入学前の邂逅を思い出して


「秋だねー」


 君の呟きと同時に、目の前を赤蜻蛉が横切った。何気なく視線を這わせつつ相槌を返す。

 両側の木々は赤く色づき始めており、石畳に揺らめく蜃気楼もなければ、蝉時雨も聞こえない。


「ねっ、あの公園で少しお喋りしてこ!」


 ただ。半年前に惚れた笑顔だけが、目の前で無邪気に揺れている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る