でこんなん配ってた。外国の人の【人権】を守るんだって。名前書いてくれって言われた」

「あぁ、そういうことか。……質問に戻るが、人権って言葉の意味が知りたいんだよな?」

「うん。なんか意味が分からなくて」


「んー……。人権ってのは読んで字の如く、人間が生まれながらに持っている権利のことだ」

「んとさ。権利……って、していいよって事だよね?別にしなくてもいいよって事だよね?」

「んまぁ、そうだな」

「人間が持ってる権利って守られるものなの?自由にしていいから権利なんじゃないの?」


「この場合の権利ってのは国が保証すべきって話の方の権利だと思うぞ」

「国が保証?」

「ニュースにもなってたけど、争いとは関係ない市民が軍と政府のごたごたに巻き込まれてるからな。死傷者も少なからず出ているし、そういう無関係な奴らのまっとうに生きる権利を保証してやれってことなんじゃないか?」

「その国が自分でやるんじゃダメなの?」

「戦争自体が国内で起こった内戦だからなぁ。現政府が機能していないんだろ」

「それって他国の市民が助けるものなの?」

「周りから見て酷い状況だから手を差し伸ばしてやろうって話なんじゃないか?」

「え、あの人たち暇なの?」


「それ……真剣にやってる奴らの前で言うなよ」

「だって、他国の話なんでしょ?関係なくない?」

「それも公言すると冷たい奴って言われるな」

「お外怖い」


「そもそも権利ってなんであるの?自由にしていいなら権利なんて言葉なくてもいいんじゃないの?」

「簡単に言えば過去にいた王様が失敗したんだ。んで、国民が王に向かって反旗を翻した結果、権利って言葉が生まれたんだ」

「王様とその側近以外は楽だったのに?」

「失敗の内容がなぁ。馬鹿が上に立って、国民に圧力を掛け過ぎたんだろうな。そのせいで上流階級の人間だけが得をして、下で働く人間が損をしているようになったんだ」

「ご飯あげなきゃ死んじゃう上流階級なのに?」

「武力でもって市民を制圧したんだろう」

「え、市民は戦いわないの?」

「戦った結果、王政は廃れて”権利”というものが生まれた」

「うわぁ、極端」

「それもあんまりお外で言うなよ」

「ウッス」


「じゃあ、権利ってこの世界の時代の流れで生まれた言葉で、本当なら別に考えなくてもいいような事を無理やり単語にしたものって事?」

「まぁ、その認識で間違ってないけどあんまりそういう言い方で言うなよ。人権思想なんてわざわざ刺激するような話じゃないんだからな。それこそ藪を突いて蛇を出すような話だ」

「え?じゃあ、良いことなの?」

「違う!藪蛇ってのは……」





 ******** ******** 

【人権】

 人が生まれながらにして所有している侵される事のない普遍的権利。

 例として「生存権」、「教育を受ける権利」、「勤労権」、「労働基本権」などがあるが、これらは国が自国に住む民に対して認めたもの。

 王華の言うように無くても人間として生きていけるが、過去の為政者の失敗により明言しないと更にめんどくさくなるようになってしまった。


 王華の中の結論

「人間って頭良いけど、頭良いから馬鹿みたいなことやるよね。その代表的な例だと思う」



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る