おチビちゃんの挑戦その4-3
ゲームは、ホームチームの圧勝で終わった。
おおはしゃぎでゲームを楽しんでいたおチビちゃんだったが、終わったとたんに『ちょっと・・・・』と言い残し、席を立ってどこかへ行ってしまった。
おそらく、生理現象だ。
そう思って、俺は気長に待つことにした。
女子トイレは、男からすれば信じられないほど混むものだ。しばらく、おチビちゃんは戻ってこられないだろう。
まぁ、今帰ったところで、今度は駅やら電車やらが激混みだろうし。
ここでしばらくのんびりしてから帰るのも、悪くはない。
それにしても。
「あ~・・・・楽しかった。」
思いの外、純粋にゲームを楽しめたことに、俺は驚いていた。
少しは胸にモヤモヤした感情が戻ってしまうのでは、と思っていたのだが、一切無い。
全く、ない。
1ミリも、だ。
今の俺ならきっと、寂しそうになど見えないはずだ。
あのチビすけだって、きっとそう言うに違いない。
って。
なぜ今ここで、おチビちゃんが出てくるんだ?
そう思った時。
俺の両頬に、冷たいものが押し当てられた。
「わっ!」
「なにをボケっとしてるのよ、高宮 漣。」
いつの間にか、おチビちゃんが戻って来ていた。
前に投げ出した俺の脚の間に、片手にコーラ、もう片方の手にサイダーのペットボトルを持って立っている。
「飲み物買ってきたんだけど・・・・どっちがいい?」
ゲームの余韻が冷めやらないせいなのか、それともここまで急いで戻ってきたからなのか、おチビちゃん頬はうっすらとピンク色に染まっていて。
・・・・あれ、こいつこんなに可愛かったっけ。
思わず、まじまじと顔を見てしまう。
「どうしたの?具合でも、悪い?」
そう言って、心配そうに顔を覗き込んでくるおチビちゃんに、俺は思わず片腕を掴み、もう片方の手で後頭部を引き寄せていた。
「ぎゃっ!」
なんとも雰囲気ぶち壊しの声を発して、俺の顔のすぐ前で、おチビちゃんは目を真ん丸く見開いている。
「目ぐらい閉じろよ、大野 沙希。」
言われるままに、素直に目を閉じるおチビちゃん。
この調子だと、頭の中は真っ白状態だろう。
俺は、ゆっくりとおチビちゃんに顔を近づけ・・・・
小さな鼻の頭に、軽くキスをした。
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