あばれんぼな竜

野口マッハ剛(ごう)

第1話 山には竜がいます

 高い高い山の上、そこには竜が一匹います。

 緑色でひょろひょろとした竜です。

 口からは火を吐くことが出来ます。

 竜はあばれんぼです。


 竜の元には誰も来ません。

 人も動物も。竜はあばれんぼなために、みんなから恐れられていました。誰も近づこうとしません。

 退屈な竜は空を飛んで近くの村へと向かいました。


「どれ。人間どもを怖がらせてやろう」

 竜はそう言って村の上をぐるぐる飛び回っています。竜は村の様子に気付きました。どうやら一人の村人である女の子が、他の村人たちから追い出されています。

 気になった竜は、その女の子の目の前に降ります。

 竜が話を聞いてみると。


「私は竜の生け贄にされました。だから、もう、この村には近づかないでください」

 女の子は全身を恐怖で震わせています。

 竜はそれを聞いて悲しいような気分になりました。

 なぜなら、竜はあばれんぼですが、それは周りの反応を見ては、ただ喜ぶだけの竜だったからです。何も本当に心まであばれんぼな竜ではないからです。


「それじゃあ、竜であるオレとどうしたいのだ?」


 女の子はまだ恐怖で震わせています。

 すると、女の子は泣き出してしまいました。

 竜は困りました。


「それじゃあ、オレの背中に乗れ」

 竜は女の子を背に乗せて大空をゆっくりと飛びます。竜は女の子の涙を見て心を痛めていました。だから、女の子を笑顔にさせようと飛びます。


「気分はどうだ? 楽しいかい?」


 女の子は徐々に笑顔になりました。


「これからは、竜であるオレと一緒に山で暮らすのだ」


 あばれんぼな竜。

 竜の生け贄にされた女の子。

 けれども、竜と女の子は笑顔でした。


1話、完

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