グリーンスクール - 揺れる想い
辻澤 あきら
第1話 揺れる想い-1
揺れる想い
某月某日―――晴。風向、北西。
突き抜ける青空の下、緊張していた。今までに感じたことのない、心地いい緊張だった。大きく息を天に吐き出し、顔面に日光を浴びた。
暑い。
それも、心地いい。体は動く。軽くアップをする。腿も脚もよく上がる。上半身も軽やかに動く。この緊張は一体どこにあるんだろう。冷静になって考えてみると、それは間違いなく、胸にある。
プレッシャー?それとも…?
今はもう自分の能力を信じるしかない。あと数分。号砲がなるまで、あと数分。
声援が飛びかう。
それが誰に向けられているのか判別できない。あたしの名前も呼ばれているのかもしれない。でも、あたしの心は閉ざされている。もう、集中するしかない。このトラックの先へ。
きっと、先輩の声もその中にあるんだろう。だけど、もうどうでもいい。ラインを辿って走るだけ。
審判のコールが響く。スタートラインに付く。そして、号砲。
目の前を走り抜けていく人たち。揉み合う人の中に入って、脚の位置を気にしている。
前へ、前へでなきゃ。
一瞬、先輩の顔が脳裏をかすめる。きっと、声援を送ってくれている、はず。それは、ありがたい。でも、もう、どうでもいい。ただ走るだけ。
そう、今日のレースに推薦してくれたのも、先輩。鈍なあたしを見捨てず、優しく指導してくれたのも、先輩。ただ一人、励まし続けてくれたのも先輩。
感謝してます。
前へ。少し列が乱れてきた。今のうちに、少しでも前へ。
今日のレースは気が重かった。
まだまだ、自分は練習不足だと思っていた。それでも、先輩はあたしを推薦してくれた。
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