おチビちゃん 最後の挑戦(& 俺の挑戦)-3

(・・・・ん?)

甘い香りがした直後、唇に、温かくて柔らかいものが触れた。

ような気がした。

目を開けると、視界に入ったのは、離れていくおチビちゃんの髪と顎のライン。

あれ?

もしかして・・・・?

もしかするのかっ・・・・?!

勢い良く飛び起きると、隣に座っていたおチビちゃんが、驚いて座ったまま飛び上がった。

なんて器用なヤツなんだ。

「悪いっ!俺、寝てた。」

「うん。」

日が傾き始め、俺が来た時よりも辺りが少しだけ暗くなってきている。

「どれくらい寝てた?」

「ん~、一時間くらい、かな。」

答えるおチビちゃんの顔がうっすら赤く見えるのは、きっと夕日のせいだけじゃないはずだ。

「寝てたら起こしてくれって、ミチから連絡無かった?」

「あった。」

「じゃあ、起こしてくれれば」

「寝顔。」

「ん?」

「見てたかったから。」

そう言って、おチビちゃんは恥ずかしそうに笑う。

「悪趣味だな。」

「うん。」

「で。」

「なに?」

「寝込みは襲えたのか?」

一瞬の、間。

息を飲むおチビちゃん。

「ひひひと聞きの悪いこと言うんじゃないわよ、高宮 漣!」

「誰も聞いてねえし、誰も見てねえよ。」

さっきまで河川敷で野球をしていた小学生たちも、ランニングのおじさんも、犬を連れたお姉さんも、もういない。

「誰も見て無いんじゃ、何の証明もできないよな。俺も、爆睡してたし。」

「えぇっ?!」

悲鳴のような、そしておそらくは抗議の声をあげるおチビちゃんに構わず、俺は再び草っぱらの上に寝転がり、目を閉じた。

「今度は寝ない。目を閉じてるだけだ。」

1回出来たら、それ以降はもう、2回も3回も10回も100回も変わらないはず。

それでも、なかなか動く気配の無いおチビちゃんに、俺は言った。

「冷えてきたぞ。お前、俺に風邪をひかせるつもりか?」

意を決したのか。

ゆっくりと、おチビちゃんが動く気配がする。

(そうだ。がんばれ、おチビちゃん!)

少しずつ、温もりが近づき。

甘い香りに包まれた直後。


おチビちゃんの唇が、俺の唇にそっと触れた。

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