おチビちゃんの挑戦その4-4

「俺、コーラ。」

ホケッとしたままのおチビちゃんの手からコーラを受け取り、乾いた喉に流し込む。

「あ゛ぁぁぁ、うまいっ!」

おチビちゃんは、といえば。

呆けた顔をして、突っ立ったままだ。

「おい、チビすけ。」

呼びかけても反応は無い。

こいつ確か最初、『キスくらい、すぐにしてやるから。』とかなんとか、言ってなかったか?

よくあんなこと、言えたもんだな。

半分呆れ、半分笑いながら、俺はまだ冷たいコーラのボトルを、おチビちゃんの顔に押し当てた。

「ひゃっ!」

「いつまでボケッとつっ立ってんだ?」

ようやく我に返ったのか、徐々におチビちゃんの顔に表情が戻ってきた。

同時に、ピンクを通り越して、どんどん顔が赤くなり始める。

「なぁ、おチビちゃん。」

「なっ、なによっ。」

「お前、いつまで待たせるつもりだよ。」

ん?

自分の発した言葉に、非常に違和感を覚えた。

・・・・気のせいか?

いやまて。

今、俺、何て言った?

何を言ってるんだ、俺っ!

愕然とする俺の前で、おチビちゃんは。

「だっ、だって・・・・」

怒ったような、困ったような、泣き出しそうな顔で。


「好きすぎて、できないのよっ!」


ギューッと。

抱き締めてしまいたい衝動を抑え込む俺の苦労を考えろっ、チビすけっ!

なに、こいつ。

馬鹿みたいに可愛くねぇか?!

やばい、すげー可愛い!

それはもはや反則だぞっ、大野 沙希!

「ま、頑張れ。」

立ち上がっておチビちゃんの頭を軽くポンポンし、とりあえず励ましてみる。

応援してどうする。

とは思ったが。

いやいや。

応援せざるを得ないだろ、これは。

「ほら、帰るぞ、大野 沙希。」

おチビちゃんが小走りで追いかけ、俺の隣を歩く。

「女性に対していきなりフルネーム呼び捨てはどうかと思うわよ、高宮 漣。」

「お前・・・・どの口が言ってんだよ、どの口がっ!」

既に人がまばらになった駅までの道を、俺はおチビちゃんと連れ立って歩いた。

「今日はありがとな。楽しかった。」

「お礼にキスさせてくれてもいいのよ。」

「大チャンスを逃しておいて、よく言えたもんだな。」

「・・・・ふんっ!」

・・・・この調子じゃ、まだまだかかりそうだ。

楽しみなのか。残念なのか。

もはや俺自身にも、分からなくなっていた。

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