第6話 SEASONS-6
「ね、深沢さんも、旭学園志望なの?」
「ん。…あたしは、違うの」
「そうなの?あそこは、推薦さえもらったら、内申点だけで、うちの学校から簡単に入れるんでしょ」
「でも…あたしんちは、公立の方がいいって。授業料も安いし、進学のこと考えたら、公立の方がいいから」
「じゃあ、泉洋高校?女子はあそこのほうがレベルが高いんだってね、美邦より」
「…うん。でも、広瀬さんは?」
「あたしは、一応、旭学園。なんとか推薦が、モラエルかな?っていう、ぎりぎりのところなの」
「……そう」
「ダメだったら、どこだろ?やっぱり、公立の、大隹くらいかな?よくわかんない」
「……そう」
「でも、頑張って、絶対推薦もらうもんね。って言うと、ひろこちゃんに怒られるけどね。授業中寝てばっかりで、どうすんの、って」
「そう」
「でもね、こないだの社会はいい点とったのよ。英語も。やっと、先生にも褒められたんだけど、みんなはまだバカっていうの」
「…そう」
「でもね、勉強したら、やっぱりよくなっていくね。やっと、わかってきたの」
「…そう」
*
ひとり千春が熱弁を奮っていると、午後の予鈴が鳴った。ほどなくひろ子たちが帰って来た。
「チャウ、ちゃんとお弁当食べ終わった?」
「うん、さっき」
冗談で返したつもりだったが、ひろ子や恵美は笑いながら、ほらやっぱり、と言いながら千春を嘲っていた。あっと思って取り繕おうとしたものの、勢いのいいひろ子に気押されて何も言えなかった。先生が入ってきて、お喋りも中断し、5時間目が始まった。
寒い日が続き、実力テストの日がやってきた。一日で5科目を消化するというハードな日だった。模擬試験に比べると、問題はそれほど難しくはなかったが、結果として得られた偏差値は、『実力』を判定するものになってしまう。
緊張した一日が終わり、安堵の気分で千春は机に寝そべっていた。そしてそのまま眠ってしまった。寒いなと思って起きたときは、もう下校時刻も迫っており、放送部の下校を促す放送が流れていた。慌てて身支度を整え、帰路についた。階段を降りて職員室の前を通ると担任の溝口先生に会った。千春を見つけると、ちょっとと呼び止めた。
「ごめーん、ちょっと手伝ってくれない?」
「ぁ、はい」
溝口先生は千春にプロジェクターを運ぶのを頼んだ。資料室に返すだけだからすぐに終わるからと言って。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます